中国に差をつけられる日本の教育 政府がテクノロジーの重要性を理解

教育新聞特任解説委員 鈴木 崇弘(城西国際大学大学院教授・日本政策学校代表)

中国・深センで8月に行われた、海外インターンシップを提供する「タイガーモブ(タイモブ)」(注1)の企画「深セン未来合宿」に参加した。混迷低迷する日本と比べ、中国で感じたのは先進性と、新しいものを生み続ける驚異的な熱気であった(注2)。本稿では、合宿の一環で訪問した教育関係企業について述べたい。

■スタートアップ企業「DOBOT」

子供の教育用や企業研修用のロボットアーム、3Dプリンター、レーザーカットなどを製造している、深セン発のスタートアップ企業「DOBOT」。同社は、李克強中国首相が2度も訪問するなど、今注目を集めている。

これまで主に教育向けのロボットアームを製造し、学校などに提供してきたが、同社の製品は安価で使いやすく、最近は企業などとも提携している。ユーザー数は全世界10万以上で、その80%は学校関係だ。

同社のさまざまな製品も見せていただいた。テクノロジーの水準は必ずしも「最先端で目を見張る」というわけではなかったが、とても面白く、さまざまな可能性を感じさせてくれた。しかも、価格が低く抑えられている。

一般的に、教育分野の製品で大きなもうけを得ることは難しく、大企業などは避けがちだ。しかも、新しいテクノロジー分野の教育関係企業は少ない(注3)。

別言すれば、STEM教育の国際的高まりはあるが、教育分野でテクノロジーを教えるための製品開発などはいまだ「ブルーオーシャン」(注4)なのだ。例えばロボットアームの分野では日本をはじめ、中国でも高いレベルの企業が多くあるが、教育分野では大企業の参入はない。

スタートアップ企業であるDOBOTは、そのような観点から、自分たちの有するテクノロジーレベルと経験・知見が生きる分野として、教育を選択したと考えることができる。とはいえ、教育の世界で同社製品が受け入れられなかったなら、同社の今日の成長と拡大はあり得ない。

■中国の教育環境

そこで、筆者は同社での質疑応答時、スタッフに次のような質問をした。

「御社の製品のメインユーザーは、学校などの教育関係。日本の場合、教育機関や学校、特に教育委員会や公立学校に、御社の製品のような新しいものを受け入れてもらうのは大変です。また受け入れる予算もない。御社の製品が学校にうまく受け入れられたのはなぜですか」

それに対して、こう回答があった。

「中国政府はテクノロジーの重要性を理解しており、親和性も高い。政府は新しいテクノロジーを教える予算を学校に付けている。そのために、当社の製品が学校などに受け入れてもらいやすい環境がある」
要は同社は、そのような社会・教育環境を踏まえて、教育分野におけるテクノロジー製品の開発を素地に、ビジネスの基礎固めを行ってきたのだ。

また、この事実で有用なのは、政府がテクノロジーに関心を持ち、その重要性を理解して関連予算を付け、子供らに新しいテクノロジーを学ばせる機会を提供していることだ。

これからの社会は、テクノロジーが非常に大きな影響力を持ち、重要な役割を果たすと予想される。

中国と比較すると、日本の教育の現状と今後は非常に厳しい。

(注1)同社は、アジア新興国を中心に25カ国約180件の海外インターンシップ求人情報を紹介。また、その経験者が集結する海外インターンシップコミュニティーを形成し、既存の学校や組織では提供できない機会・環境を提供するユニークな組織。

(注2)この点については、拙記「日本はもはや『先進国』ではない…深センで見た現実」(Yahoo!ニュース2018年8月20日)などを参照のこと。

(注3)日本でも、科学分野やテクノロジーを学ぶ教材などの開発はあるが、DOBOTの規模で国際展開する企業はない。

(注4)「ブルー・オーシャン戦略とは、競争者のいない新しい価値の市場を創造し、ユーザーに高付加価値を低コストで提供することで、利潤の最大化を実現する戦略です。未開拓で無限に広がる可能性を秘めた未知の市場空間を『ブルー・オーシャン』、反対に多数の競争者で激しい『血みどろ』の競争を繰り広げる既存の市場を『レッド・オーシャン』と呼びます」(出典: J-marketing.net