中高の校内研修をどうする 教育的専門性を支える視点を明確に

教育新聞論説委員 工藤 文三

開放制の教育養成

第二次世界大戦後の教員養成は、大学で行うと同時に教職課程における必要単位の修得によって免許状を取得できる開放制をとってきた。これらによって、例えば社会科の教員には、教育学を学んだ教員もいれば経済学を学んだ教員、社会学を学んだ教員も社会科を担当できるようになった。

経済学部では経済学としての所要単位の修得によって経済学士の学位が与えられ、その上で社会科の教員免許状に必要な科目を履修・修得する。経済学としての素養は、社会科の公民領域の一部に役立つが、その他の政治学習や地理、歴史などについての内容的知識や指導法については、教員に採用された後に学習していくことになる。

教科の専門性と教育的専門性

中・高校では、小学校と異なり各教科ごとに免許状が付与され、前述のような形で教員養成が行われるため、教科の専門性の意識が強い。校内で授業研究を進める場合、ともすればこの教科専門の意識が“壁”として意識される場合がある。お互いに他教科の授業等について踏み込んだ指摘や意見を付けにくいという意識である。確かに、国語教育には国語教育としての特色や伝統があり、他の教科の教員が踏み込んだ意見をするのははばかられる。校長や教頭が所属教員の授業を観察する場合も同様の課題がある。校長や教頭も管理職就任以前は各教科の教育に基盤を置いていたからである。

それでは、教科の“壁”を超えてより有意義な校内研修にするにはどのような工夫が考えられるであろうか。

専門性には、各教科の基盤に関わる内容的専門性と各教科の教育に関わる専門性がある。前者は、前述の例でいえば、経済学についての基礎的な素養に当たる。また、素養だけでなく、経済的な見方や考え方を一定程度身に付けていることが想定される。

一方、教育的専門性とは、内容に関する専門性を基盤としながらも、当該教科の指導内容を扱う意味を生徒の視点から検討することが挙げられる。例えば、歴史を学習するのは、社会生活における教養として必要なのか、また、現代社会の課題解決に必要であるからか。そこには、目の前の生徒にとって内容の教育的意味や意義を吟味するという専門性がある。また、生徒の実態や特性に応じて、内容の構成や展開を工夫するのも教育的専門性である。

さらに、適切な教材を準備し、指導方法や学習活動を選択すること、目標の実現状況を評価することも教育的専門性の重要要素である。

校内研修の配慮点

校内研修で授業研究を行う場合には、前述のような教育的専門性を踏まえ、教科教育に共通の視点を用いて、授業を観察したり、協議したりすることに配慮したい。生徒の視点から、指導目標の意義をどう捉えたか、指導内容をどうとらえカリキュラムとして構成したか、当該教材を準備したねらいと効果、どうしてその指導方法や学習活動を適切と考えたのかなどの視点である。生徒の授業の受け止めや習得状況も必要な視点である。これらの視点は、教科教育に共通の視点であり、どの教科の授業においても行われている。日々の授業はともすれば経験に基づいており、授業者において常に意識されているわけではない。

校内の授業研究会では、前述のような視点に基づいて、授業者が自ら説明したり、相互に意見交換したりすることによって、授業に組み込まれた教育的仮説が明確になっていく。意図した仮説の妥当性についても検討されることになる。授業改善をより合理的なものにするためにも、教育的専門性を支える視点を明確にし、共有できるようにする必要があるのではないか。