平成の学校教育 成長の鈍化、少子化高齢化に向けて

教育新聞論説委員 工藤 文三

平成は今年の4月で終わりを告げ、次の元号の下で歳月を刻んでいくことになる。将来において、平成の時代と学校教育はどのように位置付けられ語られるのであろうか。

平成の時代は、経済社会の側面からみると、前半はバブル崩壊とその後の不良債権問題、金融危機への対応、構造改革に追われる時期であった。また、持続可能な開発の理念が提唱され、地球環境問題への取り組みが本格化した。情報端末の進化とインターネット環境が普及したのも平成の時代の特色である。人口構成は、時代を通じて少子化、高齢化が進行し、平成27年には総人口が減少し始める。

平成元年はバブル崩壊の前夜であり、また、東西冷戦の終焉(しゅうえん)を象徴するベルリンの壁崩壊やマルタ会談の年でもあった。平成元年に告示された学習指導要領は、自ら学ぶ意欲を重視するとともに臨時教育審議会の答申を受けて、変化への対応や個性を生かす教育、選択幅の拡大などを打ち出した。

平成3年には、関心・意欲・態度を重視する指導要録の改訂が行われ、新指導要録に基づく学力観の下、児童生徒の学習への支援が強調されることになる。

学習者中心の学習指導観は、平成10・11年改訂における「自ら学び、自ら考える力」といった主体的な学力観につながっていく。

その後は、「失われた10年」といわれ、不良債権問題、金融機関の破綻といった大きな課題に追われることになる。一方、一般家庭にパソコンが普及し、インターネットやメールの利用者が急速に増えたのもこの時期である。地球環境問題への国際的な取り組みも活発化した。

平成8年に中教審は、「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」とする答申をまとめ、「生きる力」の理念に基づく教育の基調を提起する。平成10・11年の改訂は、授業時数の縮減、教育内容の厳選、総合的な学習の時間の創設を特色とし、学力観、学習指導観は平成元年改訂の延長として捉えることができよう。総合的な学習の時間の創設は、環境教育などの教科横断的な課題や地域課題のカリキュラム化を促し、学校主体のカリキュラム開発を進める出発点となった。

ただ、改訂の前後において学力低下を不安視する世論が高まり、平成15年には、学習指導要領の一部改正や学力向上施策が展開される。一方、平成15年、18年のPISA調査の結果は、学力政策への国際的な影響を強める契機となった。平成17年には義務教育の構造改革が掲げられ、平成19年の全国学力・学習状況調査の実施によって、学力低下の世論は沈静する。PISAの影響が濃厚な学力調査のB問題に示される活用や能力重視の学力像は、その後の改訂や、高大接続改革に具体化されていく。

平成18年には教育基本法が改正され、教育振興基本計画の策定が進められる。平成20・21年の学習指導要領の改訂は、平成10・11年改訂以降の諸課題に答えようとしたものであった。「自ら」に傾きすぎていた学力像を、学力の3要素としてバランスを取るとともに、授業時数の増加と指導内容の調整を行った。

また、言語活動の充実が提起され、平成29・30年改訂に引き継がれることになる。急速なグローバル化の進展は、小学校における外国語活動の導入に結実し、その後も強化されていく。

平成29・30年の改訂は、資質・能力育成型の潮流を受けながら、これまでの内容重視とのバランスを取ったものといえる。その成否は、教育評価の在り方も含んで今後の教育課程の実施によって検証される。

平成の時代の学校教育は、成長後の成熟社会における教育の姿を展望したものの、その後の成長の鈍化、少子化高齢化社会の構造変化の中で再調整され、29・30年改訂に至ったと捉えることができよう。