甲子園などの夏休み中の 部活大会は見直そう

妹尾写真教育新聞特任解説委員 妹尾昌俊(教育研究家、中教審委員)

 ■甲子園の感動の裏に

先日、夏の甲子園(全国高校野球選手権大会)が開幕した。連日熱戦が繰り広げられ、楽しんでいる読者も多いと思う。1回限りの真剣勝負で、毎回感動がある。

だが部活動の在り方を考えると、甲子園の盛り上がりは複雑な心境になる。

とりわけ今年は観測史上まれにみる猛暑が続く。学校の熱中症対策や危機管理が甘いと批判する某新聞社には、甲子園の主催者としての考えと対応について聞いてみたい。

熱中症予防の温度指標としては、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)が用いられる。WBGTとは、気温(乾球温度)、湿度(湿球温度)と輻射(ふくしゃ)熱(黒球温度)および気流の影響も反映された、総合的に暑さを評価できる温熱指標とのこと。日本気象協会のウェブページなどで、甲子園のある兵庫県西宮市のWBGTを確認してみてほしい。

激しい運動は中止とされる「厳重警戒」の日・時間が多いし、時間帯によってはWBGTが31℃以上の「危険」(運動は原則中止)域に達することもある。夏の高校野球は、熱中症の基準からすると完全にアウトだ。

スポーツ庁は今年7月20日の「運動部活動における熱中症事故の防止等について(依頼)」の中で、教育委員会などに向け、部活動のガイドラインについて「例えば、気象庁の高温注意情報が発せられた当該地域・時間帯における屋外の活動を原則として行わないように明記する等、適切に対応」することを求めている。

もちろん、これは県などのガイドラインに明記せよというだけではなく、「部活動をするなら熱中症対策をしっかりせよ」ということを求めた趣旨と思われる。だが、高校野球はそんなこと“どこ吹く風”の様相である。

今回から16日間の大会日程中1日「休養日」が設けられたが、準々決勝の後の1日にすぎない。これではほとんどポーズだけで、真剣に選手の健康と選手生命を考えているとは思えない。

加えて、名古屋大学の内田良准教授が指摘しているように、アルプス席の応援団や吹奏楽部も大変である。選手のベンチにはエアコンがあるが、応援席にはないのだから。

■猛暑は夏の大会を見直す機会に

問題は甲子園だけではない。小・中・高に限らず、さまざまな大会やコンクールが夏季休業期間中には開催されている。

この猛暑で大会の時間をずらした例はあるようだが、中止した例は相当少ないのではないだろうか。

もちろん、大会やコンクールを目指して一生懸命頑張ってきた子供たちの思いは大切にしたいし、実力を発揮する舞台も用意したい。しかし、だからこそ、大会の開催スケジュールはもっと見直すべきだ。猛暑では実力も発揮できない。

ある人が「学校というところは、人が死なないと、見直さないのか」と痛烈な批判をしていたのだが、反論できなかった。

優先順位のトップは、子供たちの命と健康にあることは言うまでもない。頑張ってきた気持ちを大切にすることや、中止にすると保護者からクレームが来るので避けたいということが、一番ではない。

例えば、甲子園については、真夏の大会でよいのかという検討が必要であろうし、一定のWBGTに達すると予想される時間帯は試合しない運用が考えられる。

だが、かのNHKが本戦1回戦から放映するほどの一大イベントであり、試合時期や時間の変更はとても難しいと聞く。

とはいえ、そもそも、なぜ甲子園だけこんなに特別扱いの放送がずっとまかり通っているのかが不思議でならない。夏の娯楽も視聴者のニーズもかつてとは比べものにならないくらい多様化しているというのに。

ある知人が「高校野球は京セラドームでやったらよい」と言っていたが、予算面などの条件が整うなら、よいアイデアだと思う。

だいたい、高校野球も最初は甲子園ではなかった。第1回は豊中球場だった。来年の記念すべき101回大会から、会場を変えてみてはどうか。

高校野球以外の大会、コンクールについても、会場の空き状況などの都合もあってなかなか見直せない事情はあろう。

だが、そもそも大会が多過ぎるのではないか。学校教育の一環として部活動を行うのであれば、真夏の大会の在り方は、生徒の命・健康という常識と教育的配慮でもっと見直されるべきだ。