(新しい潮流にチャレンジ)校長は学校を変えられるか

eye-catch_1024-768_takashina-challenge教育創造研究センター所長 髙階玲治

組織文化形成に積極的に取り組む

〇新学習指導要領と教師の受容

全国学力・学習状況調査は文字通り全国的なマクロの分析であるが、地域の文脈を探ると違った面が現れることがある。

例えば、学力の三つの柱の一つである「学びに向かう力」や、教科等横断の教育課程編成と実施など、将来的に子供に身に付けたい力の形成は極めて期待されるが、現場への浸透度はどうであろうか。

図に示したように、Aレベルは新学習指導要領の内容である、学力の三つの柱、主体的・対話的で深い学び、カリキュラム・マネジメントなどは、北海道から沖縄県まで、全国一律に提示されているものである。

しかし、Aレベルはどの教師にも同一水準で示されながら、教員個々の受け止めはかなり違う。同じ学校の教員同士であってもかなり異なる。

もともと、過去の実践の経緯の中で教員は新学習指導要領を理解する傾向があって、その歴史過程は背景として厳然と教員に作用しているため、過去の実践のつながりの中で新学習指導要領を受け止めることが多い。

その格差が生まれる要因は、例えばBレベルで示したように、実践経験の差、関心や意欲の差、指導環境の差、実践に生かす力量差、など多様である。もともと、いつの時代も学習指導要領への教員の対応はほぼ同様だったと言える。

ただ、教員の受容がまちまちであっても、新学習指導要領を受けて実践を高めたいとする意識は決して低くないと考える。教員としてのミッション意識は高いと考える。

しかし、Bレベルでの教員の個々の差異は、実のところ「自己流」を生み出す危険を伴いやすい。ミッション意識は高くとも、教員の陥りやすい傾向である。

〇教員としての自信とプライド

教員個々に身に付いている個人差は、自分なりの教職指導を創り出す。Cレベルに示したように、自分なりの理解受容、職務の自分ごと化、自分なりの実践向上、自分なりの習慣化、などである。

全ての教員が陥る自己流の教職意識である。それは決して全て否定されるものではなく、教員個々に身に付いた職人芸のようなものでもある。

ただ、その身に付いた教員スタイルは、新たな教育の在り方を提示されても容易に受容できない頑固さを伴う場合がある。つまりは、一つの学校であっても、多様な教育観を伴う教員群像の集まりだということである。そこで、校長は、このような自校の教員たちをどう見ているであろうか。

実は興味深いデータがある。北海道の南部、日本海に面した檜山地方の7町36校の校長の調査であるが、「教育活動への職員の自信とプライド」について、「おおむね結果が出ている」という高評価が39.4%、「手応えを感じている」が57.6%という高さであった。

わが国の教員は、多様な課題を抱えながらも、教育実践についての自信やプライドは高いと考えられるのではないか。新学習指導要領の移行期にあっても、なおその理解は不十分でありながら、教育者としてのミッションが強く存在する(函館教育経営研究所『教育の眼・経営の眼(平成29年度)』)。

いつの時代でも、教員は教育改革について消極的と考えられてきたが、確かに学習指導要領すら十分に読まないという問題はあっても、わが国の教育の土台を支えている教員群像であることは確かであろう。

〇「共通項探し」による組織文化形成を

わが国の学校は、このような組織風土が一般的と考えられるが、新学習指導要領の浸透度をどう高め、学校の諸課題をどう改善できるであろうか。

学校を動かす場合、基本は校長と教員相互の信頼関係が重要である。しかし、校長が赴任した学校の教員はそれぞれ教職スタイルが多様で、ミッションもそれぞれである。さらに、新学習指導要領の共通認識を持てる時間的余裕はあまりない。継続的に行われている学校のさまざまな職務遂行は個々の教員に任せることが多い。

だが、4月から早速、Dレベルの教育活動の展開が始まる。校長は、学校の置かれている実態から、最善の教育実現を目指すことになる。

校長が目指すべきものは何か。それは、どのような学校であっても、学校を統合するビジョンを確立し、確かな教育実現を目指す組織文化を醸成することである。教育理念の実現志向としてのEレベルの展開である。

その場合、よく学校の「協働」について語られるが、それは校内が一体感を持って職務遂行する姿である。その協働体制をどう構築するかが課題である。

実のところ、先の檜山地方の調査を見ると、校長は「学校の教育目標への協働意識の組織構築」や「校長の経営方針と分掌・学級・教科との合致」を目指すことに積極的であることが分かる教員意識の統合に向けて努力する姿がある。

その努力の姿に組織文化を醸成するヒントが見られるのである。

実は、調査の中で実施率が極めて高いものに「新体力テストの全学年実施」93.9%が見られた。各学校が共通して取り組んでいる活動である。その他、高いものに「いじめ・不登校対策・家庭訪問」や「地域人材等の活用」「4月からの学習スタンダード」が見られる。

ここにヒントがあるというのは、「新体力テスト」のように、教員の誰もが実施の仕方が分かっているという共通認識・実践が見られることである。その他も共通認識の程度は高いであろう。

そう考えれば、共通認識を高めるための「共通項探し」が重要になるということである。「共通項探し」とは、共通実践できる事項を選択して、どの教員も実施可能なように具体化することである。例えば、「家庭学習の習慣化の指導」は各学級・教科担任がそれぞれのやり方で実施していたものを、効果的な方法を話し合って自校としてのスタイルを生み出し実践する、などである。

小さなことでも共通項は案外見つかるであろう。「共通項探し」であるから、校内のコミュニケーションが活発化して、相互啓発もまた生まれる。このように、校内の協働体制を目指す「共通項探し」を行えば、そこに「組織風土」が醸成される。その場合、学校の統合されたビジョンに向かって教職員が一体的に取り組むとき、「協働」とともに一つの目標に向かって教員全員が努力するという「共創」の高まりもまた生まれると考える。

学校が目指す「共通項」を明確にし、「共創」の体制を創ることが校長の役割だと考える。