採点は教師の仕事か 聖域をとらえなおす

妹尾写真教育新聞特任解説委員 妹尾昌俊(教育研究家、中教審委員)

■ITのできることが広がってきた

5月16~18日に東京ビッグサイトで開催された「教育ITソリューションEXPO」を少し見てきた(講演もしてきた)。AI機能を備えたロボットやプログラミング教育の教材なども多数展示されていて興味深かったが、学校の働き方改革を前面に押し出した商品・サービスも多く目にした。

ロボットなどと比べると派手さはないかもしれないが、現場の先生方にとって特に助かるなと思ったのは、採点作業の効率化に関するものだ。例えば、手書きのテスト結果をスキャンして、パソコン上で同じ設問ごとに一覧表示して丸付けができるサービス。すごく最先端な技術という感じはしないのだが、かなり作業短縮になるのではないか。採点結果を読み込んで自動集計する商品もあった。また、スキャナーで読み込んだデータを基に、採点をほぼ丸ごと外注できるサービスもあった。

文字認識や画像認識などの技術も発達しているので、コンピューターによる自動採点も相当進んでいるようだ。

驚いたのは英語学習だ。例えば、”I’m from Australia.”とパソコンに話しかけてみると、自分の発音のよくないところをチェックしてくれる。Australiaがうまく言えなかったら、その文字をクリックすればよい。正しい発音を聞いたうえで、再テストできる。また、”Where are you from?”のようなオープンクエスチョンへの回答(答えが複数ある質問)であっても、かなり正確に文法・構文と発音をチェックしてくれるというものだった(もっと複雑な対話の場合、対応できるかは未確認だが)。

■教員の仕事として、採点の優先度は高いのか

ちょうど数日前の朝日新聞(6月10日)でも、学校の多忙に関する特集記事があった。そこでは、ある公立小学校教諭の声として、以下を紹介していた。

「昼に給食をかきこむように食べると、すぐ教室で宿題の丸つけです。『堂々としたいい字だね』などと全員のノートにコメントも書き添えます。『ちゃんと見ているよと伝えたい』。新任の時から続けている『最後のとりでみたいなもの』です」

この先生に限らず、宿題、テスト、その他提出物のチェックや採点に時間をかけている教員は多い。国の教員勤務実態調査(2016年実施)によると、週60時間以上勤務している教諭(つまり、過労死ラインを超えていると思われる)の平日1日のうち、成績処理、試験の作成・採点、提出物確認などにかけている時間は、小学校で41分、中学校で43分であり、それぞれ1日に占める比重は5.6%、5.9%である。これは学校行事などと並んで、かなり比重が大きい。業務改善や働き方改革というと、すぐに会議の効率化が挙げられるが、教員の平均的な姿としては、会議よりも、成績処理や採点に時間をかけている。教員にとって負担感が強いといつも指摘される事務作業も、成績処理関連に比べると短時間である。

しかし、採点やコメント書きについて、働き方改革でメスを入れようという声はあまり聞こえてこない。それは、新聞記事で紹介されていたように、教員にとって忙しくても減らすべきではない「最後のとりで」、聖域であり、児童生徒と向かう大切な時間と見なされているからであろう。とりわけ小学校においては、きめ細かくケアすることが重要視、当然視されている。

本当にこのままでいいのだろうか。仮に、教員に時間が十分あるなら、また生活にゆとりがあるなら、採点やコメント書きをじっくりやるのもよいだろう。だが、現実にはその反対である。過労死してもおかしくないくらいの過酷な状況にあるのだから、採点やコメント書きはなるべく減らす(例えば、授業中に児童生徒同士でチェックし学び合ったり、コメントを書かなくても授業中に口頭でフォローしたりする)とともに、作業を教員以外にやってもらえるなら任せたほうがよい。具体的には、コンピューター、AI、あるいはスクール・サポート・スタッフや支援員、外注先に。

教員にとって優先順位が高いのは、採点やコメント書きではなく、採点された結果を見て、多少の考察と分析を行い、次の授業に生かしていくことであろう。長時間労働で作業に埋もれ、そうしたクリエイティブに思考できる時間が取れていないとすれば、それこそ、「最後のとりで」が危なくなっている。