(新しい潮流にチャレンジ)教科等横断の学習をどう進めるか

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

クロスカリキュラムで充実を目指す

〇教科等横断の三つのタイプ

今回出版された文科省の『小学校学習指導要領(29年度告示)解説』(東洋館出版社)の『総則編』で私が最も注目したい内容がある。それは教育課程編成における教科等横断の視点である。何に注目したかと言えば、教科等横断のカリキュラムが可能なように極めて具体的に「内容」が『資料』の形で示されていることであった。中学校も含まれている。「現代的な諸課題に関する教科等横断的な教育内容」である。例えば、「伝統や文化に関する教育」「主権者に関する教育」「消費者に関する教育」などである。それらが各教科・領域等でどのような指導内容があるかを学習指導要領から抜き出してまとめているのである。

ところで、教育課程編成において「教科等横断」の考え方が強調されてきたが、新指導要領の「総則」等で主に言われていたのは「言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力」であった。詳しい説明はない。それが今回の資料では「教科横断的な学習内容」としての新たな学習内容提示がある。どう考えるべきだろうか。

私は、教科等横断のカリキュラムを編成する場合、三つのタイプがあると考えている。その三つとは、「目標関連」「内容関連」「方法(能力)関連」である。例えば、「言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力」は「能力」とされているように、どの教科等でも育成すべきものであって、特に教科等を横断しなくとも可能なものである。国語で言語能力を育成するのは当然だが、社会科や理科でも授業を通して言語能力を指導することは可能である。同じように情報活用能力や問題発見・解決能力も教科独自で可能である。なぜ可能かといえば、言語能力などは指導方法がかなり同じだからである。例えば、発表力を育成する場合、社会科と理科ではほぼ同じような指導を行うであろう。そこで、これらを私は「方法(能力)関連」と呼んでいる。

それに対して「目標関連」がある。この場合は教科等横断でカリキュラムを編成するのであるが、カリキュラム編成の目標が一つに統合されることを意味する。例えば、生徒会、文化祭、学級活動、社会科、道徳等を組み合わせて実施した「全校クリーン作戦と地域清掃活動」がそうである。大きなテーマ(課題)に向けて取り組む活動が可能である。総合的学習に近いであろう。それらに対して最もわかりやすい教科等横断の考え方が「内容関連」である。『総則編』の『資料』に示されている「現代的な諸課題に関する教科等横断的な学習内容」である。

〇クロスカリキュラムの構想

ところで、私が総合的学習の導入に先駆けて提唱したクロスカリキュラムは1996年で、その当時もまた現代的諸課題の学習導入が盛んに言われていた頃であった。具体的には、情報教育、国際理解教育、環境教育、人権尊重教育、福祉教育などである。当時の中教審は「横断的・総合的学習」を提案していた。しかし、現代的諸課題をどう実践するかは極めて難しいように考えられていた。横断的・総合的学習と言われても、どうすれば可能か、実践方策がよく見えなかった。

一方、そうした現代的諸課題が導入されると、当然ながら学校の教育課程の「拡大」となって授業時間を圧迫する。それを解決するためには授業内容のかなりの「厳選」が必要であった。そこで、クロスカリキュラムとして実施することでその解決を試みたのである(『実践クロスカリキュラム』髙階玲司編著、図書文化社、1996)。確かに、クロスカリキュラムで教科等横断を実施すれば、かなりの利点がある。例えば、次のようなことである。

①子供に学ばせたい現代的な諸課題は多様にあるが、教科等に分散されると課題としての視点や内容が浅くなる。教科等で学ぶ内容を関連させることで深い学びが可能である。

②子供に主体的な学習をうながす場合、授業時間をより多く必要とするが、教科等の内容関連を図ることで細切れな指導を避けることができ、授業時間をより少なく効率化を図ることができる。

③逆に課題に即して十分な学習時間が確保できれば、教科や領域の目標・内容をそのまま生かしながらより総合的に課題に迫ることができる。

④さらに教科では「認識」を、特別活動などでは「行動」を、というように「認識と行動の統合」が可能になって学んだことを実社会や実生活に生かすことがより可能になる。「現代的な諸課題」の学びは実社会や実生活に生かすことが大切である。

⑤学校や子供、地域の実態や課題を加味することで、幅広い学習活動が可能になり、より豊かで創造的なカリキュラムを開発できる。

その後、総合的な学習の時間が創設されて、このような考えはかなり実現していくが、当時振り返って、極めて難しいと思われたのは、教科等の関連をどう具体的に選び抜くかであった。その意味で『資料』の提示は極めて有効である。

〇教科等横断的な教育内容の実践

今回の『資料』の提示は多様なテーマを示しているが、「教科等横断」カリキュラムをすべて実施すべきとは考えないであろう。テーマをみても、あれもこれもと量的に極めて多い。

冒頭であげたテーマ以外にも「法に関する教育」「知的財産に関する教育」「郷土や地域に関する教育」「海洋に関する教育」「環境に関する教育」「放射線に関する教育」「生命の尊重に関する教育」「心身の健康の保持増進に関する教育」「食に関する教育」「防災を含む安全に関する教育」がある。これらすべてが「現代的な諸課題に関する教科等横断的な内容」とされている。

これまでも、年間指導計画を作成する場合、教科等の類似の学習内容について「つながり」を示す例はよくみられることである。指導内容が重なる例はかなりみられた。今回の場合は、新学習指導要領の「内容」が示されているのであって、そこに新たな教科等横断の考え方がみられるであろう。

「防災を含む安全に関する教育」を例にとる。『総則編』は、その内容を体育科、家庭科、特別活動、道徳、総合的学習、理科、社会科、生活科、図画工作科の内容を示している。通常はそれらの教科・領域でバラバラに指導される。そこで「内容関連」を考えて「防災・安全で地域を守ろう」というテーマで統一する。例えば、小学校5・6年生は、体育科、家庭科、道徳、理科、社会科に内容が示されている。それらの内容を精査し、テーマに基づいてカリキュラムづくりを進める。関連が難しいと判断した場合は一部の教科や内容を外すなどすればよい。すべてを網羅的にクロスするのではない。ただ、きちんと押さえたいのは、教科・領域の目指す学習目標・内容が十分指導されることである。

例えば、このテーマで総合的学習のカリキュラムを構想する場合もみられるであろう。その場合は教科・領域の指導内容をほとんど考慮しないことがあり得る。そこが、教科等横断であるクロスカリキュラムと総合的学習との違いである。教科等横断はあくまでも教科等をつなぎながら、それぞれの教科等の目標・内容を関連的に指導することが大切である。そのことは、同じテーマについて、例えば社会科的なアプローチの仕方、理科的なアプローチの仕方などを学ぶことで、教科等による思考の違いなどを子供が認識でき、幅広く柔軟な考え方を持つことを可能にするのである。

さらにテーマに応じて地域の課題など加味する例が生まれるであろう。先に示した「防災・安全で地域を守ろう」のテーマでは、地域固有の学びがふんだんに盛り込まれる可能性がある。何よりも地域に住む人間の営みと関連させなければ意味がない。そこにより豊かなカリキュラム構成が予測される。自校ならではのカリキュラムとして大いに尊重すべきである。

このように考えると、今回の『資料』の提示は教科等横断の考えを極めて具体的に示してくれたと言える。これまでは年間学習計画の内容を線でつなげるレベルであったことが、具体的なテーマによる内容が示されたことで実践への道筋がかなり明確になったのではないか。今後は新しい教科書内容などとの関連で教科等横断の実践が多様に行われることで、より一層実践が深まることを期待したい。