(新しい潮流にチャレンジ)学校インターン制度の広がりと課題

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

即戦力形成への多様な経験を

〇学校インターン制度の広がり

最近、教員志望の学生の学校インターンシップや学校ボランティアの動きが多くみられるようになってきた。大学の企画による動きであるが、その背景には、最近の学校にみられる若手教員の増加がある。

特に小学校は初任者でも学級担任となり、確かな指導力を期待される。それでいて教員として一人前になるには10年かかると言われ、初任者の早急な指導力形成が大きな課題となっている。

ただ、周知のように、大学では教育実習があり、教員になれば初任者研修が行われてきたが、それでは不十分という声が大きくなっていた。

そこで中教審は2006(平成18)年の答申『今後の教員養成・免許制度の在り方について』において初めてインターンシップに触れて、学校現場との触れ合い、子供と接する機会、現職教員と触れ合う機会の大切さを述べている。さらに教育再生実行会議での第5次提言の「今後の学生等の在り方について」でさらに教師インターン制度についての提言が行われていた。

そのため、最近は多くの大学で学生のインターン制度を実施する動きが急速に広まっているようである。今回、この問題を取り上げるのは、日本教育経営学会東京支部で1月20日に、この問題をテーマにした協議会が行われたからである。

実際に学生が小・中学校でインターンを行っている実態などが話し合われたが、おおまかな印象では「学校まかせ」が多いのではないか、という感じが強かった。

例えば、元校長の話では、学生は教委からの委託という形であったが、学生をどう指導すればよいか、担当指導主事との連絡が曖昧であったという。また教委の責任者が受け持った例は、大学のポリシーが明確でなく、手探りのような対応がみられた。大学の意図がはっきり学校に伝わっていない印象が極めて強かった。

〇学校体験で何を学ぶか

実は今から14年前に私は学生のインターン制度の実施に関わった経験がある。北海道教育大学(以下、北教大)の「教育実践フィールド科目」の構想である。いわば全ての学生が「金曜日は大学に出ないで、学校や地域でボランティア的な活動を行う」という極めて大胆なものであった。北教大は札幌、旭川、釧路、函館、岩見沢の各分校があって、それぞれから代表の教員が参加した中で外部から私一人が参加した。すでに基本的な構想はできていたが、最も重視したのは小・中学校等に学生がどのような形で参加できるか、という具体的な内容についてであった。

例えば、教育実習であれば学習目標や実施内容がかなり明確に規定されている。しかし、インターンシップや学校ボランティアの場合は、どのような体験活動が待っているか、全くの白紙であった。学生が訪問する小・中学校自体が未経験であって、どう受け入れてよいか戸惑いも大きいのである。

何よりも学生個々が教育実践の意義や目的、実施内容をきちんと把握していることが重要である。そこで学生の理解徹底のためにハンドブックを作成することになった。それには学生に向けて次のことが書かれている(『学び続け自己を高める教師をめざして―教育実践フィールド科目ハンドブック―』北教大2006)

(1)現代の多様な子供像を理解し、それに対応した教師としての指導の課題を把握する。

(2)指導のための目当てをつくり、自らの実践を自己評価し新たな課題を整理してレポートにまとめる。

(3)常に自らの実践についての記録をまとめることを通して自己の資質能力を高める。

また、学生がインターン制度を実施しやすくするために「教師の求められる7つの資質チェックリスト」を作成している。「学習指導力」「生徒指導力」「教育相談力」「学級経営力」「地域教育連携力」「協働遂行力」「臨床的実践力」であるが、これらの項目について極めて具体的な内容を網羅的に示しているのが特徴的である。

例えば、「学習指導力」では、「授業づくり」のチェックリストとして、「児童生徒一人一人の授業に関する興味・関心等を把握することができた」「児童生徒一人一人の学習内容の理解や習熟の程度を把握することができた」などの観察で得られる視点を具体的に示している。

〇学校インターン制度は進化したか

北教大のインターン制度は10年以上の歴史を刻んでいる。現在、どう進化しているであろうか。

釧路校のキャンパス長である玉井康之教授のレポートによれば次のようである(『日本教育大学協会モデルカリキュラムの成果と実践上の課題』2016)。

注目されるのは「教育実践フィールド科目」の1年次からの体系化である。1年前期に「学校体験」、後期に「学校基礎」2単位必修、2年前期に同じく2単位必修、後期「学校対応」2単位選択、3年次は教育実習が入るが後期に「学校発展」2単位選択がある。この他に「介護等体験」2年次2単位選択、「特別支援教育」3年次2単位選択、「道東地域体験」3年次2単位必修がある。

さらに力を入れているのは、北海道に特に多いへき地校のために2、3、4年次と「へき地校体験実習」各2単位選択を行っている。

このように実習機会が多くなっているが、それだけに「何を学んだか」の自己評価が重視される。先に述べたような自己目標設定チェックリストとふり返りシートを学生全員に配布している。学生は次のように活用する。

(1)自分でその日の実践目標を設定し、ふり返りシートを毎回提出する。

(2)毎週の学校でのふり返りは、学校内で活動後に実施する。

(3)学校間を超えたふり返り交流は、大学で学期末に実施する。

(4)学生の実践交流時には、「相互アドバイス」のシートで、相互評価を実施する。

学生の教職への迷いは、2年次にいったん大きくなるという。教職への使命感が理解されてくる半面、自分の課題が見えてくるためという。一方、教職意識をいっそう高めていく学生も多い。

また、2年生が1年生を先輩として指導するなど、学生の立場ではなく、教師の立場に立つことで自覚が高まっていくことも多い。

なお、学校現場と連絡をとる実務家教員や専任としての教育実習アドバイザー等の担当者が必要である。

こうした釧路校の実践の積み重ねについて、高いアクレディテーション(公的な外部機関による教育機関の品質認証)を得ているという。

〇実習校は学生をどう受け入れるか

今後、学校インターン制度や学校ボランティアは全国的に増加するであろう。その場合、学生を受け入れる学校はどう対応するであろうか。

何よりも大学側の実習についてのポリシーと学生に対する指導を明確にする必要がある。とかく学校への「丸投げ」がおきやすいが、それは絶対避けるべきである。

ところで、学校側の反応として積極的に学生を多様な教育指導に活用したいという声がある。なじみになった学校から、「この日来てくれるか」という依頼が学生にあって、大学の講義を休みたいとする例を聞く。どうであろうか。

実は、現在急激に進行している学校の働き方改革は、教員の仕事を多様に削減する方向で進んでいるが、教員がやらなくなった仕事でも必要とされるものがあって、その対応に苦慮する学校が増加することが予測できる。

そんなとき、学生ボランティア大歓迎という事態が起きないとも限らない。学生が必要とする学校体験と学校が必要とする仕事の遂行について、どうバランスをとるか、である。だが、そうした課題については慎重な判断が必要である。

最近の学校は若手教員があふれているが、即戦力を身につけるためにも学校インターン制度の充実は大きな課題である。今後の展開の充実に期待したい。