教員の意識が大きな課題 目標に届かない中高の英語力

文科省は4月6日、2017年度「英語教育実施状況調査」などの結果を発表(本紙4月16日付既報)。中・高校生の英語力は、依然として政府が掲げる目標に達していないことが分かった。

■英語教育調査で見えるものは

最近の教育改革により、教科の内容が一番大きく変わったのは「外国語」(英語)だろう。これまでの文法中心の教育から、「英語でコミュニケーションできる力」「英語で情報発信できる力」を育成する教育へと変化した。「使える英語」を身に付けることを目指しており、この傾向は新学習指導要領において、さらに推進されていく。

背景には経済のグローバル化に対応するという経済界の要請がある。政府は2013年に閣議決定した第2期教育振興基本計画で、子供たちの英語力を中学校卒業時点で実用英語検定(英検)「3級程度以上」、高校卒業時点で英検「準2級程度以上」と定め、達成した子供の割合を17年度までにそれぞれ50%にするという目標を掲げた。

17年度の調査結果を見ると、基準に達した割合は、教員が同等の力があると判断した者を含めて、中3では40・7%(前年度比4・6ポイント増)、高3では39・3%(同2・9ポイント増)で、基本計画の目標を達成できなかった。文科省は、第3期教育振興基本計画(18~22年度)にも同じ目標を盛り込むことにしている。

■教員の達成度の低さは意識の問題か

中・高校とも、目標を達成した子供は約4割だが、課題は高校の英語教育だ。高校では、現行学習指導要領から英語の授業は原則英語のみで行うことになっている。新学習指導要領では、中学校も同様に原則英語のみで授業することになっており、新学習指導要領が実施されれば、小学校での英語の教科化と併せて、中学校が政府目標をクリアすることは、恐らく難しくない。

現在でも原則英語のみで英語の授業をしている高校が、目標を達成できていないのは大きな問題だ。中学校でいくら英語のコミュニケーション能力を身に付けても、高校では伸びないということだ。高校で「話す、書く」などの能力が伸びないのは、大学入試のための文法や読解などを重視しているからだ。

文科省は、2020年度からの「大学入学共通テスト」導入に伴い、英語の4技能を評価するため民間の資格検定試験を併用し、24年度以降は民間試験に一本化する方針だ。実現すれば、高校の英語教育も大きく変わらざるを得ない。民間試験の活用には慎重な意見も出ており、私立大学などを中心にどの程度浸透するかは不透明だ。高校の英語教育の行方は、今後の大学入試改革次第といえる。

もう一つの課題は、英語教員の能力と意識だ。英語教員の能力について政府は基本計画の中で、英検準1級相当の資格を持つ教員の割合を中学校で50%、高校で75%という目標を挙げた。17年度の調査結果では、目標を達成した教員は中学校で33・6%(前年度比1・6ポイント増)、高校で65.4%(同3.2ポイント増)にとどまる。子供の目標を達成できなかったことより深刻な問題だ。

これは英語教員の英語力自体よりも、英語教育に対する意識の問題が大きい。従来の英語教育から脱して、コミュニケーション能力重視の英語教育に転換することへの抵抗感は、予想以上に根強いようだ。

実際、都道府県別の調査結果を見ると、福井県をはじめに、英語教員の目標達成率が高い都道府県ほど、子供たちの英語力も高い傾向にある。今後、英語教員の英語力向上と同時に英語教育への意識改革が重要な課題となりそうだ。

■不安が大きい民間試験の導入

ところで、4技能をバランスよく身に付けるという英語教育の方針に異論はないものの、その評価の基準が民間の資格検定試験の点数やスコアで、本当によいのだろうか。東京大学は、民間試験の成績を入試の「合否判定に使わない可能性が高い」という意向を表明した。大学入試改革に逆行するものと物議を醸しているが、ある意味、一つの見識ともいる。それほど、民間試験の活用には、採点の公平性や受検機会の平等性などへの不安が大きい。

学校の英語教育についても、民間試験による資格取得が英語教育の目標になりかねない危険性がある。例えば、国語や数学の目標が、民間試験で一定以上の成績を取ることとなったら、子供たちや教員はどう受け止めるか。

現行では4技能を客観的に測定する術は、実質的に民間試験しかないというのは事実だが、将来的にも民間試験に依存することは、学校の英語教育にとって、決して望ましいことではないだろう。

 

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