総務省勧告のフォローアップ結果公表 いじめ防止対策推進法を見直す契機に

総務省は10月5日、今年3月に文科、法務両省に出した、いじめ防止対策改善勧告の措置状況に対する第1回フォローアップ結果を公表した。

その内容は、勧告を受けた文科省などの対応をまとめたものにすぎないが、学校関係者にとって、いじめ防止対策推進法の趣旨を見つめ直す契機にすべきだろう。

■総務省の改善勧告

総務省が勧告の中で課題として挙げたのが、いじめ認知件数の都道府県間の格差だ。子ども千人当たりのいじめ認知件数は、全国平均で23.8件だったが、都道府県別に見ると、最多が京都府の96.8件、最少が香川県の5.0件で、両者の間には約19倍もの開きがあった。

さらに文科省の問題行動調査のデータを総務省が分析した結果、「いじめゼロ」と報告した学校が全体の30.6%に上っていることが分かった。これについて総務省は「(いじめの)実態を正確に反映したものとは言い難い」と指摘した。

ここで総務省が注目したのが、学校がいじめの発生を認知する判断基準となる「いじめの定義」の解釈だ。

総務省の調査対象となった公立学校249校のうち59校(23.7%)がいじめ防止対策推進法のいじめの定義をそのまま適用せず、「継続性」「集団性」「悪質性」などの要素を学校独自に加えて限定的に解釈していた。

また、いじめ防止対策推進法は、いじめが子供の生命や財産に関わるような「重大事態」の場合、教委への報告、教委から地方自治体の首長への報告、調査報告書の作成と報告、被害者の子供とその保護者への調査結果の情報提供を義務付けているが、これらの法的義務を履行していないケースがあることが見つかり、総務省は改善を勧告している。

■改善されつつあるのか

勧告を受けて文科省は3月26日に、「いじめの正確な認知の推進」と「重大事態の発生報告など法等に基づく措置の徹底」を求める通知を都道府県教委などに出した。

総務省の第1回フォローアップは、これら通知発出などの文科省対応をまとめているにとどまっている。勧告とそのフォローアップは性格上、あくまでも文科省自体の対応を対象としたものであり、ある意味、仕方のないことともいえる。

だが、文科省が総務省の勧告を受けて、その改善を都道府県教委などに通知したり、生徒指導担当者会議で関係者を指導したりしたからといって、果たしていじめ防止対策の状況が改善されつつあると本当に言い切ることができるだろうか。

実際、いじめの認知を巡る被害者とその保護者とのトラブル、「重大事態」の教委への未報告などの事例は、現在も後を絶たない。

■各学校が見直しを

大切なことは、年度も後半に入った今、各学校がいじめ防止体制を見直すことだ。再度、文科省通知の内容を確実に実行する必要がある。

見直しのポイントの一つ目は、いじめの認知件数が学校間に大きな差がある場合、その原因を分析して、いじめ認知に消極的姿勢や認知漏れがないか十分に確認するよう求めること。

二つ目は、いじめの認知件数が「ゼロ」であった場合、その事実を児童生徒や保護者に向けて公表し、検証を仰ぐことで、いじめの認知漏れがないか確認すること。これは今後、学校現場での確実な実行が求められることになろう。「うちの学校にいじめはない」と胸を張るのはそれからだ。

三つ目は、いじめの正確な認知に関する、教職員間の共通理解を図ること。

四つ目は、いじめの定義について、「継続性」「集団性」などの独自の解釈を加えることで、いじめとして認知しないケースを出さないこと。

教育関係者には、問題発生直後は対応に励むものの、時間がたつに従い関心が極端に薄れるという悪癖がある。それは日々新たな問題が発生することや、教員の長時間勤務の深刻化などが背景にある。

いじめを法律通りに解釈すれば、子供間のささいなトラブルまで全部いじめとなってしまいかねず、報告や調査の多発は教員の働き方改革に逆行するという批判が一部にあることも理解できる。

しかし、学校にとって、子供が安全・安心に過ごせる場所であるということは、何より大切だ。

総務省による勧告のフォローアップは一見地味なニュースだが、学校における、いじめ防止体制を見直す一つの契機と捉えたい。

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