教員不足で授業ができない 急がれる働き方改革と処遇改善

広島県の湯﨑英彦知事は5月15日、県内の小・中学校で教員の欠員が発生していることを明らかにした。また、島根県松江市の中学校で英語教員が定数に達せず、3年生の英語の授業が実施できないことがマスコミにより報道された(本紙5月24日付既報)。今、学校現場に何が起こっているのか。

■非正規教員に頼らざるを得ない現場

湯﨑知事は、広島市を除く県内の公立小学校35校で、教員38人が欠員状態にあることを明らかにした上で、「ゆゆしき事態だ」と表明した。また、松江市の中学校では、英語教員1人が欠員したため、4月から3年生の英語の授業が開始できなかったという。

義務教育である小・中学校は、国によって教職員定数が定められ、給与などの人件費も国と都道府県(政令市を含む)が負担するため、制度上、教員の欠員は生じない。なぜ、こんな事態が発生したのか。背景には、二つの問題がある。

一つは、非正規教員の存在に頼る現在の教育現場の問題だ。広島県や松江市の事案をみると、年度末に異動した非正規教員の代わりの非正規教員が見つからなかったことが、欠員発生の主な原因となっている。

地方分権の一環として、2004年度から義務教育国庫負担制度に「総額裁量制」が導入され、非常勤講師や臨時的任用教員(常勤講師)を教員定数内にカウントできるようになった。もともとは都道府県による弾力的な教員配置を可能にする措置だったが、教員定数を非正規教員で賄えば人件費が抑えられるため、財政難に悩む都道府県は、一斉に非常勤講師の活用に乗り出した。以後、非正規教員は学校現場に、なくてはならない存在となっている。

それでもこれまでは、さほど問題が顕在化することなくやってきた。ところが、第2次ベビーブームの大量採用世代の教員が一斉に退職時期を迎えたため、新規採用や非正規教員の需要が急激に高まり、人材の奪い合いが起きている。

松江市の例は、非正規教員が確保できなければ、即教育活動に支障が出るという、現在の学校現場が抱える構造的な危機を明らかにしたといえる。

■減少傾向の教採試験受験者

もう一つの問題は、教員自体の不足だ。国の教員定数改善計画は、05年度に終了した第7次計画を最後に実質的に策定されていない。新たな配置改善計画はあるが、通級指導や外国人子女対応の加配定数を基礎定数化したもので、それほど教員増にはつながらない。

一方で小・中学校は、今年度から新学習指導要領に向けた移行措置期期間に入っており、特に小学校では授業時間数増加への対応が深刻な問題となっている。また、思考力重視の教育を目指す新学習指導要領の実施には、「主体的・対話的で深い学び」による授業改善が不可欠で、教員に掛かる負担は、当然、重くなる。

加えて、ベテラン層が大量退職時期を迎えているため、学校現場の人手不足はより深刻化している。にもかかわらず、景気回復による民間企業の採用増、学校の労働環境のブラック化の喧伝(けんでん)などにより、教員採用試験受験者は年々減少しているのが実情だ。特に小学校では、採用試験の競争倍率が3倍を切る都道府県もある。

■教員の長時間労働に歯止めを

今、早急にやるべきことは、二つある。一つは、学級定員の引き下げにつながる教員定数の改善の実現、もう一つは教員不足や教員の長時間労働に歯止めをかけることだ。

もちろん、国の財政事情は考慮しなければならないが、現在の学校が教員の過酷な長時間労働でやっと成り立っている現実を考えれば、思考力重視の21世紀型教育を目指す新学習指導要領の実施は難しい。

今後の日本のために教育の転換が必要だと政府はいう。だとすれば、政府は今こそ決断すべきだろう。

もう一つは、非正規教員の処遇改善だ。現在の非正規教員不足には、安い人件費でいつでも解雇できる「都合のよい人材」として非正教員を扱ってきた教育界の責任もある。
多くの場合、非正規教員は任期1年で、継続雇用の保障がない上に、常勤講師の場合は、正規教員と同様に学級担任などもしているにもかかわらず、給与は低く抑えられている。

学校における「働き方改革」は、正規教員の長時間労働だけではない。非正規教員の処遇改善ももう一つの柱だ。また「同一労働同一賃金」が、民間の働き方改革の流れであることも忘れてはならない。

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