子供の貧困 境目のない産官連携を

教育新聞特任解説委員 小宮山 利恵子

先月、東京で内閣府主催「子供の貧困対策 マッチング・フォーラム」が開催された。クオンタムリープ代表取締役の出井伸之氏らが基調講演をされ、私自身もパネルディスカッションのファシリテーターとして登壇させていただいた。

同イベントはすでに盛岡でも開催され、今後は山口・周南、名古屋でも開催される予定だ。子供の貧困については、2013年に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が成立して以降、さまざまな対策が採られてきた。一方で、最新の調査によれば日本では7人に1人が相対的貧困とされており、経済的格差が学力格差につながっているとの議論が以前から存在する。

リクルートは内閣府の「子供の貧困対策 子供の未来応援プロジェクト」を支援しており、同社が展開するオンライン教育コンテンツである「スタディサプリ」も、経済的格差、地理的格差が教育格差になっていることを改善できればという願いからスタートしたものだ。今回は、同フォーラムにて共有された企業、自治体やNPOが実施している子供たちへの支援を紹介するとともに、産官連携の形について検討したい。

こども応援基金

大和証券グループでは、貧困状況下にある子供の環境改善や貧困の連鎖を防止するため「輝く未来へ こども応援基金」を設けている。支援対象は①将来の貧困リスクを低減する先駆的な事業②初期的に効果が実証された取り組み③そのような取り組みが持続可能な事業として確立するための事業化段階のサポート――だ。

助成先団体に対し、一団体当たり最大3年間で合計900万円程度の助成金を提供する。助成団体数は毎年2~3団体。期待される中期的成果は、他団体が参考とできるような先駆的モデルを提供したり、政策・制度の検討において影響を及ぼしたりなど、子供の貧困対策におけるイノベーションの促進だ。

この助成先団体の一つに、NPO法人「Learning for All(以下LFA)がある。学習や生活面、発達に困難を抱えた子供たちが、自立するために必要な力をつけるために、質の高い学習機会・育ちの場を提供している団体だ。具体的には、自立するための力を育てる「学習支援事業」と、安心できる居場所をつくる「子どもの家事業」の2事業を行っている。

企業との連携で難しいことの一つに、企業が精緻なロードマップの策定を求め、可視化された結果を求めることが多い点が挙げられる。企業では、予算を検討する際にその事業を行うことによって、どれくらいのインパクトがあるかが重要だからだ。

大和証券のコンサルタントがそのプロジェクトに参加し、LFAの担当者と一緒になってゴールを見据え、それまでの道のりについて議論しプロジェクトを実施したという。大和証券側から見れば、現場の情報についてLFAから共有されることで今後の施策についても役立っているという。このように、異なるセクターの人が混ざり合って、自分たちの強みを生かして連携していくことがより重要になってくる。

産官NPO連携

文京区では企業、NPOなどとコンソーシアムを組み、「こども宅食プロジェクト」を展開している。経済状況が食生活に影響するリスクがある家庭の子供に対して、食料などを届けるというものだ。

その運用資金は返礼品無しのふるさと納税で、クラウドファンディングという形で同プロジェクトの趣旨に賛同する個人からの寄付を募集している。同寄付は、食品の配送など、こども宅食プロジェクトの運営経費として使用しているという。全国からの寄付は、今年度(昨年12月時点)、4997万円。それに加えてパートナー企業である食品・飲料メーカーから主食、菓子、飲料などの支援を継続的に受けているという。

それを配布するにあたり、小分けにする必要があるそうだが、地域の障害者施設に依頼しているということで支援の輪が広がっている。

少年院にいる子供たちにも

前述したように政府主導で「子供の未来応援国民運動」も行われているが、1点気になることがある。それは、対象が生活困窮世帯や児童養護施設で暮らす子供らで、少年院退所者への支援が含まれていないという点だ。少年院にいる子供たちは加害者ではあるが、しかし彼らはいずれ社会に戻ってきて、この社会を支える一員となる。そのような子供たちの支援ももっと必要ではないか。

私自身、数年前から個人的な活動として、少年院にいる子供たちの支援をしてきた。それで分かったことは、彼らは加害者になる前に家庭環境が恵まれないなどの被害者だった場合が多いことだ。彼らへの支援についても今後より検討が必要だ。

(リクルート次世代教育研究院院長/東京学芸大学客員准教授)