対症療法な働き方改革ではダメ 大きなものにメスを

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教育新聞特任解説委員 妹尾 昌俊(教育研究家、中教審委員)

時間外勤務に上限を定める動き

学校の働き方改革を巡って、いま国の検討(中央教育審議会)は大詰めを迎えつつある。

柱のひとつは、教師の時間外勤務に一定の上限を定めることだ。働き方改革関連法の成立を受けて、民間企業などで時間外の上限となる「月45時間以内、年間360時間以内」という原則を教師にも適用することを検討している(まだ確定ではない)。

10月31日には総務省が、「地方公務員における長時間労働の是正について」という事務連絡を都道府県などに向け発出した。そこでは国家公務員に超過勤務の上限を設ける動きがあることに触れ、地方公務員についても条例改正などを行い、上限を定めるように求めている。

公立学校の教師ももちろん地方公務員であるが、給特法の関係もあって、今後どのような扱いになるのか、国(文科省+総務省)も教育委員会などもよく考えていかなくてはならない。

対症療法では達成できない

他方で、最近、こんなニュースが次々と報じられている。

▽学校の働き方改革の一環として、年間の変形労働制の導入を検討▽新学習指導要領で、総合的な学習の時間の一部を民間のNPOなどが担えるように(教師の引率などは必要なし)▽退職後の教員や企業経験者などが教員免許を失効していても「臨時免許」で対応可能に。教師不足を受けて。

これらについて、私は「悪い」と言うつもりはない。しかし、例えるなら、大けがをしている子供にばんそうこうで手当てをしているようなものだ。ちょっとやそっとの小手先、対症療法と言うと、言い過ぎかもしれないが、これらの策で学校の長時間労働を解消できるほど現実は甘くはない。

しかも、総合の一部をNPOなどが担えても、調整や企画、評価に手間はかかるので、学校の負担軽減策としては不十分であろう。かつ、これらの施策を進めると、管理が煩雑になるから、現状でも過労死ライン超えが大多数である副校長・教頭は一層事務的な仕事に追われることになりかねない。

また、学校現場での働き方改革や業務改善というとどうだろうか。私が全国各地の教育委員会や校長からよく聞くのは「会議の見直し(縮減や進め方の改善)」「部活動の休養日設定」などである。こうしたことは大事だし、できることから進める姿勢は歓迎する。

だが、現状の取り組みだけでは、冒頭述べた時間外を月45時間までといった目標はおそらく達成できない。ちょっと計算すれば分かるが、すでに始業前に1時間近く時間外が発生している人は多い。授業準備や部活動指導などをしていると、夕方に1時間は時間外がかかる人も多いことだろう。これですでに月40時間超えなのだ。

大きなものにメスを入れるべき

では、対症療法ではない働き方改革とは何か、何が必要だろうか。ひとつは学校現場で時間を要している大きなものにメスを入れていくことだ。そうしなければ、これほど過労死ライン超えの多い現場で、大きな時間を生むことはできない。具体的には、少なくとも次のことを国、教育委員会、学校はもっと本気になって進めるべきだと考える。

①活動にかける時間の削減(部活動数の精選、大会などの縮小とオフシーズンの設定)

②小学校教師の持ち授業コマ数の削減(定数の改善、一部教科担任制の導入)

③行事の見直しや採点などの業務改善

④子供の登下校時間の見直し

⑤授業以外の教育的な活動(給食、清掃、休み時間など)でのスタッフの配置

「『減らせ、減らせ』ばかりでは学校に元気、活力がなくなる」「教育の質が低下するのではないか」という声もあろう。当の教師からも、また保護者や社会からも。

しかし、よく考えてみてほしい。「本当に今の健康を害しかねない水準の働きぶりの学校で、いい教育ができるだろうか、続くだろうか」と。

授業準備以外の部分で減らせるところは減らして、教師がクリエーティブにものを考えられる時間を生み出していくことこそ、教育の質の向上につながるのではないか。対症療法ではない、学校の働き方改革では、この点でのまなざしと行動力が必要である。

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