インドネシアのデジタル化は始まったばかり しかし普及スピードは速く、テストにCBT採用

深掘り・小宮山教育新聞特任解説委員 小宮山 利恵子 (リクルート次世代教育研究院院長)

今月、インドネシア・ジャカルタを訪問する機会を得た。同国では来月、全国国立大学共通入学試験(SBMPTN=Seleksi Bersama Masuk Perguruan Tinggi Negeri)と呼ばれる、日本でいうセンター試験が実施される予定だ。今回はインドネシアにおける教育と、実際にテクノロジーを用いてどのような授業が行われているか、学校訪問を通じて得た知見を共有したい。

■インドネシアの教育制度

世界第4位の人口2億5500万人を抱えるインドネシア。その25%が若年層といわれ、年齢の中央値は28歳。日本の46歳とは、かなり違った人口ピラミッドを有する。

日本の文科省に当たる教育省が、初等教育から高等教育までの教育制度のほぼ全般を所管しているが、興味深いのは、初中等教育におけるイスラム教に関わる教育については、宗教省が管轄していることだ。
一般の学校とイスラム系の学校も併存している。同国のイスラム教人口が約9割であることを考えると、その施策は理解。

また、同国の学力についてみてみると、直近2015年に行われたPISAの結果は、読解力64位(日本8位)、数学的リテラシー63位(日本5位)と、それぞれOECDの平均以下となっており、基礎的な学力の定着が課題になっていることがうかがえる。

インドネシアのイスラム系私立校の授業風景
インドネシアのイスラム系私立校の授業風景
■テクノロジーの活用

インドネシア近郊にある、イスラム系私立学校Almajan Islamic Schoolを訪問した。同校は幼稚園から高校までを備える総合学校で、紙の教科書はほとんどなく、デジタル化された教材を使用している。

この状況は、私立校では標準的だという。日本では今年2月にやっと、デジタル教科書を正式な教科書に位置付ける学校教育法改正案を閣議決定し、来年4月から施行予定であることを考えると、元々インフラがなかった途上国の方がテクノロジー導入に柔軟で、採用スピードも速いという皮肉な事象が起きている。

また、同校では2年前から各教科において、反転授業と共にオンライン学習サービスQuipperを利用しているとのことで、実際に授業を視察したときにも、子供たちの机にはQuipperの画面が映し出されたタブレットとノートが置いてあった。

「子供たちは私たちと違い、デジタルネーティブ。教育も新しい教育に変わっていかなければいけない」

同校の先生が発した言葉は印象的で、とても先進的だ。子供たちはデジタルに慣れているが、一方で先生たちはどうか。

「年を召した先生はテクノロジーに弱い部分があるので、小学校を担当することが多い。イスラムの基礎的なマナーを教えたり、コーランの暗唱をサポートしている」という。

同校で使われているQuipperは同国、フィリピン、メキシコで利用されているもの。約300万人の受講者が存在し、同国では「宿題」を意味する単語としても、Quipperが用いられているほどだ。学校だけではなく、家での利用も盛んなのは、交通渋滞がひどく通塾が難しいことが大きな要因だという。テクノロジーが地理的格差を縮小している。

■CBTの導入

インドネシアでは、15年から高校生対象の全国統一試験(Ujian Nasional)で、試験的にComputer Based Testing(CBT)を導入してきた。初年度は594校のみだったが、16年には4402校に達し、330万人の受験者のうち92万7000人がCBTを通じて受験したことになる。

「紙のみで勉強していると、デジタルの試験を受験したときに面食らってしまう。そうならないためには、日頃からデジタルに慣れる必要があり、Quipper活用はCBTへの橋渡しになっている」という。

CBTは同国だけではなく、米国やフィンランドなどでも利用されている。フィンランドでは16年から大学入学試験の一部で導入が始まり、19年には全ての同試験がCBTになる予定。生徒自らが、自宅からPCを受験会場に持参することが想定されている。

一昨年同国を訪問した際に大学入学試験センターも視察したが、その際、生徒一人一人の試験解答をUSBで保存すると聞いて、驚いた記憶がある。日本では民間企業を中心にUSB利用を禁止し、クラウド上でデータ管理をしているところが多いため、強く印象に残った。

インドネシアとともに、フィンランドにおけるCBTの行方についても、今後注視していきたい。