(注目の教育時事を読む)第55回 学校における働き方改革答申骨子案

eye-catch_1024-768_tyumoku-kyoiku_r20180426

藤川大祐千葉大学教育学部教授の視点

人件費増を前提に改革の検討を 前提にこだわらない議論が必要

◇求められる業務量が教員数に比して多すぎる◆

前回に引き続き、教員の勤務の問題を取り上げる。

本紙電子版11月14日付は、「詳報 学校の働き方改革答申骨子案」として、中教審「学校における働き方改革特別部会」で示された「学校の働き方改革」に関する答申骨子案について報じている。

骨子案に盛り込まれている主な項目として記事で取り上げられているのは、「勤務時間管理の徹底」と「業務の明確化・適正化」である。この内容を読めば、これまでの学校は勤務時間管理が徹底されておらず、業務が明確化・適正化されていないことが前提となっている印象を受ける。確かに、現状では教員の勤務時間は管理されているとは言い難く、業務削減も進んでいないと言えるであろう。

だが、学校現場や各地域では教員の多忙が問題になって久しく、行事の精選や事務手続きの簡素化など、すでにさまざまな取り組みが進められている。それでも教員の働き過ぎが問題になるのは、そもそも教員に求められている業務の量が、教員の数に比して多すぎることを意味しているとしか考えられない。

具体的に考えよう。欧米諸国では1学級当たりの児童生徒数が20~25人程度であることが多いのに対し、日本では30人以上である場合が多く、一人一人の児童生徒に対応した授業準備、採点、担任業務などは単純に欧米諸国の数割増しである。多くの教員は空き時間が非常に少なく、法で定められた休憩時間は実質的にゼロである。

中学校や高校では生徒が、部活動も含め、朝8時から午後6時くらいまで10時間程度学校にいることが珍しくなく、生徒より早く来て、生徒が帰ってから授業準備を行う教師の勤務時間が長くなるのは当然である。

何か問題が生じれば、保護者が仕事を終えた夕方以降に対応することが多い。組織的に取り組むべき課題が多い以上、会議を減らすにも限度がある。

◆新たな課題がさらに負荷を増やす◇

さらに、文科省は次々と学校にかける負荷を増やしている。小学校新学習指導要領で外国語が教科化されたことに伴って週当たりの時間数が増えたことをはじめ、道徳の教科化、小学校でのプログラミング教育導入など、教員は新たな課題への対応を求められる。

経験の少ない教員の処遇の問題もある。初任者は4月1日に採用されると数日後には一人前の教員として教壇に立たねばならず、常勤講師は初任者研修もないまま、児童生徒や保護者からは正規雇用の教員と同様に見られる。初任者や常勤講師は、十分な準備ができないまま、最初から一人前の教員として働くことを期待されるのである。

比喩的に述べれば、次のようになる。

Aという店は個々の店員が他の店よりかなり多い顧客を任されており、店員の勤務時間より顧客が店にいて対応しなければならない時間が多い。しかも、顧客対応のためには、顧客がいない時間帯にも一人一人にきめ細かく対応した準備や事後対応が求められる。顧客から相談があれば時間外でも対応しなければならないし、場合によっては顧客の家族からの深刻な相談にも時間関係なく対応することになる。店として一定の方針で顧客に対応するため、店全体での会議や一部の店員の打ち合わせも多い。

この店で働くためには、働きながらでなければ身に付けられない多様なノウハウがあるが、新規採用の店員や期間限定で採用された店員に対してまず研修を行うことはなく、こうした店員は数日の打ち合わせの後、いきなり自分の顧客への対応を本格的に行わなければならない。

この店の店員たちの給与は、系列の他の事業所で働く者たちより少し高く設定されているが、その代わりに残業手当はつかない契約になっている。このところ、多くの店員の勤務時間が過労死ラインを超えているという指摘があり、経営側は「勤務時間管理の徹底」と「業務の明確化・適正化」を行うこととした。しかし、店員一人当たりの顧客数を減らすことも、二交代制を導入することも、新人店員らに研修期間を設けることもしないという……。

◇給特法の廃止、残業手当の支給などの検討を◆

当然だが、こんな無理な話が通るはずはない。店であろうが学校であろうが、話は同じである。

中教審は、教員の人件費を増やさない前提で議論したのかもしれないが、そうした前提にこだわらずに、今からでも必要な議論を行ってほしい。具体的には、次のことが検討されるべきであろう。

▽給特法の廃止と残業手当の確実な支給

▽全学級への副担任の配置

▽各教員の担当授業時間の上限を全授業時間の半数以下に

▽早朝と放課後に対応する教員のシフト制

▽部活動を学校主催から地域主催へ移行

▽新規採用教員および専任経験のない常勤講師の学級担任禁止、研修の保証