(新しい潮流にチャレンジ)学級経営をより充実するために その1

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

マネジメントとして達成を目指す

〇学級経営の認識は十分か

新学習指導要領は、「学級経営」重視である。「学級経営」の重要性について、これまで指導要領レベルでほとんど提示されることはなかった。それが今回は中教審論議で子供の資質・能力を育成するうえでの学校教育の意義や役割の基本として学級経営重視の姿勢を打ち出している。

言うまでもなくわが国の学校は、学級を単位とする担任制が敷かれ、学級担任を中心とする教育の諸活動が行われている。言わば学校教育の基盤を形成しているのが学級である。さらに中・高校は教科指導と並行して行われているが、小学校はほとんどの教科・領域について学級担任が指導を担う形になっている。小学校の教育の実際は学級担任の指導に負うところが大きい。こうした実態を考えるうえでも、学級を中心とする指導の在り方が子供の成長に限りなく大きな影響をもたらすことは必定である。

新学習指導要領が提唱する学級経営重視は、子供の成長に向けた極めて重要な視点であると考える。その関連で『初等教育資料』5月号(東洋館出版社)が「学級経営の充実」を特集しているのに注目したい。ただ、学級経営のありようについて共通認識が明確であるかは疑問がある。学級経営は「多岐にわたる」という説明があってもどのような内容を指すのかは判然としない。特別活動との関連でのアプローチは、その視点からの学級経営は重要であるが、全てではない。

しかし、新学習指導要領が学級経営重視を打ち出したことで、学級担任の役割が今後大きく見直されることは確かである。その意味で新学習指導要領解説『総則編』に重要な指摘がみられる。

「学級担任の教師には、学校・学年経営を踏まえて、調和のとれた学級経営の目標を設定し、指導の方向及び内容を学級経営案として整えるなど、学級経営の全体的な構想を立てるようにすることが求められる」

ここでは「学級経営の全体的な構想」という文言が重要である。つまり、学級経営は学校・学年経営と関連しながら全体的な視野が必要とされるということであり、さらに学級経営案作成にも言及している。

〇学級経営の認識はどう変わってきたか

実のところ、新学習指導要領は主に特別活動の学級指導との関連などで学級経営重視を提唱しているが、それは学級経営の全体構想からみれば一部に過ぎない。ただ、過去に学級経営の認識は「狭義」と「広義」に分かれていたことがあった。

私が学級経営研究を実施していたのは1970(昭和45)年後半であるが、その当時精力的に学級経営論を提唱していたのは宮田丈夫であった。ただ、宮田は学級経営を教育目標、内容、方法の底辺に位置づく規定的なもので条件整備的なものに限定されるという極めて狭義の考えであった。そして、学級を中心にして行われる各教科・領域等の指導を「学級教育」としたのである。学級担任の指導を学級教育と学級経営とに分離するという狭義の考え方である。狭義の考え方は他の研究者にもみられた。

それに対して、学級で行うすべての教育活動、教科・領域の指導や日常の生活指導などを含めて学級担任の指導行為を学級経営の範疇(はんちゅう)に入れる「広義」の考え方もみられた。学級担任の役割重視の考え方が強調されたのである。そこで児島邦宏は、学級教育=学級経営論、つまり広義の立場をとるものとして、宮坂哲文、片岡徳雄とともに、私の名をあげている(『新教育学大事典』学級経営1990)。だが、学級経営の主要な内容は必ずしも明確ではなかった。そこで私は当時、学級経営の内容領域・機能を次のように提唱した(拙著『開かれた学年・学級経営の展開』明治図書1978)。当時のまま載せておきたい。

①基本的事(目標、実態(含む生徒理解)、計画、組織、評価にかかわる内容)

②指導領域的事項(教科、道徳、特別活動、日常生活の指導にかかわる内容)

③経営条件的事項(教室設営、家庭連絡、学級事務にかかわる内容)

④重点的指導(学び方指導、個別指導、作文・読書指導、学級の人間関係、自主活動、小集団指導、教育機器の活用、学年内協力指導などの学級担任が重点として指導する内容)

確かに多岐にわたるが、学級経営として細部に及ぶ子供個々への対応こそ重要なのである。また、細部にこだわりを持ちながら、学級を総体としてよりよい方向へ導くこと、そのことが重要である。さらに、日常的に安定した学級の雰囲気を保つ努力も必要である。新学習指導要領の『総則』は簡潔に「学習や生活の基盤として、教師と児童との信頼関係及び児童相互のよりよい人間関係を育てるため、日頃から学級経営の充実を図ること」と述べている。

〇学級経営はマネジメントである

学級経営を豊かに展開するのは学級担任の責務である。学級を基盤として確かな教育を展開するミッションがある。しかし、どうすれば豊かに展開できるであろうか。その基本は、学級経営はマネジメントであるとする考えが重要である。

もともと学級経営を英訳すれば、classroom Managementである。つまり、学級経営をマネージする、その手立てが重要であり、マネジメント力を高める担任教師の経営観が必要とされる。学級マネジメントは、当然ながら目標Plan↓実施Do↓評価Check↓改善Actionの経営方略を前提にしている。学級担任がどんな学級をつくりたいか、という願いや期待が大切である。何よりも自分が担任する学級をどう導くか、ビジョンを描くことである。

そのビジョンの例はいくつかある。担任自身が「学級をこうしたい」というビジョンが重要だが、学校組織の一環としての学校・学年目標との関連するビジョンも重要である。また、実践的な目標を掲げ、達成できれば次の目標にチャレンジするというスモール・ビジョンも必要である。1年間という過程は学級マネジメントにおいて大小の動きはつきものである。

学級経営のビジョンがある程度確定できたとして、次に考えたいのは実施方略である。その最も重要なことは学級の子供個々がそのビジョンを受容し、達成に向けて努力するかどうか、である。その達成に向けた子供の動きをどう作りあげるかが担任の具体的な計画や実施方略であり、つまりはマネジメントである。ただ、学級担任の現状は「よろず屋」的で毎日の学級マネジメントを実施する余裕を持てないという実態もみられるであろう。そこで学級マネジメントの必須の手立てとしてスケジュール管理を行うべきである。

最近は、教師の日常の指導に役立つプランニング・ノートが各種発行されるようになった。学級マネジメントをスケジュール管理と組み合わせることで、学級経営を少しでも豊かなものに変えたいのである。学級担任の役割は、毎日子供個々と向き合い、学習や生活で確かな成長を遂げるように見守り、支援し続ける役割としてのミッションがある。それが学級経営である。

繰り返すが、学級経営は学級担任に課せられたミッションを達成するためのマネジメントである。