スケール感乏しく「失望」の声も 中教審の働き方改革答申素案

中教審の働き方改革特別部会は12月6日、学校における働き方改革の答申素案を公表した。公立学校教員に1年単位の変形労働時間制を導入することが主なポイントだが、長時間勤務解消の決め手になるかは疑問だ。素案に対して、失望したという学校現場の声も少なくない。素案に「失望した」と言うのは簡単だ。重要なのは、ではどうするかだろう。

日本型学校教育の維持を打ち出す

教員が授業以外の場面でも子供に深く関わる「日本型学校教育」は、小学校教員の約3割、中学校教員の約6割が「過労死ライン」を超える長時間勤務をしていることで成り立っている。学校における働き方改革を実現するには、この日本型学校教育を欧米型に転換するか、教職員定数を抜本的に改善するかのどちらかしかないはずだ。

しかし素案は、教職員定数の抜本的改善をしないまま、「持続可能な学校指導・運営体制の構築」として、日本型学校教育の維持を打ち出した。

一方、教職調整額4%の代わりに超勤手当を支給しないことを規定した給特法の見直しへの期待も高かったが、素案は給特法の見直しを明確に否定している。これについて教育関係者の「失望」は大きい。しかし超勤手当の支給は、教員の処遇改善には有効だが、果たして長時間勤務の解消につながるのか疑問もある。

結局のところ、素案の働き方改革方策は、1年単位の変形労働時間制の導入など、どれも大規模な財政出動などを伴わない常識的なラインに落ち着いたと言わざるを得ない。恐らく、教育関係者の「失望」は大きいだろう。

施策には実現に向けた細かな配慮が

とはいえ、素案が打ち出した具体的対策を見ると、いずれもやってみる価値はある。まず教員勤務時間の「上限ガイドライン」の策定だ。この中で、超勤4項目以外の「自発的勤務」も勤務時間であると明確化するほか、終業時間と翌日の始業時間との間に一定の時間を確保する「インターバル制」を留意事項に挙げているのも注目される。勤務時間の上限規制に法的拘束力がないことに対する批判はあるものの、公務員法制全般に関わる問題だけに、現状では仕方がないところだろう。

給食費などの徴収事務を自治体が受け持つようにするための「公会計化ガイドライン」を策定し学校徴収金の公会計化の推進を提言していることも見逃せない。休養日の設定など「部活動ガイドライン」の順守と共に、スポーツ大会などが特定時期に集中しないよう中体連、高体連などに働き掛けるよう求めたことも同様だ。

勤務時間終了後の学校の「留守番電話導入」や学校閉庁日の設定などは一部から苦情も出そうだが、答申素案は文科省などが「学校と社会のバッファ(緩衝)」となることを要請している。

また肝心の変形労働時間制の導入については、超過勤務の解消につながらないという批判も多い。事実、答申素案もそのことを指摘している。これは裏を返せば、中教審や文科省自身が実効性に疑問を持っているということだろう。このため、素案は夏休み中などの教員研修や行事などの縮小を求めている。

打ち出された施策は、いずれもスケール感に乏しいが、その代わりに実現に向けた細かな配慮がなされているのが素案のポイントといえそうだ。

学校組織の見直しを具体的に

この他、素案には、新学習指導要領との関連事項もさりげなく盛り込まれている。

一つ目は、「総合的な学習の時間」の授業の4分の1を地域や社会教育施設などでの学校外学習として行うことができるようにすること。

二つ目は、教員の担う業務となっている指導要録の文章記述の簡略化と、一定条件を満たせば通知表で指導要録を代替できるようにすることだ。

いずれも賛否両論が教育関係者の間で巻き起こりそうだが、教員の勤務時間軽減には役立つだろう。

また素案は、学校組織の見直しとして、教務部と研究部の統合、学校保健委員会と学校安全委員会の統合なども提言している。

働き方改革の理念の共有を

素案は今後の課題として、教員の時間外労働の上限規制の法制化、現行4%の教職調整額の見直し、教職員定数算定の仕組みの見直しなどを挙げている。これらの残された課題が、今後の文科省の大きな宿題となる。

一般的に教育関係者には、理想実現のため「根本的改革」を重視し、「現実的対応」を低く見る意識がある。そのため、答申素案に対する評価も厳しいはずだ。

しかし、社会や保護者の要請の中で肥大化し続けた教員の長時間勤務の問題は、中教審の答申一つで解決できるほど簡単ではない。

中教審答申の内容に「失望」する一方で、答申が打ち出した働き方改革の対策を一歩一歩着実に具体化していくことが、教育関係者や学校現場に求められているのではないだろうか。同時に文科省には、残された課題である教職員定数算定の仕組みの見直しなど抜本的な改革に取り組んでいくことが強く求められる。

素案は、「教師が日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで、自らの人間性や創造性を高め、子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようになる」という、働き方改革の理念を関係者全員が共有しなければならないとしている。