AIの活用 コミュ力はより重要に

深掘り・小宮山

教育新聞特任解説委員 小宮山 利恵子 (リクルート次世代教育研究院院長)

今月10日、本紙電子版に次のような記事が掲載されていた。「順天堂大が不正入試認める 女子差別で48人追加合格」。その中でコミュニケーション能力の高い女子を不利に扱ったという記述があり、大変驚いた。なぜなら、コミュニケーション能力は社会人にとって必須のもので、調査によっては筆頭に挙げられる能力だからだ。

経団連の「2017年度新卒採用に関するアンケート調査」の結果では、82.0%の企業がコミュニケーション能力を選考理由に挙げ、その傾向はこの10年変化がない。また、リクルートマネージメントソリューションズが昨年公表した「人材開発実態調査2017」では、「スキル研修の実施率は問題解決、課題解決、ロジカル・シンキングに加え、コミュニケーション、アサーション、コーチング・メンタリングスキル、語学研修などコミュニケーションに関する研修で高い」と示された。

企業は従業員にコミュニケーション力を付けてほしいと願い、投資も行っている。あらゆる職の中でも医師は、患者や親族との関係をより密にする必要がある一方、AIで職がなくなるという議論もある。今回は、AI活用とそれに伴うコミュニケーション力について考えたい。

■医療分野でのAIの活用

AIの活用は自動運転の領域だけではなく、医療の領域においてもかなり進んでいる。医師よりもAIの方がより適切に早く診断を出すという結果も出はじめている。

例えば、今年北京で「脳腫瘍と脳内の血腫拡大を患者の画像から予測する」というコンテストが行われたが、その結果、北京天壇病院の神経障害AI研究センターと中国首都医科大学の研究チームが合同で開発した「BioMind」と呼ばれるAIの画像診断システムがベテラン医師たちに勝利した。

脳腫瘍の画像診断において、225例の画像から15人のベテラン医師は66%の精度で脳腫瘍を診断したが、BioMindは15分で彼らを上回る87%の精度で脳腫瘍を診断した。また、脳内の血腫拡大の予測についても、中国の有名病院から集められたベテラン医師らの63%という診断精度を上回る、83%の精度をBioMindは獲得した。

このような動きの他にも、中国のテック企業「テンセント」は北京大学病院と連携して、心電図の分析にAI分析を取り入れることを試みているという。そのメリットとしては、▽医師の負担の軽減▽患者の負担を軽減▽誤診のリスクの減少▽今後の予測が可能――とのこと。英のDeepMind社が失明の可能性がある約50件の疾患を検出し、その精度は医師に匹敵する94%に達したと学術誌「Nature Medicine」に掲載された。

このような結果を見ると、今後医師は必要なくなるのではないかと議論されるがそうではない。医師の役割が変化するのだ。AIが適切に分析できたとしても、「ではなぜそのような結果になるのか」という説明を医師ができないと、AI活用は普及しないだろう。医師も患者もAIが出した結果をただ知りたいのではなく、どうしてそのような結果になったのかを知りたいからだ。

そこでコミュニケーション力がさらに重要になってくる。

■海外におけるコミュ力の位置付け

海外の教育現場を見てみると、例えばPISA調査を行っているOECDでは、1997年からPISA調査の概念枠組みにもなっている「コンピテンシーの定義と選択」というプログラムが開始され、その中では「キー・コンピテンシー(主要能力)」の特定と分析に伴う共通のコンセプトを各国が持つ必要があることが強調されている。

文科省のサイトではその主要能力の定義を、▽人生の成功や社会の発展にとって有益▽さまざまな文脈の中でも重要な要求(課題)に対応するために必要▽特定の専門家ではなく全ての個人にとって重要――といった性質を持つとして選択されたものとされている。

主要能力は次の三つにカテゴリー分けされる。社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力(個人と社会との相互関係)、多様な社会グループにおける人間関係形成能力(自己と他者との相互関係)、自律的に行動する能力(個人の自律性と主体性)。

コミュニケーション能力はこのどのカテゴリーにも共通して必要なものと考えられ、非常に重要となっている。どこで働くか、どの職に就くかにかかわらず、コミュニケーション力が必要になってくるのは一目瞭然だ。