(新しい潮流にチャレンジ)学校は年次的にどう変わりつつあるか 全国学力調査にみる変化の兆候

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

〇平成30年度の顕著な傾向

わが国の学校教育へのOECDの評価は高い。7月に来日したシュライヒャーOECD教育・スキル局長は、新学習指導要領の目指す学校教育の方向性に強い賛同を示している。ただ、「学習指導要領に書かれた内容をどのように学校現場で実践に移すかは難しい」と語っていて注目される。

新学習指導要領は2014(平成26)年の中教審への「諮問」から始まったが、そのとき提示されたアクティブ・ラーニング(AL)は学校現場に大きな影響を与え続けている。そして、学習指導要領の改訂に続いて昨年の1年間の「周知・徹底」を経て、今年度から移行期に入った。

そうした経緯の中で、学校の教育の在り方はどう変わったであろうか。

その意味で毎年実施される全国学力・学習状況調査は年次的な推移を考えるうえで極めて重視される。特に「質問紙調査」には、学校の質向上を考えるうえで参考になる。

そこで特に今年度の調査として顕著な増加傾向を示したものとして学校調査から二つあげたい。一つは、「前年度までに、学級全員で取り組んだり挑戦したりする課題やテーマを与えましたか」で、「よく行った」の回答が小学校は平成20年度以降30~40%程度だったのが、30年度は48.9%に跳ね上がっていることである。中学校も同様で20年度以降30%前後だったのが44.8%になっている。

他の一つは「前年度までに、学校生活の中で、一人一人のよい点や可能性を見付け評価する(褒めるなど)取り組みをどの程度行いましたか」で「よく行った」の回答が小学校は26年以降45%前後だったのが、30年度は64.9%である。中学校も26年度以降40%前後だったのが55.5%である。

これらは、かなり急激な増加傾向といえる。学級全体での課題解決を重視するなど、個々の子供の成長可能性への配慮を伺うことができる。新学習指導要領の理念が浸透し始めたと言えるのではないか。

〇授業改善や教育課程編成にも進化の兆候

教育指導で最も重要なことは何よりも子供が自ら学ぶ姿勢を育てることである。そのことで30年度はかなり明確に向上していると言える。

一方、毎日の授業もまた30年度は29年度と比べてかなり進化していると言えそうである。「前年度までに、習得・活用及び探究の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫しましたか」は、「よく行った」が小は23.0%から27.0%に、中も22.1%から26.6%に増加している。この差異は決して小さくない。「前年までに」とあるように28年度は新指導要領が示され、29年度は「周知・徹底」の年度であった。この両者の差異は1ポイントほどでしかなかった。学校は移行期を迎えて授業改善に力を入れ始めたのであろう。

また、「前年度に、各教科等で身に付けたことを、さまざまな課題の解決に生かすことができるような機会を設けましたか」でも、小は16.3%から22.6%に、中は12.3%から16.2%に増加している。

さらに、「指導計画の作成に当たっては、各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していますか」は「よく行った」が小は20.4%から33.1%に、中は16.4%から28.0%に増加している。

その他、教育課程編成に関連する事項は軒並み30年度の数値が高くなっている。そうした質問事項は新学習指導要領が示す、各教科等の目標・内容の関連明確化、各種データの活用やPDCAサイクル、地域等の外部資源の活用、などである。これらは学力向上等への期待でもあろう。

〇学校は徐々に変わりつつある

現在、学校教育は大きく変化・変質を予想させるものがあるが、しかし、急激には変わり得ないであろう。ただ、徐々に変わりつつある姿が経年調査でみることができる。30年度は29年度と比べると大きな変化はみられないとされるが、この全国調査が始まった頃と対比すると確実に変わりつつあると言える。

調査では「校長のリーダーシップのもと、研修リーダー等を校内に設け、校内研修の実施計画を整備するなど、組織的、継続的な研修を行っていますか」があるが、28年度からの調査で「よくしている」が30年度は小が73.6%、中が62.5%と3年間でわずかに増えている程度である。

だが他の調査、例えば「模擬授業や事例研究など、実践的な研修を行っていますか」は「よくしている」が29年度は小が52.5%だったのが、30年度は63.3%で、特に中は30.9%から46.0%と増加している。

また、「教員が、他校や外部の研修機関などの学校外での研修に積極的に参加できるようにしていますか」は同じく、29年度は小が50.7%で30年度は56.5%、中は34.4%と47.0%である。

さらに「教職員は、校内外の研修や研究会に参加し、その成果を教育活動に積極的に反映させていますか」は同じく、29年度は小が30.5%、30年度は41.1%である。中は19.1%と32.4%であった。

このように経年調査にみると徐々によりよい方向へ進化している傾向が見られる。特に全体としては小学校が高いが、中学校の変化率はむしろ大きいと言えるのである。

なお、注目される小学校調査があって、「個々の教員が、自らの専門性を高めていこうとしている教科・領域等を決めており、校外の教科教育に関する研究会等に定期的・継続的に参加していますか」という質問がある。3年前からの調査で「よくしている」が30年度36.7%で、ほとんど変化がない。

ただ、全教科担任と言われる小学校の教員が教科・領域等を決めて研究会等に参加するのは昔からのことで、この調査で必要なことは小学校教員の専門性をどう考え、どう伸ばすことが重要か、またそのことから多教科負担を軽減し、受け持つ教科等の専門性をどう高めるか、という課題である。小学校教員の専門性について踏み込んだ調査と改善が必要と考える。