(注目の教育時事を読む)第54回 連合の教員労働意識調査

eye-catch_1024-768_tyumoku-kyoiku_r20180426藤川大祐千葉大学教育学部教授の視点

働き方改革には財政負担大幅増を 給特法の廃止、教員定数増などで
◇過労死ライン超の仕事をなんとかこなす◆

本紙電子版10月18日付は、「教員に残業代、賛成8割超 変形労働制も非現実的」の見出しで、日本労働組合総連合会(連合)による教員の勤務時間や勤務態度の見直しに対する意識調査の結果を報じている。

多くの教員が過労死ラインを超えて働いているという指摘がある中、残業代を支払わないことを規定した給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)が教員の長時間労働を助長している点が問題となり、給特法の改正も含め教員の働き方改革が注目されている。

今回の調査は、過酷な教員の働き方を改めて裏付けるデータとなっている。勤務日の総労働時間は週平均52.5時間で、これだけでも毎月約60時間の時間外労働がなされている計算となる。時間内に仕事が処理しきれない教員は82.8%に及ぶが、今年度管理職から早く退勤するよう言われた教員は60.1%と多い。言われた教員の68.7%は管理職に対して「まず、仕事の量を減らしてから言ってほしい」と考えていることも理解できる。ひどく疲れたことがあった教員は91.1%に上るが、やりがいを感じている教員も87.8%いる。端的に言えば、「やりがい搾取」と言える事態が生じていることが確認できる。やりがいを覚えつつ、過労死ラインを超える量の仕事をひどく疲れながらもなんとかこなしているのが平均的教員像ということになる。

これらを受け浮上しているのが、変形労働時間制だ。繁忙期の勤務時間を例えば1日9時間に延ばし、その代わりに授業や行事のない夏休み中などに勤務時間を短縮したり、勤務を要しない日を設けたりする。

◆課題の多い変形労働時間制◇

変形労働時間制は、教員の勤務実態に制度を近付けるという点では、意味があるだろう。授業がある日が年間おおむね175日あり、これらの日の勤務時間を1時間ずつ長くする。この分の175時間分に当たる約22日分について、例えば夏に16日、年末年始に6日、勤務を要しない日を設けるということになるだろうか。

仮にこのようにしたとしても、いくつも問題が残る。

第一に、仮に見た目の時間外労働時間が減ったとしても、実労働時間が減るわけではないので、過労死リスクを減らすことにはならない。日頃の勤務時間が延びることにより遅い時間まで会議などが入るようになれば、長時間勤務に拍車がかかり、過労死リスクを高めることになりかねない。

第二に、有給休暇のまとまった取得が困難になる。一定以上勤務した常勤の教員には年間20日間の有給休暇取得が認められているが、授業がある日にまとまった有給休暇を取得することは難しく、まとまった有給休暇を取得しようと思えば夏休みなどの授業がない時期しかなかった。変形労働時間制によりそもそも夏休み中の平日の大半が勤務を要しない日になれば、まとまった有給休暇の取得は難しくなる。働き方改革関連法で企業に労働者の有給休暇取得を義務付けていることを踏まえれば、学校が教員にまとまった有給休暇の取得を認められない状況にするのはまずい。

第三に、夏休み中の勤務時間内に実施されていた教員研修、修学旅行や遠足の下見などを行うことが困難になる。

結局、勤務時間をスライドさせる変形労働時間制を導入しても、それだけでは実勤務時間を減らすことにはならず、これまで教員研修や有給休暇取得に活用されてきた夏休みの活用を難しくすることになりかねないのである。

◇目に見えない労働に頼らずに◆

一人一人へのきめ細かい指導、いじめなどへの生徒指導、特別な配慮を要する児童生徒への対応、新たな教育内容の導入など、教員の負担は給特法ができた頃とは比較にならないほど増えている。現状では増えた負担は教員の目に見えない労働(シャドウワーク)によって支えられている。政府・地方自治体は、本来はこうした負担増に対応して、残業手当を教員に支給するなり教員の人数を増やすなりしなければならなかったのだが、これまではそうした対応がなされてこなかった。

このように考えれば、政府は、教員人件費の大幅増を覚悟するしかないことが分かるだろう。給特法を廃止し、業務効率化を進めつつ、それでも発生する残業には残業手当を支給する。各学級に副担任を置ける程度に教員定数を増やし、各教員の空き時間を多くして休憩を取ったり授業準備ができるようにしたりするとともに、仮に教員が1人休んでも他の教員がバックアップしやすい体制を構築するのである。

教員の働き方改革は、財政負担の大幅増なしには決して実現しない。政府には勇気ある決断を求めたい。