(教育時事論評)研究室の窓から 第34回 働き方改革ー教師が分かるべき外の世界があるか

eye-catch_1024-768_chichibu国立教育政策研究所研究企画開発部総括研究官 千々布敏弥

2月に文科省より教員の働き方改革に関する通知が出された。登下校に関する対応、放課後の見回り、児童生徒の補導時の対応、学校徴収金の徴収・管理、地域ボランティアとの連絡調整を「学校以外が担うべき業務」、調査・統計等への回答、休み時間における児童生徒対応、校内清掃、部活動を「必ずしも教員が担う必要のない業務」、給食時対応、授業準備、学習評価や成績処理、学校行事等の準備・運営、進路指導、支援が必要な児童生徒・家庭への対応を「教師の業務だが負担軽減が可能な業務」と位置付けている。

学校清掃に関して地域人材や民間への委託や清掃指導の輪番制、部活動に関して外部人材の登用や複数校による合同部活動、活動時間や休養日の基準設定などを提言していることに反発を覚える教師は多いだろう。学校清掃の教育的意義を認める教師は多いし、部活動や学校行事で学校を落ち着かせてきた学校は多い。

この通知に先立ち、昨年12月に出された中教審中間報告では「我が国の教師は、(略)学習指導のみならず、生徒指導等の面でも主要な役割を担い、様々な場面を通じて、児童生徒の状況を総合的に把握して指導を行っている。このような児童生徒の『全人格的』な完成を目指す教育を実施する『日本型学校教育』の取組は、国際的に見ても高く評価されている。これは、我が国の教師が、子供への情熱や使命感をもった献身的な取組を積み重ねてきた上に成り立ってきたものと言える」と、わが国の伝統的な取り組みを評価している。同時に家庭や地域の教育力の低下、学校が抱える課題が複雑化・多様化するに従い、学校の役割は拡大せざるを得ない状況にあり、従来の教師の取り組みを変える必要があると提言している。これまでの日本の教師たちの取り組みは評価されるべき素晴らしいものだが、時代の変化に伴い、働き方を変えるべきという考え方なのだ。

そう説明しても納得しない教師は多い。他職種との協働が提言されているが、例えばスクールカウンセラーについて「彼らは自分たちの領域を守り、領域以外の業務は担当してくれない。カウンセラーの要求に従っていたら、われわれの業務がかえって増えてしまう」と訴える教師は少なくない。スクールカウンセラーは昭和50年代に導入され定着してきた。それでもこのような声が出る。新たな学校外の職が学校教育に入るのは難しい。

要因は学校内にも学校外にもあるのだが、学校内の要因をここで指摘しておきたい。日本の教師は同僚性が高く、仲間同士で柔軟に業務を分担しながらチームとして子供の教育を担ってきた。学校が荒れれば夜中に繁華街を見回り、不登校者の家庭を訪問し、いわば、警察やソーシャルワーカーのような業務を担う一方で、学校が落ち着いて校内研究に取り組むようになったら夜遅くまで指導案検討に取り組む。学校の状況に応じ柔軟に働き方を変えてきた。その適応力はすごいと感心するしかないのだが、これまでの成功体験が組織の在り方に関する保守性を強めているように思われる。教師の意見としては「業務を軽減してほしい」よりも「教師の数を増やしてほしい」という声の方が多い。同じ仲間が増えると柔軟に多様な課題に対処できるからだ。同僚間の業務分担の柔軟性や相互補完の姿勢は素晴らしいのだが、その姿勢が外部の人材に対しては極端に閉鎖的になる。

「分かってないな」とは教師の決まり文句だ。自分たちの世界を分かっていない人間にこの世界に入ってきてほしくないという考えだ。そこに多大な自負があることは認めるのだが、教師が分かるべき外の世界があることも、考える必要がある。