(新しい潮流にチャレンジ)カリキュラム・マネジメントの課題

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教育創造研究センター所長 髙階 玲治

学校教育の充実を目指す基盤

学校の教育課程編成への期待

新学習指導要領はカリキュラム・マネジメント(CM)を強調している。改めて言うまでもないが、従来CMは実施され、学校にかなり定着している。それは学校の教育課程編成であり、単元の学習展開に基づく日常の授業である。学校の教育課程編成と単元に基づく日常の授業展開は、学校教育の充実を目指す基本であり、基盤を成すものである。今回、CMが強調されるのは、その基盤をより一層強固にするためのものである。

新学習指導要領で強調されている学校の教育課程編成は、おおよそ次の3点である。

ア. 各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育課程を踏まえた教科横断的な視点で、教育内容を組織的に配列すること。

イ. 子供の実態、地域の現状を踏まえ、調査データ等に基づき教育課程を編成し、実施・評価・改善を図ること。

ウ. 教育内容と教育活動の必要な地域の教育資源等を効果的に組み合わせること。

これらの文言には、従来なかった「教科横断的な視点」や「データ等に基づき」「資源等を」「効果的に組み合わせ」などがみられる。それぞれが新たな教育課程編成として重要な視点であるが、特に「教科等横断」の視点はどのように展開するか注目される。

各学校はどう受け止めているであろうか。

今年度の全国学力・学習状況調査における学校調査によれば、次の結果がみられる。「指導計画の作成に当たっては、各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していますか」に対し、「よくしている」割合は、小学校が昨年度の20.4%から33.1%に、中学校は16.4%から28.0%に増加している。

現時点で考えると、かなり積極的な対応のようにみえる。「各教科等の教育内容を相互の関係で捉え」ることは、これまで年間指導計画の一覧から相互関連する単元を線でつなぐなどで終える例が多かったからである。

しかし、教科書が変わる2020年以降は様変わりするほど積極的に行うようになるのではないか。その背景には文科省の「総則編」の解説書に示された資料「現代的な諸課題に関する教科等横断的な教育内容」が活用できるからである。学校の教育課程編成への期待は大きいのである。

単元を見通すマネジメント力

学校の年間指導計画は全ての教員が参画して行われるが、実際の単元の学習過程は個々の教員に任される。単元展開におけるCMこそは極めて重要な教員個々の役割である。従ってCMをいかに適切に実施するかが問われるのである。

新学習指導要領は、アクティブ・ラーニング(AL)が提唱され、「主体的・対話的で深い学び」が授業の基本とされているが、「主体的な学びとは何か」「対話的な学びとは何か」「深い学びとは何か」が十分に認識され、実践に生かされていない状況がみられる。

例えば、最近発刊された教育調査研究所の研究紀要第97号には、東京都の小学校7校の教員の考える授業展開での課題が載っており、生の声を読み取ることができる。そこには「主体的・対話的で深い学び」のそれぞれに示された視点に基づいて教員の声を整理している。例えば「主体的な学び視点」は「学ぶことに興味や関心をもつ」ことが重視されるが、教員たちは、課題に興味・関心を持てない子、問いの持たせ方の難しさ、持続的に学習できない子への対応など課題を多く抱えている。そのため、子供の動きに適切に対応するために、迷い、こだわり、よりよい手だてを得たい、と望んでいる。しかし、よりよい手だては容易に見つからないのではないか。

「主体的な学び」として示される、例えば学習指導要領の視点のみをただ提示するだけでは十分ではなく、教員の生の声に対峙(たいじ)しながら、解決策を生み出す努力が求められる。今回の調査はそのことを示唆していると考える(教育調査研究所『小学校における「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニングの視点)の実現に向けた授業改善」について』2018・9)。

そこで次に考えたいことは、「主体的・対話的で深い学び」の授業展開は、単元の学習展開に応じてマネジメントすべきだ、ということである。

そこで重要になるのが、ALと「主体的・対話的で深い学び」と学力の三つの柱との構造を捉えたイメージ図である(図)。このイメージを、単元の展開においてぶれないようにする。当然ながら、1単位時間で全てを実現することはできない。だが、数時間のまとまりである単元であれば、重点化することが可能である。限られた時間という制約の中で、時に大胆に、ダイナミックに、単元全体をマネジメントする。それが必要ではないか。

教科等に即した指導計画の視点

ところで、各教科等はそれぞれ「指導計画の作成と内容の取り扱い」において「指導計画上の配慮事項」を示している。各教科等によって特質があって十分留意すべきである。

例えば、国語は「言葉」を重視する。国語の授業で気になるのは、「その次どうした」というような主人公の行動や心情を追いかける学習展開である。しかし、指導要領に示されているように、「対象と言葉、言葉と言葉との関係を、言葉の意味、働き、使い方等に着目して捉えたり問い直したり」することが大切なのである。また、社会科で言われているのは、例えば主体的な学びの充実は、子供が社会的事象から課題を見いだし、予想したり、学習計画を立てたりする。また、対話的な学習では、個々が多様な視点を身に付け、社会的事象や意味などを多角的に考えることができるようになることである。

このように、CMの展開では「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」について単元全体を通してどう位置付け、展開するかを考えながら、教科それぞれでは、その教科固有の学びについて十分考慮する必要がある。さらに教科等横断のCMがある。「現代的な諸課題に関する教科等横断的な教育内容」をクロス・カリキュラムとして展開するのであるが、何よりも重要なのは「環境に関する課題」のようにテーマを明確にすることであり、クロスする各教科等の内容を明確化することである。

その意味で、CMは学校の教育課程編成、年間指導計画作成という、学校の教育基盤を構築するものであり、またそれに基づく教師の「CM力」は日常の授業展開に直結するものであって、子供の学習や成長を豊かにする作用を成す重要な働きをする。一層の「CM力」を期待したい。