教員不足の解決方法 テクノロジーの利用促進などで

深掘り・小宮山教育新聞特任解説委員 小宮山 利恵子 (リクルート次世代教育研究院院長)

衝撃的な報道を見た。本紙既報「教員不足で英語の授業できず 松江市の市立中学校」という記事だ。4月から1カ月の間、教員不足のため3年生が英語の授業を受けられなかったとのこと。3年生といえば高校受験を控えた大事な学齢であり、1カ月もの間、授業を受けられないというのは、教育の機会均等から考えても異常事態である。他県と教員を取り合っている現状があるとのことだが、実は教員が不足している状況は昨年から全国で顕著になりつつある。

■教員のなり手がいない

教員採用試験の競争倍率は低くなっている、つまり合格しやすくなっているのになり手がいない。昨夏、公立小・中学校の教員が全国で不足しているという報道があった。NHKの調査で、都道府県と政令指定都市合わせて67の教育委員会に取材し、32の委員会で定数に対して717人の教員が不足し、一部の学校では計画通りの授業が行えなくなっていた。ある学校では3カ月、理科の授業が行えなかったとの話もあり、事態はかなり深刻だ。

なぜ教員のなり手がいないのか。それは、日本の教員は教科教育だけではなく、部活を持ったり保護者対応などの負担が大きいことがまず挙げられる。

その上で、2020年からは道徳や英語、プログラミングと必修教科となるものが多く、教員が学ぶべきこと、行うことがあまりにも多過ぎる。

OECDの調査によれば、日本の教員の1週間当たりの勤務時間は、53・9時間と34カ国・地域の中で最長で世界一多忙と言われている。日本では15年から「教師の日」が民間で設けられ、教員への感謝を通じて教員の社会的地位向上が期待されている。

教員不足は日本に限った話ではなく、例えば米国ではテクノロジーを扱える教員が民間企業に流出しているという現況がある。

07年に新しく教員になった人の内、17%が5年以内に離職している。

主要な理由は「教員が尊敬されていないこと」「給与が低いこと」。日本でも同様の話を聞くようになったため、今後さらに教員不足が進む可能性がある。

■解決策(1)教員の働き方改革とテクノロジーの利用

教員不足の根本的な解決方法は、個人的には教員の働き方改革だと考えている。やることばかりが増え、減るものがなければ多忙は変わらないどころか、さらに厳しい状況に追い込まれる。

少し前の調査だが、文科省によれば15年度にうつ病などの精神疾患で休職した公立学校の教員は5009人に上る。多忙を改善するため学校から部活が切り離される事例も出てきているが、それだけでは足りない。抜本的に教員の働き方を変える必要がある。

もう教員たちの熱意に頼るのは限界だ。テクノロジーを使えば、校務を軽減し効率化することも可能。また、もし教える人がいないという状況があるならば、その間だけでも「スタディサプリ」などのオンライン学習サービスを利用すれば良いのではないか。人がいないなら、その部分をテクノロジーに任せるという判断も重要になってくる。1カ月何も学ばないという状況よりも良いだろう。

■解決策(2)修士号から受験可能に

和歌山県教委では、今年度実施される教員採用試験から公立高校募集の全教科で、関連する博士号を取得していれば教員免許状がなくても受験できるようにする。

これまで一部、例えばTeach For Japanが自治体と掛け合って、教員免許状を持たない人が教壇に立つのを容認していたケースはあるが、自治体自らこのような決定をしたことは注目に値する。

博士号取得後、期間が限定された研究に従事するポスドクと呼ばれる人たちで、就職できない人たちが多数存在するという課題がある。和歌山県の取り組みはそれを改善する試みにもなるだろう。

個人的には博士号ではなく修士号でも良いのではと考えている。

フィンランドでは教員になるには5年の課程を経る必要がある。3年の学部と2年の修士だ。そして5年経た後、9割以上が教員になる。そのフィンランドでは教員は教育の専門家として扱われ、社会的地位も高い。

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