(新しい潮流にチャレンジ)内向的な子供にどう向き合うか

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

しゃべるのが苦手な子供と対話的授業(2)

〇内向型の特質は何か

しゃべるのが苦手な子供は案外多い。そのような子供がすべて内向的とは言えないが、対話的な授業が多くなると、授業で引け目を感じる子供に十分留意する必要がある。しかし、内向的であることが必ずしも不利なのではない。

スーザン・ケインによれば(『内向型の人間の時代』(講談社、2013)、外向型と内向型を比較すると特徴的な傾向がみられるという。複雑な問題を解決する場合のパフォーマンスの差について、小学校の時点では、外向型が内向型よりも学校の成績はよいが、高校生になると逆転するという。大学レベルでは、内向型は外向型よりも成績がよかったという。

また心理学者の研究例からケインは書いている。例えば、内向型は外向型よりも注意深く考える。外向型は安直なやり方で問題解決を図るため、正確さは二の次になり、作業が進むほどに間違えが増え、手が負えなくなると挫折感を抱き、すべてを投げ出してしまう傾向があるという。

それに比べて内向型は行動する前に考えて、情報を綿密に消化し、時間をかけて問題解決に取り組み、簡単にはあきらめず、より正確に作業をするという。

また、難易度が増す5段階の問題で知性を測る検査では、外向型は目標を素早く見極める能力が高く最初の2段階で高得点を取るが、より難しい3段階になると内向型がより高い得点になる。最後のもっとも難しい段階では、あきらめてしまう確率は外向型が内向型よりも高くなるという。

このような内向型の特性がありながら、内向型の人間は、仲間に加わることが苦手で、話下手だと思い、劣等感を抱くことが多いという。内向型の人間は孤独の影がつきまとう。それは仲間関係にも表れる。例えば、パーティーでの会話を楽しめるのは外向型が高いという。パーティーでは多くのことを即座に処理する能力が必要である。外向型は一度に何人もの相手に付き合うことが上手なのだ。

二人で会話するというシンプルな状況でも、相手の話を理解する、相手のボディランゲージや表情の意味を理解する、話し手と聞き手が入れ替わる、相手の言ったことに答える、自分が相手によい印象を与えているか判断し調整する、などのことが行われる。それがパーティーの席で大勢を相手にしたらどうなるか。

学級でのグループの対話は、パーティーとは異なるにしても、集団の中で「自分のよさ」を発揮するのに戸惑う内向型の子供は案外多いのではないか。

〇内向型の子供とどう向き合うか

学校において内向型の子供にどう対応するかについてケインは重要な指摘を行っている。それはかなり参考になるものである。まずケインは、多くの学校は外向型の子供たち向けに作られているという。何よりも大人数で学ぶ環境になっているが、それは効率的だからに過ぎない。

興味を持ったことだけに深く集中するのが好きで、一度に大人数の友人と交流するのが苦手な内向型の子供からすれば不自然だという。それでいて、みんなの前で、大きな声でお話しなさい、と強要されたりする。

ケインは、内向型の子供にとって、どのような教育環境が理想的か、として教師のために助言をしている。

▽内向型の子供は「もっと教室で発言してほしい」と助言はするが、その子なりの学習スタイルを認めるようにし、おおげさに扱わない▽研究では3分の1ないし半分の子供が内向型である。外向型は動きや刺激や共同作業を好む。内向型は講義を聴いたり、休息時間を設けたり、独立して作業をすることを好む。教室の活動はバランスが大切である▽内向型の子供は一つか二つだけの物事に深い興味を持つことが多く、それを仲間と分かち合うとは限らない。型破りな情熱で取り組むことが多く、集中力は才能を発展させるのに必要なことである▽グループ作業は内向型の子供にとって問題ではなく、むしろ有意義である。ただ、参加させるためには、持ち味を生かす助言が必要である▽どんな分野でも一人で作業するすべを身に付けていることが大事で、外向型の子供は内向型の子供に見習うべきである▽話し合いに参加しにくいとする子供に、発言しやすいよう配慮することは必要だが、強制しない。

〇「対話的な学び」で考えたいこと

ケインの述べている内向的な子供への向き合い方は、アメリカ的とは限らないであろう。わが国においても十分に参考にしたいことである。特にこれからの授業は大きく変わる可能性がある。

新教育課程が実施されると、「主体的・対話的で深い学び」が展開され、グループによる話し合い活動や共同作業が多くなる。その活動は内向的な子供にとって負担になるのか、それとも積極的な参加の姿勢がみられるようになるのか。

実際には、教師は、どの子供が内向的かをあまり留意しないで、授業を展開するかもしれない。「対話的な学び」で教師が進めたいと考えているのは、他者との交流を通して自分の考えを明確にしたり、他者との意見を交流させて互いの考えを深めたり、他者と協働して課題解決したり、何らかの共同作業を行うなかで自分の考えを深めたりするなどの能力を高めたい、ということである。

その場合、日本の教室は、アメリカのように外向的な子供と内向的な子供がかなりの程度、明確に分かれているとは限らない。むしろ、「授業であまり発言しない」アジア系の子供の特徴を示すであろう。もしかして「対話的学習」が苦手な子供が多いことが考えられる。そこで、教師が留意してほしいのは、日本の子供の場合、特に「しゃべるのが苦手な」子供などへの対応である。観察すると、そうした子供を見いだすことが可能であろう。また、そうした子供の中に無口で消極的にみえる子でも成績がよく安定している子供も見いだすことができるであろう。

「話すこと」が苦手でも、その子なりの「よさ」や「がんばり」について正しい評価をすることが大切である。内向的な子供は将来的に成長する度合いは大きいとされているのであるから、「しゃべることが苦手な子供は損をする」状況を作らない教育環境をつくり出すことが極めて重要なのである。