今年5Gが市場に AIは切り離せない

今月初旬、米ラスベガスにて開催された世界最大規模の家電ショーCES(Consumer Electronics Show)に参加した。

今年の主なトピックはAI、5G、IoT/AIoTだ。AIはどの製品にも使われている状況で、5Gはすでに一部市場に出ており、米国ではこの秋にも市場に開放されると言われている。教育領域での利用はまだ先だが、4Gに比べてスピードの速さ、容量の大きさ、遅延率の低さは今後、学びの在り方も変えるだろう。

スマートホームや自動運転車など、全てがつながってくる未来ももうすぐそこだ。自動運転車の中で学習するというスタイルもCESで展示されていた。

最新のテクノロジーですぐに教育に直結するものは少ないが、そのテクノロジーが教育に応用されるのは時間の問題だ。世界における日本のイノベーションの位置付けと、どのようなテクノロジーが現在存在し、それはどこへ向かうのかを、基調講演の内容などを共有しつつ考えたい。

■日本はイノベーションの国として認識されていない

まず最初に主催者であるCTA(Consumer Technology Association)のCEOが、同社が主催する「イノベーション・チャンピオン」を紹介した。これはテクノロジーを使ったイノベーションが各国でどのくらい起きているかを示したものだ。それによれば、1位はエストニアで、英国、オランダと続く。

計16カ国が受賞したが、その中に日本はない。アジアで入賞したのはシンガポールのみ。日本は技術大国として君臨していたが、最新のそれについてはかなり遅れている。研究への公的投資の少なさ、規制の多さがイノベーションを阻んできた。中国は入賞していないが、政府がトップダウンでテクノロジー事業を推進できる環境は、AIなどで先頭を走る米国の脅威となり、大きな影響を与えるだろう。

一方で、CESには日本企業も多く出展していた。トヨタをはじめとする自動車会社は例年通り広いブースを構え、ソニー、パナソニックも出展して多くの人でにぎわっていた。また、今回JETROがまとめ役となって日本のスタートアップも計22社出展し、STEM教育のLife is Techなども参加していた。世耕弘成・経済産業相が大臣として初めてCESに参加したことからも、政府の力の入れようが分かる。

ただ、フランスのスタートアップは数が非常に多く、大きな存在感だった。フランスもイノベーションアワードに入賞しなかったが、マクロン大統領の政策もあり、ものすごい勢いでテクノロジーを用いたスタートアップが勃興している。

■三つのイノベーション

IBMのCEOであるジニー・ロメッティ氏の基調講演から始まったCES。彼女はこれから起こる三つのイノベーションについて語った。1=ディープデータ、2=ブロードAI、3=新しい職だ。

ディープデータとは個人や組織の属性などを長期にわたって深く収集したデータのことで、デルタ航空の事例が挙げられた。同社は毎年2億人の乗客があり、乗客各人が「自分のことをよく考えてくれている」と思えるサービスの提供を心がけているという。さまざまな課題はあるが、その一つに多くの欠航があった。そこでその欠航率を改善するべく、テクノロジーを用いて整備のプロセスを改善した。

同社のCEOであるエド・バスティアン氏は「データをどうアクションにつなげていくかが重要で、速く動くということをモットーにしている。一方で、テクノロジーをどのように人が使うかがより重要で、マインドセットの変革も大切だ」と説く。同社は来年、バイトメトリックターミナルを設立予定。顔認証だけでパスポート、チケットが不要だという。

ブロードAIは、次の三つの要素からなるAIだ。1=例から学習する、2=広範に利用できる、3=信用がある。

ジニー氏が語るイノベーションの三つ目は、新しい職についてだ。これまで、労働者についてはホワイトカラー、ブルーカラーといった分け方があったが、それに「新しい襟(カラー)」が出てくるという。これまでの教育方法ではない違う方法で専門知識などを学び、仕事に応用できる人だ。

データ、テクノロジーによって、雇用状況は今後大きく変化する。そのような中で必ずしも学士号を取得する必要がなくなっており、IBMではP-Tech Schoolという学校を設立し、そこでは無償で準学士号を取得できるようにしているという。

これまでの学び方の意義は今後、さらに問われるようになるだろう。

(リクルート次世代教育研究院院長/東京学芸大学客員准教授)