(新しい潮流にチャレンジ)よい学び方を知りたい子供たち(1)

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

「学びに向かう力」を育てるために

〇「上手な勉強の仕方がわからない」子供たち

いよいよ新学習指導要領の移行期に入り、新たな学習展開を試みようとしている学校も多いであろう。新指導要領の理念を生かした新たな教育実践は本番を迎えるのである。特に「主体的・対話的で深い学び」は授業の基本として教師に受容されることも確かである。

また、三つの柱とされた学力、つまり「基礎」「活用」「学びに向かう力」の形成が重視されると考えるが、ただ「学びに向かう力」についての認識がどの程度であるか、はよくわからない。

そこで思い出したことがある。ベネッセが「第1回子ども生活実態基本調査」(2005)で「もっと勉強しておけば」と後悔する中・高校生が7割を超すとする調査結果の公表である。小学生でも5割に近い。若い頃に「もっと勉強しておけばよかった」と思う大人はたくさんいる。しかし、小学生から後悔しているのは驚きであった。さらに「上手な勉強の仕方がわからない」とする子供は、小が38.9%であるが、中は72.1%、高は75.7%であった。

実はベネッセは『学習基本調査』を継続的に実施していて、その結果はやや異なっている。「もっと勉強しておけばよかった」が2001年は小35.4%、中41.6%、高22.1%である。それが2015年になると小30・5%と減少するが、中は43・0%、高は30・5%と増加する。「上手な勉強の仕方がわからない」はグラフ:「上手な勉強の仕方がわからない」に示したように、小はやや減少するが、中・高は60%を超えたままである(ベネッセ教育総合研究所『第5回学習基本調査』2016)。

この調査結果をどう受け止めるべきであろうか。教師は毎時間授業を行っている。しかし、授業を行っていても、子供が望む「上手な勉強の仕方」までは教えていないのではないか。しかもこのグラフでみると、中・高は25年前からほとんど変わらない状況が続いている。授業改善が進んでいない印象である。

実は、この問題こそは新たな授業の在り方として教師は真剣に取り組むべきでないかと考える。

〇「学びに向かう力」の育成に向けて

新学習指導要領において学力の考え方が変わった。周知のように、法的に示された3要素は「基礎的な知識・技能」「思考力、判断力、表現力等の能力」「主体的な態度」であったが、それが新学習指導要領では三つの柱となった。特に基礎や活用はほとんど同じであるが、最後は「学びに向かう力・人間性等の涵養(かんよう)」とされたのである。

ただ、三つの柱は新指導要領の「総則」に文言が並んでいるだけである。また、教科等の「内容」は[知識および技能][思考力・判断力・表現力等]が示されるだけで「学びに向かう力」が具体的に示されていない。

「学びに向かう力」はどう指導すべきであろうか。中教審の「答申」等の考え方を参照したいが、新しい時代に必要となる資質・能力の育成として「何ができるようになるか」を重視し、「生きて働く知識・技能の習得」「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成」をベースにして、「学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性の涵養」を示している。

さらに次のような説明がみえる。「主体的に学習に取り組む態度を含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する能力、自らの思考のプロセス等を客観的に捉える力など、いわゆる『メタ認知』に関するもの」「多様性を尊重する態度と互いのよさを生かして協働する力、持続可能な社会づくりに向けた態度、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりなど、人間性に関するもの」

このように「学びに向かう力」はかなり幅広い能力や態度などを含むものとして述べられている。

当然ながら、このような力や態度等を身に付けるためには、身に付ける具体的なスキルがあって、その方略を学ぶことができれば、個々の子供の学びは促進できるはずである。そのことが極めて重要なのは、「学びを人生や社会に生かす場」では、ほとんどが独り立ちの世界における行為なのである。
自立した人間として社会的に参加し、多様な問題解決を行う必要がある。つまり、「よい学び方」を身に付けていれば、問題解決のための思考力等が働き、解決に向けた具体的な取り組みが可能になる。

〇「学び方」を学ぶ指導の重視を

それは将来と言わず、学校生活においても多様な課題に向けた学習態度として大いに役立つ働きを持つ。主体的な取り組み、自立的な態度などの抽象的な受け止めではなく、日常の授業でも可能な「学び方」の習得である。その意味で、「学びに向かう力」を日常の学習活動に関連させることが必要であって、そうした教師の指導努力が明確に意識化されないと、この言葉が空文化するおそれがあると考える。

例えば、総合的学習の学習プロセスがある。課題発見・設定↓課題追究(課題に即した情報収集、情報分析等による課題解決、まとめ等)↓成果発表(伝える相手や状況による効果の工夫)等である。

このような手法を身に付け、課題に対応した方略を柔軟に行うことで、総合的学習は子供の主体的で積極的な多くのよい実践を生み出してきた。その手法は人生や社会に生かすことが可能な方略を内在している場合が多い。つまり、教師は「教えること」のみに重点を置くのではなく、子供が「学び方を身に付ける」指導に力を入れるべきなのである。それが徐々に独り立ちの学習、平たく言えば「自学自習」を可能にするのである。「自学自習」の学習態度こそは将来においても極めて重要である。

恐らくは、新学習指導要領が示す「主体的・対話的で深い学び」が教師の指導に導入される機運が高まることで、「よい学び方」もまた子供個々に浸透する可能性が大きいと考える。それを期待したいのである。

 

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