「問題行動・不登校調査」結果を考察する

神田外語大学客員教授 嶋﨑 政男

「認知件数に焦点化」に危惧

「脱不登校」は学校の責務である

2017年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果が公表され、新聞各紙には「いじめ最多41万件」「重大いじめ最多474件」等の大きな活字が躍った。

教育関係者には、結果を真摯(しんし)に受け止め、冷静に分析することが求められるが、その論調には注意を要する点もある。本稿では特に気になった3点を取り上げる。

1.「認知」優先の死角

いじめの認知件数が急増した背景には、いじめを積極的に把握する取り組みが各地で充実したことが挙げられる。「『認知件数が増えれば評価が下がるとの恐れから認知に消極的になる傾向』が薄れた」との見解も示されているが、いじめという重大事案の検討では浅薄な指摘と言えよう。

いずれにしても、教職員一人一人がいじめに対する感性を磨き、全校体制で取り組んだ結果としての認知件数の増加は評価できる。

新聞各紙の論調もおおむね良好であった。しかし、「脱いじめ」への取り組みより、「認知ゼロ報告」批判にシフトした編集方針には疑義を感じる。

また、認知件数のみに注目した論調にも不安を感じざるを得ない、被害者感情に依拠した、一方的・一律的ないじめ判断が、「好意からの行為」までも「いじめ」と認定している実態をどう捉えているのであろうか。

調査では、重大事態474件のうち、55件は生命に重大な被害が生じた疑いのあるケースだったという。当然、心身の安全確保が最優先されなければならない。一方、重大事態認定の意義を覆す事案も見られる。被害の「針小棒大」化である。このため、対応に疲弊する学校・教委の数は少なくない。

2. 不登校への危機意識不足

高校生の不登校千人比は、15.1人で、調査が開始された04年度(18.2人)を最高に例年16人前後で推移している。

しかし、小中学生は増加の一途をたどり、17年度の千人比は小学生5.4人、中学生32.5人となった。長期欠席者内訳の「その他」のうち「不登校の要因を含んでいるもの」を加えると、小学生は千人中6人が、中学生は34人が不登校児童生徒ということになる。

憂慮すべき事態であるが、「学校以外で学ぶ重要性が認められた」「『無理に学校に行く必要はない』という意識が広がりつつある」などと、新聞の論調はいたって冷静である。

不登校児童生徒の千人比の推移を振り返ると、「平準期」(1960年代半ば~74年)、「増加期」(75~95年前後)、「急増期」(96~99年)、「高原期」(2000~15年)を経て、今また「急増期」を迎えているのである。

国の方針にも大きな転換があった。「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(16年12月公布)第13条には、「個々の不登校児童生徒の休養の必要性をふまえ」という文言がある。同年に発出された文科省の通知には、「不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味をもつ」「『学校に登校する』という結果のみを目標としない」などの考え方が示された。

確かに「休養」が必要な事例もある。しかし、誤解を招く恐れのある表現である。「脱不登校」は学校が真剣に立ち向かうべき責務であることを忘れてはならない。

3. 小学校低学年問題

中学校・高等学校の暴力行為発生件数が横ばい・減少傾向にあるのに対し、小学校では、ここ数年の急増傾向が止まらない。

小学校の加害者数は前年比18.7%増で、特に1年生は37.0%増と憂慮すべき事態となっている。注視すべきは対教師暴力で、17年度はついに、小学校が4662件で、中学校の3455件を凌駕してしまったのである。

小学校が本調査の対象となった1997年度の暴力行為は1432件であった。新聞紙上には「キレる小学生」「おびえる先生」等、危機を伝える活字があふれ、早期解決を望む世論が形成された。

ところが今回の発生件数は、当時の約3倍となり、小学校の暴力行為が深刻化していることを浮き彫りにした。にもかかわらず、これに言及するマスコミは少なかった。確かな検証と早急な対策が喫緊の課題である。