(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) 4つの論ずべき点

深掘り 解説委員 鈴木鈴木 崇弘(城西国際大学大学院教授・日本政策学校代表)

次期学習指導要領の改訂で思うこと

昨年に小・中学校、そしてこのほど高校の次期学習指導要領改訂案が公表された。学習指導要領は、日本の教育において非常に重要なものであり、多くの論ずべき点があると考える。
そこで本記事では筆者なりに、同要領の4つの点だけに焦点を絞って論じていきたい。

■アクティブ・ラーニング

まず、「アクティブ・ラーニング」を重視している点。今後の社会を考慮すれば、教育を従来の知識偏重型から、思考力や表現力、協調性などを育むものに変える方向性は正しい。

しかし、この方向性が本来の成果を生み出せるには、生徒だけでなく、教員にも、より主体的に学べる時間や機会、さまざまな材料などが提供され、学校周辺からの協力や支援が提供される環境づくりが必要であろう。同要領の実施に向けた過渡的段階において、それらの点への配慮がなされるべきだ。

■英語教育

次が、「英語教育」の強化を重視している点。グローバル化は今後ますます進展していくだろう。

その意味で、国際的視点や海外の文化などを学ぶことは重要であるが、別記事(「未来を切り開く教育政策(1)英語教育は本当に必要か」2017年8月24日)のように、今後のテクノロジーの進展を考慮すれば、その分野のプロになる場合以外は、中途半端な外国語(特に英語)教育は、時間的にも、人材や人件費的にも、かなり問題だと考える。国際的視点などを育てる別の教育に振り替えるべきことを、改めて強く主張したい。

■国を愛する

高校向け改訂案では、わが国土や歴史への愛情の自覚が明記された。

筆者の考えでは、民主主義の政治制度が有効に機能するには、その住民の地域や国への愛着や関心が必須である。だが、その住民の思いは、国による規定ではなく、飽くまで自然に生み出されることが基本であると主張しておきたい。

■導入サイクル

最後は、実は最も重要な点。それは、これだけ社会の変化が大きくかつその変化の速度が加速化されている中において、日本の教育の在り方を決めるという重要な役割を担っている学習指導要領の改訂が、10年に一度でいいのかという疑問だ。

もちろん、教育は、変更に時間がかかるとともに、若い世代や次世代への直接的な影響が大きい。その意味では、短期間に大きくコロコロと変わっては、社会に不安や不満、さらにさまざまな問題をもたらすので、安定性や熟慮も必要だ。

だが、先述した2番目の英語教育については、この1、2年で生まれてきた問題であり、次期学習指導要領の策定作業が始まった時には、予想もされなかったことだ。そしてこのような問題は、今後もさまざまな形で起きるだろう。

次期指導要領は、移行期は除くとして、正式には2020年度から順次導入されるが、英語教育などでは近い将来、齟齬(そご)が起きることが予想される。

このように考えると、現在のように10年サイクルで、学習指導要領を改訂していくこと自体の在り方が、問われなければならないのではないかと考える。

また教育の場合は、社会的な安定性や安心感も考慮される必要があることは先に述べたとおりであるが、学習指導要領は、もう少し柔軟な審議サイクルを取り入れるとともに、長い期間にも耐えうるように、教育においても長期的にみても普遍的である、最低限必要であることに絞って記すべきではないか。

そして、それ以外については、各教員が絶えず学び、社会の変化に対応できるように、例えば週一日か半日は自身の研究や研鑽の日にできるようにして、新たな手法で新しい知見を生徒に提供できる仕組みがあってもいいのではないか。

次期要領以降の再検討を願いたい。