(教育時事論評)研究室の窓から 第43回 ダイナミックな校内研修に 中国における授業研究

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国立教育政策研究所研究企画開発部総括研究官 千々布 敏弥

11月末に北京師範大学において開催された世界授業研究学会に参加してきた。この学会は2006年に設立され、今では毎年千人近い参加者を集めるようになっている。

授業研究が国際的に広まるようになった契機は、1980年代以降、研修の手法が教師個人に向けたものから学校組織に向けたものにシフトしたことと、90年代末にアメリカで出版された「ティーチング・ギャップ」が日本の授業と授業研究を称賛したことが影響している。

前者の流れからは授業研究だけでなく、アクション・リサーチ、ラーニング・スタディーなどの手法も広まっている。前者は英、米、豪、後者はスウェーデンが主な実践国だ。手法的には授業研究と極めて似ている。アクション・リサーチは研究授業の成果を測定するためのデータ収集、ラーニング・スタディーは授業における子供の学びを評価する枠組み(バリエーション理論)の設定が特徴的であるものの、公開された授業を同僚が参観してフィードバックを返す手法は共通している。

中国では日本の授業研究が伝わる以前から授業の相互参観は行われていた。それが辛らつな批評になる傾向があったところ、日本の授業研究はそのような困難に陥りにくいとの認識から、日本方式の授業研究が広まりつつある。私が学会の合間に訪問した小学校は、日本式授業研究をさらに強化したような校内研修体制を構築していた。

中国の小学校は日本よりもクラス数が多い。1学年5~6クラス、教員数は50人以上になる。海外で教員数が多い学校が授業研究に取り組むときは校内の希望する教員数人でチームを組んで相互参観する場合が多い。中国も同様にチームを組んでいるのではと思ったのだが、訪問してみると広いフロアで全員がグループに分かれて協議していた。

その学校は佐藤学氏の指導を受けている。中国における佐藤理論の普及状況は氏の一連の著作に詳しいのだが、実際にその様子を観察したのは初めてだった。授業研究の手法は学びの共同体を含めて多様に存在している。手法ごとに強みがあるのだが、私がこれまで参観した授業研究事例の中で、子供の結び付きの観点でいえば、学びの共同体の学校は最高レベルである。国内で感じていた子供同士のつながりの深さを、今回訪問した中国の学校でも観察することができた。

研究授業は、長方形の右側を二等辺三角形でくりぬいた変形五角形の面積を求めるもの。長方形の面積から二等辺三角形の面積を引く方法、くりぬいた部分の左側の小さい長方形の面積と右側のくりぬかれた小さい三角形二つを足す方法、二等辺三角形の頂点を通る平行線で二つの台形に分けて計算する方法などが考えられる。子供たちは一人学びからグループ協議、全体討論へと展開していった。

すばらしい授業だが、それを100人近い教師全員が参観できるわけではない。その学校は、授業をビデオ撮りし、さらに授業記録を作成し、授業記録を元に全体討論する体制を構築している。授業記録分析の手法は名古屋大学のサルカール・アラニ准教授が指導している。私が参観した学校は、その日授業公開をすると同時に、前回の研究会時に公開された授業の逐語記録に関する全体協議を行っていた。学びの共同体方式と授業分析方式を組み合わせた授業研究を実践していた。

日本の授業研究はこのように普及し、変容している。そのような体制が構築されるのに、校長のリーダーシップが機能しているのは言うまでもない。参観した学校の校長とミドルリーダーの連携の良さ、教師たちの表情、姿勢が前向きなのが気に入った。このようなダイナミックな校内研修構築は、日本でも参考にできるのではないか。

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