(新しい潮流にチャレンジ)よい学び方を知りたい子供たち(2) 学びの「自覚」を持つことの大切さ

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

〇「嫌いから好きへの転換」が学びを変える

最近、日本人の傾向について生産性の低さとともに語られるのは、仕事を指示通りにこなす勤勉性は高いが、自ら主体的に仕事に関与する姿勢が低いとされることである。子供の学習の場合も同様で、受け身に姿勢で知識的な獲得には熱心だが、自ら課題に取り組もうとする意欲も学習方略も低いとされる。

ところで、極めて興味深い子供の学びの姿勢についての調査がみられる。

新しい潮流40図ベネッセの調査であるが、同じ子供に、勉強の「好き」「嫌い」を1年前(15年7~8月)と1年後(16年7~8月)に尋ねたところ、小・中・高生とも、勉強が「好きから嫌い」「嫌いから好き」になった子供がそれぞれ1割前後見いだされたという。そこで成績の変化との関連を調べたところ、図のような結果が見いだされたという(ベネッセ教育総合研究所『子どもの生活と学びに関する親子調査2015―2016』2017)。

この場合の、成績(自己評価)が上がった子供とは、15年は「成績中位」だったのが16年は「成績上位」になった場合と、15年は「成績下位」だったのが16年は「成績上位」または「成績中位」になった場合の合計だという。

結果として、小・中・高生ともに「嫌いから好き」になった子供が成績を上げている。「好きをキープ」した子供よりも多いのである。興味深いことである(小学校は5、6年生)。

そこで重要な課題になるのが、成績が上がったのであるから、勉強の仕方に違いがみられるようになったのではないか、という点である。この調査は「好きから嫌い」と「嫌いのまま」との比較を行っている。

当然ながら前者の方が高い結果であるが、両者の差異が最も大きかったのは「何が分かっていないか確かめながら勉強する」であった。次いで「テストで間違えた問題をやり直す」も小・高で差異が大きい。「くり返し書いて覚える」は小・中で差異が大きい。

これらは基礎的な学びとしての勉強方法である。いわば理解を確実にする方略と言える。つまり、「嫌いから好き」に変わった子供は自ら学ぶ手法を獲得しはじめたといえる。

〇学びの「自覚」が高くなると「よく学ぶ」

ところで、「嫌いから好き」への転換が学習成績を高めたことの要因は何なのか。「好きのまま」よりも成績が良いことの意味は、自ら学ぶことの「自覚」が高まったことの証明ではないか。

その「自覚」が、「よい学び方を知りたい」という願いと重なるとき、積極的な学びに向かう力の形成になると考える。その基本は何よりも「勉強が楽しい」とする感覚が高くなることではないか。例えば、「嫌いから好き」と「嫌いのまま」との対比で、「授業が楽しい」は前者が後者よりも小18.9ポイント、中17.5ポイント、高13.8ポイント高くなっている。「尊敬できる先生がいる」「学校の先生以外の人の話を聞く」も高くなる。小は「夢中になって時間がたつのを忘れる」が8.7ポイント高かった。「親から仕事の大変さを聞く」も小・高と高い。

ただ、「よい学び方」は容易には子供に伝えられない。子供の学びの方略は、日常の学習・生活習慣や学習意欲などの個別的な態度によって異なるからである。むしろ、子供自身が自ら学ぼうとする「自覚」に支えられることの方が大きいであろう。その点、「嫌いから好き」への転換は大きな意味がある。また、「嫌いのまま」「好きのまま」で過ごすのではなく、「自覚」に向かう姿勢をうながすことが重要である。

その意味で、毎日の授業をどう構成し、展開するか、というカリキュラム・マネジメントは極めて重要で、子供はその影響の下で学び方を学ぶからである。

なお、「現在の学校の授業」についての調査も行っている。「よくあった+ときどきあった」であるが、かっこ内は小・中・高の順(%)である。「グループで調べたり考えたりする」(90.9、85.2、66.6)、「テーマについて討論する」(75.4、67.6、54.7)、「調べたことをグラフや表にまとめる」(66.9、58.8、39.0)、「調べたり考えたりしたことを発表する」(87.3、78.7、57.5)、「観察・実験や調査などで考えを確かめる」(87.2、81.5、51.4)、「学校の先生以外の人の話を聞く」(69.6、64.9、68.9)であった。

なお、「よい学び方を知りたい」という願いは極めて個別的でもある。授業を毎日繰り返してもそれが子供の願う「よい学び方」に必ずしも直結しないことが多い。それは従来の授業が証明している。そこで教師は毎日の授業を展開しながら、「学び方」の指導もまた意図的に行う必要があると言える。

〇「学びに向かう力」の形成に向けて

一般的にも例えば次のような学習態度を身に付けることが必要である。

(1)問題解決の着眼点や視点を持つことができる(2)学習のめあてがわかり、課題解決への見通しを考えることができる(3)課題解決の方向や方法がわかる(4)学習過程の途上で自らの学習を修正し、補充したり、発展させたり、深化させたりできる(5)課題解決の過程を知り、新たな学習や生活に生かすことができる。

さらに細かな学び方を言えば、語の読み、漢字の習得の仕方、話し方などもまた必要不可欠である。子供が身に付けたい基本的な学習とスキルがわかれば、独り学びが可能になる。

それと同様に、例えば問題解決学習の手法もまた、将来の生き方に活用できるものである。

このような学習態度形成が、多くの教科で日常的に実施されれば、積極的に課題に取り組む子供がその手法を身に付けることが可能になる。情報活用能力もまた同様である。

さらに「多様性を尊重する態度と互いの良さを生かして協働する力」の育成は、「対話的な学習」を繰り返すことで可能である。「よい学び方」の獲得は子供個々の学習したいという「自覚」に基づくことが重要である。