(注目の教育時事を読む)第49回 公立小・中学校における教員不足問題

eye-catch_1024-768_tyumoku-kyoiku_r20180426藤川大祐千葉大学教育学部教授の視点

求められる抜本的な解決 教員配置には余裕が必要
◆非正規教員への依存など複合的な要因が◇

公立小・中学校の教員不足が深刻化している。本紙電子版5月11日付で報じられているように、島根県松江市の市立中学校で英語の非常勤講師が確保できず、4月から1カ月ほど3年生3クラスの授業ができなかったという。また、本紙電子版5月16日付では、広島県内の35校で臨時採用教員26人と非常勤講師12人の計38人の教員が不足、年度当初に国語と理科の授業を予定通り実施できなかった学校があったと報じた。こうした教員の不足は、いくつかの複合的な要因によって生じている。

第一に、教採試験で十分な数を採用できていない実態がある。ここ数年、首都圏を中心に大量採用が続いているが、競争率の低下もあって多くの合格者を出せなかったり、辞退者が多かったりして、採用予定数を確保できない事態が生じやすくなっている。

第二に、第一の点とも関連して、臨時採用教員や非常勤講師といった非正規教員への依存が強くなっている傾向がある。非正規教員の数は年々増えており、各学校は頻繁に新たな非正規教員を探さなければならなくなっている。

第三に、非正規教員希望者のストックの枯渇がある。非正規教員への依存が強まる一方で、民間企業などへの就職が好調であるため、教員免許を持っていて定職に就いていない者を探すのが難しくなっている。実際、臨時採用教員や非常勤講師を紹介してほしいという相談を頻繁に受けるのだが、可能性がありそうな者はすでに別の学校で勤務していて、全く紹介できない状況である。

◇さまざまな問題が生じる事態に◆

以上のような教員不足の状況は、授業の実施が難しいばかりでなく、さまざまな問題を生じさせている。

例えば、中学校で授業時数の少ない技術・家庭科、美術科などに関して専任教員を置かずに非常勤講師だけで授業を行う場合がある。当然、他の教員との連携や、施設・備品の管理といった点で、課題が生じる。こうした事態に対応するために専門外の教員に臨時免許を与えて授業を担当させることがあるが、当然、望ましくはない。

代理の教員を探すのが難しいばかりに、出産や育児で休むことに気が引けたり、体調が悪くても無理をして仕事をしてしまったりするケースも考えられる。学力向上、生徒指導、保護者対応、特別支援、部活動指導など、教員の負担が増す中で、専任教員ではなく非正規教員を増やしてきた結果、専任教員の負担は限界に近づく一方で、教員志望者の不足が深刻化する事態に至った。

ようやくここ数年、教員の過重負担が注目されるようになり、学校における働き方改革としてスクールサポーターや部活動指導員を配置する取り組みが始まっている。こうした取り組みは非常に重要であり拡充される必要があるが、状況の抜本的な改善には遠い。

◆「1タスク2パーソン」の実現を◇

では、状況の抜本的な改善はどうすればいいのか。それは、一つの業務に主担当と副担当がつく「1タスク2パーソン」の実現である。

「働き方改革」を早くから提唱してきたNPO法人フローレンスは、さまざまな業務効率化を進めつつ、あらゆる業務に副担当を置き、誰かが突然休んでも業務に支障が生じないようにしている。働きやすい職場環境をつくることにより、優秀なスタッフが集まり、ますます業務の効率化が進んでいるという。

学校は典型的な1タスク1パーソンの職場で、1タスク2パーソンなど非現実的と思われるかもしれない。教員定数を改善し、小学校では学級数の1・5倍以上、中学校では学級数の2倍以上の専任教員を置くようにすれば、1~2学級に1人の副担任を置くことができ、授業時間には常に小学校で3分の1、中学校では半数の教員が授業がない状態とすることができる。授業時間を授業準備や書類作成などの別の業務に使えるようになる上、突発的な事態への対応や、突然休んだ教員との授業の組み替えが容易にできるようになる。もちろん、専任教員の比率を上げ、主要な業務は基本的に専任教員が担えるようにする。財政負担を大幅に増やす必要があるが、負担が増大する中で、教員のシャドーワークばかり増やしてきたことが間違っていたのだ。財政状況が厳しいのであれば、教育目的税の創設なり教育国債の発行なりを行ってでも、国が資金調達をすべき状況にあるのだ。

教育は国家百年の計であり、財政的にみても教育への投資は将来回収可能だと考えられる。教員の確保すらおぼつかない現状は非常に拙劣である。本来、教員配置はもっと余裕を持ったものでなくてはならない。小手先の働き方改革でなく、抜本的な改善こそが検討されるべきである。

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