未来を切り開く力の育成のために 求められる管理職のマネジメント能力

教育新聞論説委員 細谷 美明

■教育界に新しい風

新しい年の始まりである。今年は今上天皇の譲位、新天皇の即位というビッグイベントがあり、平成の世の終焉(しゅうえん)とともに新時代の幕開けを迎える。

教育界も2017年3月の新学習指導要領告示を受け新しい教育の風が吹き始めている。中学校では19年度から新学習指導要領の一部を移行措置として実施している所もあるが、4月からはさらに多くの学校が対応に追われるであろう。ここでは21年度からの本格実施を円滑に始めるための移行措置期間の対応について私見を述べたい。

新学習指導要領の基本的な考え方は、子供たちが未来社会を切り開くための資質・能力を、社会と共有・連携しながら一層確実に育成するために、「社会に開かれた教育課程」を編成・実施することである。

つまり、現行の学習指導要領で蓄積してきた成果を生かしながら、子供たちが社会や自分をよりよいものにしていける力=生きる力を地域社会の支援を受けながら育成していく、ということである。そのために、今後編成・実施する教育課程はどうあるべきか、焦点を絞ってみてみたい。

■深い学びの事例の共有化を

これまでの自校の教育課程は▽「目指す生徒像」について校内だけでなく家庭や地域社会にも意見を求め修正を加えてきたものか▽各教育活動が地域や生徒の実態を踏まえ理論的根拠をもって設定したものか、またそれを家庭や地域社会に説明し納得してもらったものか▽外部の物的・人的資源を活用しているものか――などが挙げられる。

これらに関し検討しなければならない事項としては、①学校の教育目標の見直し②教科などの指導だけでは解決できない課題解決のための教科等横断的な視点を持った教育活動の設置③外部の物的・人的資源の有効活用のための校内組織の改善――などが考えられる。
①については、前回の指導要領改訂時に見直した学校も多くあると思うが、どれぐらい外部の声を入れ反映したものであるか再検討する必要はあろう。

②の課題については、学習指導要領解説の総則編で例示されているが、「健康・安全・食」や「グローバル化への対応―多様性・伝統文化の尊重―」「持続可能な社会づくり」など地域・生徒の実態を分析した上で現在実施している総合的な学習の時間の内容との整合性も含め、スクラップ・アンド・ビルドの考えで検討することも必要であろう。全体計画の作成は必須である。

③については、企画段階で外部人材を校内組織に配置し役割分担を検討するなど組織の意識改革も含めた検討が考えられる。

「主体的・対話的で深い学び」は三つの視点を持った学習形態であるが、既に現行下でも行われている。やや乱暴な解釈であるが、現行では「習得・活用」は教科の言語活動で、「探究」は総合的な学習の時間で取り扱うといったすみ分けがされており、それなりの成果はすでに出ている。新学習指導要領では生徒の汎用(はんよう)的能力を高めるために、さらに教科でも「探究」を、といった方向性が打ち出された。問題は教科指導における「探究」(深い学び)である。これについては、総則でも「1単位時間の授業の中で全てが実現されるものではなく、単元や題材など内容や時間のまとまりを見通して」進める、とあり、これまで言語活動を教科指導に計画的に取り入れ成果を上げている学校は、「探究」を視野に入れた単元について指導計画の見直しを図ると良いであろう。

なお、現在学校現場を困惑させているのが「深い学び」と教科の「見方・考え方」の関連性である。総則ではまとめて記述されているが、教科ごとの内容はさまざまである。この2年間のうちに教科ごとに設置されている地区の教育研究会などの授業研究を通し「深い学び」の事例をより多く作り共有化することが大切であろう。

■指導と評価の一体化を意識

新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」に代表されるように、子供の学びを教師だけでなく子供自身がどう分析し自己の人間形成に生かすかといった多様な評価の重要性が指摘されている。そのためには、パフォーマンス評価やポートフォリオ評価など、指導と評価の一体化を意識した実践力が教師に求められる。観点別評価をはじめ多様な評価についての理解と実践は中学校においてかなり定着してきた。しかし、今後若い教員が増えていく状況を考慮すれば、学習指導と評価をセットにした研修や研究協議会を意識的・計画的に開催していくべきであろう。

教員の働き方改革が一方で叫ばれているが、今こそ管理職がそのリーダーシップを発揮し、一連の教育改革の波を見据えマネジメント能力を発揮して21年度を迎えてもらいたい。

(元全日本中学校長会会長)