(注目の教育時事を読む)第56回 学習評価の論点整理案

eye-catch_1024-768_tyumoku-kyoiku_r20180426藤川大祐千葉大学教育学部教授の視点

緻密化でなく単純化の発想を 教師も児童生徒も常に評価を意識
◇幅広い範囲を扱う論点整理案◆

本紙電子版12月3日付で報じられているように、同日、中教審の教育課程部会内のワーキンググループ(以下、WG)から学習評価の論点整理案が公表された。

2016年12月に中教審は学習指導要領等改訂に関する答申を出しており、学習評価に関しても基本的な在り方が示されていたが、具体的な在り方については改訂学習指導要領の公表後も検討が続けられていた。

論点整理案については、本紙電子版12月4日付で詳細が報じられている。この記事では、論点整理案のポイントとして、新学習指導要領で示された三つの柱に対応した観点別評価の在り方、評価の方針およびタイミング、指導要録の改善の3点を示している。

だが、論点整理案本文を読むと、ポイントとされるべき点はこれら以外にも多岐にわたっている。具体的には、カリキュラム・マネジメントとの関連、「主体的・対話的で深い学び」との関連、評価方針などの児童生徒との共有の在り方、教科等横断的な視点で育成を目指す資質・能力の評価、学習評価の入試での利用、障害のある児童生徒についての評価、外部試験・検定等の活用などである。論点整理案は、非常に幅広い範囲を扱っている。

論点整理案には、「必要性・妥当性が認められないものは大胆に見直していくこと」とある。「教師の働き方改革が喫緊の課題となっていること」を踏まえ、大胆な見直しが掲げられている。評価を充実させればそれだけ教員の負担は増えることから、教員の負担をいたずらに増やさないようにすることは重要だ。

では、論点整理案では、教員の負担について十分に考慮がなされていると言えるか。残念ながら、そこまでの考慮がなされているとは言い難い。

◆教師も児童生徒も常に評価を意識◇

新学習指導要領に対応するため、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」の三つの柱で整理されている。論点整理案では、これら三つの柱に対応した評価を緻密に行うことを求めている。すなわち、「知識及び技能」については各教科で「多様な方法を適切に取り入れていくこと」を求め、「思考力、判断力、表現力」についてもポートフォリオ等の評価方法の工夫を求めている。そして「主体的に学習に取り組む態度」に至っては、実に約5ページにわたって説明が記された上で、知識および技能や思考力などを身に付けることに向けた「粘り強い取組」を行おうという面と、自らの学習を調整しようとする面とを評価すべきことが記されている。

これらを踏まえれば、教員としては、ペーパーテスト、観察・実験などの知識や技能を用いる場面の評価、リポートや発表の評価、ポートフォリオの評価などをそれぞれ工夫して行わなければ適切に評価ができないことになる。いや、仮にこれらを工夫したとしても、汎用(はんよう)的能力であるはずの思考・表現・判断について特定の内容を扱う授業の中で評価しなければならず、限られた材料から児童生徒の学習についての調整能力をも評価しなければならないことになる。

しかも、論点整理案では、評価方針を児童生徒と共有すべきと述べられている。ということは、さまざまな場面で評価がなされていることを児童生徒も知らされることとなり、教師も児童生徒も常に評価を意識して授業を進めなければならなくなってしまう。これでは教師の負担は増える一方であり、児童生徒もいつも評価を過度に気にすることになるだろう。

◇アセスメントとエバリューションの明確な分離を◆

以下、提案である。

まず、各児童生徒の学習に資するためのアセスメントと、成績をつけたり入試に使ったりするエバリュエーションを明確に分離すべきだ。アセスメントでは各児童生徒の学習を進めるにあたっての課題を発見できることが重要だが、エバリュエーションでは一定のルールによって公平に評価されることが重要であり、同じ評価でも求められるものが異なる。

アセスメントとしての学習評価は、担当教員による評価、授業を見た他の教員による評価、児童生徒による自己評価など多様な見方を重ねて行うことを推奨すべきである。複数の教師が互いの見方を交流し、個々の児童生徒についての指導方針を多面的に検討できるようにする必要がある。個々の教員の負担はある程度生じるが、評価の過程で他の教員と見方を交流して鑑識眼を向上させることが期待できる。長い目で見れば負担感なく評価を行うことにつながると考えられる。

エバリュエーションとしての評価は、各観点に関する基準を児童生徒に公表し、不利な条件にある者には救済措置を設ける、主観的に評価する場合には複数の教員によって評価するなど、児童生徒が公正だと考えられる方法で行うべきである。枠組みを学校である程度つくっておけばその後は枠組みをつくり直す負担がない上に、評価の公正性で苦労する必要がなくなるはずである。