(注目の教育時事を読む)第57回 外国人労働者受け入れ拡大と学校

eye-catch_1024-768_tyumoku-kyoiku_r20180426

藤川大祐千葉大学教育学部教授の視点

学校や社会の在り方を問う契機に

◇すでに現場では重要な課題に◆

本紙電子版1月15日付で報じられているように、文部科学省は外国人児童生徒の受け入れに関する施策を具体化する目的で、「外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チーム」を設置すると発表した。同チームは1月16日に初会合を開催している。

今回のチーム設置は、直接的には昨年12月の改正出入国管理法の成立で、外国人労働者の受け入れ拡大が決まったのを受けたものである。

同法では、まず受け入れの対象となる介護、農業等14業種を定めた「特定技能1号」に関しては、期間が5年までで家族の帯同を認めないものの、2021年度から選考を行う建設業などの「特定技能2号」に関しては滞在期間の更新が可能で、家族の帯同を認める。

今年4月の法律施行とともに、すぐ外国人労働者の子供が日本にやってくるとは言えないが、しばらくすれば、「特定技能2号」の労働者の子供が多く来日するのは間違いなく、日本で生まれる子供も増えていくであろう。

すでに、日本の公立学校における外国にルーツを持つ子供に対する教育は、重要な課題となっている。文科省の調査によれば、16年度の時点で公立学校に在籍している外国籍の児童生徒は8万119人おり、うち3万4335人について日本語指導が必要とされている。日本国籍の児童生徒で日本語指導が必要な者は9612人おり、計4万人以上の児童生徒に日本語指導が必要である。06年度においては、日本語指導が必要な児童生徒は約2万6千人であり、この10年で大幅に増加していることが分かる。

日本語指導が必要な児童生徒が普段使っている言語は、ポルトガル語、フィリピノ語、中国語、スペイン語などであり、多くの日本人が学んでいる英語を使用している者は少ない。日本語指導に携わる教員の多くは、自分が学んでいない言語を使う子供に、日本語を指導しなければならない。

以上のように、日本の学校における外国人児童生徒らへの日本語指導は、外国人労働者の受け入れ拡大が決まる以前から、重要な課題となっていた。

だが、外国人労働者受け入れについて一貫した政策がとられてこなかったために、外国人児童生徒らへの対応も十分に進んできたとは言い難い。今回の入管法改正を、対応を充実させる契機としなければならない。

◆難しい担当者の確保◇

1990年の入管法改正で日系3世に日本での定住資格が与えられたことから、日系外国人が多く来日し、製造業で働く者が多くなった。群馬県太田市や大泉町、静岡県浜松市といった外国人が多く働く工場の地元では、小中学校で非常に多くの外国人児童生徒を受け入れることとなり、自治体や学校が工夫して対応している。こうした地域では、ブラジル人コミュニティーなど、人々が共生する環境ができ、学校においても外国人児童生徒らへの対応のノウハウが蓄積されている。

他方、外国人が少ない地域では、外国人が多い地域のノウハウをそのまま生かすのも難しく、課題が多い。外国人児童生徒のために加配教員を付けたくても、言語が通じる人を探すのが難しいケースもあるようだ。

文科省は14年に学校教育法施行規則を改正し、小中学校等で外国人児童生徒らに対する日本語指導を「特別の教育課程」として行えるようにした。その後のさまざまな会議での報告によれば、特別の教育課程の中での日本語指導は拡大しているものの、担当者の確保や研修の在り方について課題が指摘されている。

教員免許を持つ教員が核になり、母語支援員や日本語ボランティアの協力を得つつ、指導体制を充実推進するよう求められている。

◇異質なものの排除を避ける◆

現状では外国人児童生徒らに対応できる体制の整備が喫緊の課題と言えるが、さらには教育実践上の課題として2点、指摘しておきたい。

第一に、日本語の難しさがある。同じ文字に多くの読み方がある漢字の読み書き、英語と全く異なって聞こえるカタカナ外来語、省略されがちな主語、助詞「は」と「が」の区別など、日本語には特有の難しさがある。これらを正確に使いこなせるようにするのは、非常に困難だ。外国人に分かりやすくアレンジされた日本語が開発されてよいのかもしれない。

第二に、異質な者が排除、いじめの対象となりやすい問題がある。日本の学校では、同調圧力が強く働き、自分たちの同質性を確認するために異質な者を排除しがちだ。日本で育った子供たちが、同質性に頼らずに人間関係を構築できるよう、指導する必要がある。

外国人労働者受け入れ拡大は、私たちが日本の学校や社会の在り方をあらためて問う絶好の機会である。創意工夫ある取り組みに期待したい。

あなたへのお薦め

 
特集