(新しい潮流にチャレンジ) 小学校英語教育の充実に向けて

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教育創造研究センター所長 髙階 玲治

教委の支援が導く授業の構築

英語指導への教員の不安への対応

2020年から完全実施される小学校の英語科と外国語活動は移行期間1年目を過ぎようとしているが状況はどうであろうか。

11年度に外国語活動が小学校高学年に導入されたが、教科になると多様な問題が生じる。15年2月に文科省が中1生徒に小学校の外国語活動で「もっと学習したかったこと」を調査しているが、それによると「英単語を書く」「英語の文を書く」「英単語を読む」「英語の文を読む」が80%前後であった。英語をきちんと学びたいという子供の期待であって、英語科への要望でもある。

英語科になれば、音楽やゲームを通じて英語の音声や表現になれ親しむことなどから、本格的な英語の学習へ転換する。ただそれは指導する学級担任にとって新たな課題になる。指導への不安がかなり増えるであろう。

学級担任の英語指導には、①英語の授業を、やりたくないのではなく、やり方が分からない②そのため指導案の作り方で苦労する③英語指導の研修をしたいが多忙化で時間を生み出せない④ICTの活用がよくできない⑤ALTや外部指導員などとのコミュニケーションがうまくできない⑥教科としての評価が難しい――などの課題が多い。

このような状況下で学級担任に指導を任せることは極めて難しい。そこで教委が積極的に支援すべきであるとする声は、小学校に外国語活動が導入される当時から強かった。英語科になれば、小・中・高校との連続性を保持するうえでも教委の役割は重要である。

その意味でベネッセ教育総合研究所の『VIEW21』(2018Vol.2教委版)の特集「教委が導く! 連続性ある英語教育」は興味がある。学校の英語教育に積極的で具体的な支援が県教委等で実施されているからである。

その支援には、小学校英語について全授業の指導案を作成し、現場の不安や負担の払底を目指している福井県教委のリポートがみられる。他教科などでは行わない教委の徹底した支援を必要とするほどに英語教育の課題は大きいと言えるであろう。

教委の支援が導く英語教育

ところでベネッセの『VIEW21』は、教委版を発行するようになった15年から英語教育の特集に力を入れてきた。最初の号は「小中高連携で変わる英語教育」であり、次いで16年には臨時増刊号として「英語教育改革」を特集している。

ただ、当時はわずか2~3年前ではあるが、新学習指導要領の改訂時期でもあって啓発的な内容が主であった。しかし、15年1月にベネッセが調査したデータをみると、教委の教育政策として最も高い実施率が「小学校での外国語教育のための特別な取り組み(外国人講師の雇用、独自カリキュラムの作成、教員研修)」72.0%であった。次が「スポーツ活動充実のための特別な取り組み」70.8%となっていて、以下60%以下である。

小学校の英語教育実施への教委の関心と課題意識は極めて高かったと言える。しかも、例えば「情報教育推進のための特別な取り組み」は37.9%でしかないだけでなく、30万人以上の都市では68.8%なのに対して、20万人未満では31.8%と格差が大きい。しかし、小学校の外国語教育は、いずれも70%以上でほとんど差がみられない。

つまり、小学校英語の導入は、どの教委にとっても積極的な支援を必要とする課題と考えられていたといえる。

『VIEW21』(2017年Vol.2)の特集は「小学校英語の教科化に備える」であるが、その内容は「英語教育をコーディネートする人材の配置で担任が1人立ちできるよう支援を」(島根県雲南市)、「小学校外国語教育を担う担任の指導力向上のため、校内研修の徹底を」(文科省教科調査官)、「誰もが同じレベルで授業ができるよう国の事業を活用してカリキュラムを開発」(群馬県)、「独自カリキュラムと多様な研修で、教員の意識改革など準備を進める」(東京都町田市)などである。この特集で強く感じたのは、どのリポートも学級担任の指導力向上への期待であって、どのようにすれば「1人立ち」できる教師になるか、が最も重要な課題とされている。

例えば、「子供に教えなきゃと気負わずに、1つでもクラスルーム・イングリッシュを使おうとしている先生ほど、子供が伸びる」(雲南市)、という。「先生も苦手だから皆と一緒に上手になりたい。できないところは一緒にALTに教えてもらおう」という姿勢で、毎日少しずつ言葉を増やすという。「授業を見える化し、授業の進め方を教えやすく学びやすいように構造化して、固定化したことが非常に効果的」で教員の不安を小さくした。

その授業の流れは、①ウォームアップ(挨拶、歌など)②デモ(本時のゴールへの見通し)③アクティビティ(メインになる活動)④振り返り(カードの記入と評価)――である。

この1コマの流れをある程度固定化する考えは町田市にもみられる。中学年向けの例示であるが、「狙いの明示→スモールトーク→目標表現の導入→発表活動→絵本→振り返り」である。

このような授業展開のスタイルを徐々に教員が身に付けることで、「1人立ち」の授業が可能になるのではないか、という実践的な提案であった。

英語学習の格差が顕在化?

『VIEW21』(2018Vol.2)の特集は「教委が導く! 連続性ある英語教育」である。教委の支援をさらに積極的に求めている。

福井県は県教委が積極的に主導し、小・中・高の指導に連続性を持たせるとする。特に小学校英語指導では、先に述べたように全授業の指導案を作成している。恐らくは、県内17市町教委それぞれに任せるよりも、県教委が主導してカリキュラムづくりを進めるほうが効率的に実施可能と考えたのであろう。また指導案のみでなく、県独自の教材を作成し、その活用方法や評価について中核教員だけでなく5・6年の担任にも研修を実施している。県教委と17市町教委との結び付きがかなり強いと考えられる。

福井県の例が参考になるのは、小さな町村では教委が実施したくとも人材不足などで難しい教育施策などを県教委が可能にすることである。

実のところ、多様な市町村の動きをみると、確かに「小学校英語への特別な取り組み」を考えている傾向は高いが、具体的・効果的に実施されているかは、多様であろう。

その結果として英語教育について地域格差が今後生まれるのではないか、と危惧される。その危惧はあるが、それぞれの教委の創意ある英語教育の推進が今後ますます進化することの期待は大きいのである。

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