STEM教育に関わる問題と課題 進展するテクノロジーの影響

教育新聞特任解説委員 鈴木 崇弘(城西国際大学大学院教授・日本政策学校代表)

科学(Science)、テクノロジー(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)を意味する「STEM(ステム)」(さらに芸術=Artを加えると「STEAM(スチーム)」)教育の重要性が認知され、国内外で関心が高まってきている。コンピューターなどを活用して自ら学び取る教育のことである。

米国のオバマ大統領(当時)が、OECDが実施したPISA(生徒の学習到達度調査)で自国の子供の低い成績に驚き、理数系や芸術領域に注力したことに端を発するといわれる。

将来的に活躍できる人材を育成し、国家も国際的な競争力を維持できるという観点から、演説の中でも、優先課題として取り上げた。同大統領は「ビデオゲームを買うだけでなく、アプリで遊ぶだけでなく、それを作り出せるようになろう」とも述べている。

またビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグら著名人も、その流れに関連する動きに賛同し、世界中に広まってきている。

注目される背景には、これまでの記事でも述べてきたが、テクノロジーの進化と、現在そして今後さらに起こるであろう社会変化がある。

■日本の課題

世界の大きな変化の流れを受けて、新学習指導要領では小学校でのプログラミング教育が必修化にされることになった。また、2012年から中学の技術家庭科では「プログラミングによる計測・制御」が必修となっている。

総務省発表のプログラミング人材育成の在り方に関する調査研究(15年)によれば、都内を中心に、企業や組織、教育機関などによる子供向けプログラミング教室やコンピューターサイエンス教室は、13年以降、増加傾向にあり、国内でもSTEM(STEAM)教育の環境は整いつつあると考えられる。

しかし先日のことだ。中国・深センのスタートアップで、教育用ロボットキットやSTEM教育のパイオニアとして著名なMakeblock Japanの市場マネジャー・徐心研さんにお会いし、意見交換した。

徐さんは、日本でのSTEM教育普及に奔走しているが、「現時点では残念ながら、日本にはSTEM教育を理解して、ロボット教材などを使ってプログラミング教育を行える人材が足りていない」と指摘する。

小学校のプログラミング教育では、科目を担える人材の不足により、学校間でレベル格差が生じる可能性がある。

■日本の今後の課題

先述した中学技術家庭科での科目も広い意味でのプログラム教育だと勘案するとその世代は、現在の18~21歳、つまり大学生の年代に相当する。

それ以外のおよそ22~54歳(定年あるいは生産年齢を65歳として、それから10歳程度若い55歳以上は何とか現状で逃げ切れると換算)の年齢層は、大学などで理系教育を受けたか、プログラミングに関する業務経験者である以外は、プログラミングをはじめとするテクノロジー教育を受けておらず、経験も有していない。しかし今後仕事をしていく上で、進展するテクノロジーの大きな影響からは逃れられないだろう。

20代と30代前半は、世代的にもITリテラシーが高く、若いので自己学習可能と考えるとしよう。

35~54歳までの年齢に相当する人口3481万人の半数は、理系関係の教育や経験がないとラフに計算すると、約1700万人は社会変化についていくのが困難になる可能性がある。

しかし彼らがリタイアするまでの30年間、彼らも管理職になり、組織の中心的存在になる(注)。その意味において、その年齢層に対するSTEM(STEAM)教育をどのようにしていくかは、企業だけでなく、教育機関でも大きな課題になりうる。

そして彼らに、その分野の教育が有効かつ効率的に提供されないと、日本の社会はさらに厳しいものになると予想される。

(注)これからの社会は、組織の中心的存在が、年齢の高い層ではない可能性もあるが。