新任教員へのケア

特任解説委員 妹尾教育新聞特任解説委員 妹尾 昌俊(教育研究家、中教審委員)

制度と運用の両面で
■学校の最大のフシギ

新年度がスタートした。学校が最もバタバタする時期だろうと思う。この記事をご覧いただくのは、新しい児童生徒や職員を迎え、さまざまな準備をひととおり終えたころだろうか。

さて、私のような「よそ者」から見ていると、学校にはフシギなことが多い。その最たるものが、新任(新規採用者)であってもいきなり教壇に立つことだ。

自分の担当教科を教えるのはもちろんのこと、学級を持つ新任も多い。文科省の調査(2016年度)を確認すると、小学校では96%が新任でも学級担任であり、この割合は、中学校では58%、高校は19%となる。

なぜ、小・中・高でこんなに違いが生まれるのかというと、国の教員定数(標準)の算定式でそうなっているからである。よく知られているように、小・中学校は学級数に応じて教員数が変わる。だが、学級数に掛け算する計数が小と中では違う。高校の場合は、定員数によって異なる。

小学校では学級担任制を前提にしており、教科担任制を想定していないので、計数が中学校よりも低く、学級数とかなり近い教員数となる。

しかも、ご存じのとおり、小学校で教えるのは10教科(道徳を含む)プラス総合、特別活動である。学校によっては、一部を専科教員が担当したり、いくつか教科を分担したりしている例もあるが、多くの新任は10種類前後の授業準備をしつつ、学級経営もする。

雑談ではあるが、小学校に赴任してみたいかと聞くと、多くの高校教員が「絶対できない」と答えるのだが、うなずける話だ。

■入学式、始業式の時期はこれでいいのか?

しかも、4月5~10日当たりに入学式、始業式という学校はかなりある。ちなみに、うちの子供が通う小学校は4月5日。昨年はもっとひどかったが、今年も土日の関係で、入学式、始業式まで勤務日は3日しかない。

企業、サラリーマンで例えるなら、入社して2、3日しかたっていない新人に、いきなり重要顧客の前に1人で行かせて、プレゼンや交渉をさせるようなものではないだろうか?

はっきり言って、これは「むちゃぶり」もいいところだと思う。

■新任への制度と運用はチグハグ

教員の場合は、「大学などで専門教育を経ているし、教育実習もやってきているのだから、4月から一人前」とおっしゃる方がいるが、フィクションであろう。本当にその程度で、今の複雑化した教育現場で通用する、とお思いなのだろうか。

しかも、新しい指導要領では、思考力や学びに向かう力を高められるような、一層質の高い授業が求められている。指導書の通り進めるだけでは不十分なのだ。

採用倍率も下がっている地域が多い(小学校では3倍を切っているところもある)中、新任教員自身の思考力などが十分高いと考えるのは、多くの場合、楽観的過ぎるであろう。

他方で、初任者研修として、毎週約8時間も校内研修(授業の指導など)を行い、校外研修も年間約19日もかけている(文科省調査)。しかも教育公務員特例法により、教員の場合、1年間は試用期間(条件附採用)である。他の地方公務員は6カ月なのに。

この制度の是非はもっと議論していくべきだと思うが、「新任教員はまだまだ能力開発が必要」の前提での制度と考えられる。

そうした前提にありながら、小・中などではいきなり学級担任を任せざるを得ない定数配置であり、なおかつ、小学校では10教科近くも教えろ、準備しろとする運用なのは、苦肉の策であり、大きな矛盾をはらんでいるのではないか。

■新任へしっかりケアを

私は中教審などを通じて、新任教員への、この矛盾した制度を改善するべく働き掛けたいと思っている。ぜひ皆さんも、学校現場や行政での難しさや問題を、国などに届けてほしい。

また、入学式の時期などはいい例だが、各教委や学校でもっと工夫できることはある。私は春休みを延ばし(入学式などを遅らせ)、夏休みを短くする方が、新任に限らず、多くの教員の授業準備などの上でメリットが大きいと考えている。

それから、指導教員でなくても、周りが声掛けやアドバイスなどをして、新任をチームで支えてほしい。

制度と運用、両面から、新任教師にもっとやさしい学校になっていかねば、と思う。