(新しい潮流にチャレンジ)移行期を乗り切る学校経営評価

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教育創造研究センター所長 髙階玲治

新しい学校体制づくりは順調か

移行期における学校経営

新学習指導要領は『総則』を含め、多くの事項で今年度から実施を目指している。間もなく移行期の1年目が過ぎようとしているが、学校の移行状況は順調であろうか。

今回の移行措置の内容は多様で困難な課題が示されているが、完全実施に向けて校内の共通認識を図りながら確実に移行することが求められる。そのために必要なのが、何がどう実施されているか、解決すべき課題は何か、などを点検するチェックリストである。

そのチェックリストを作成し活用することが、残る移行期間をどう展開するか、具体的な方略につながるのである。

移行期の点検は、自校独自に作成するが、実施状況がよく分かり、改善点が共通認識できることが望まれる。その場合、ほとんど全ての事項を網羅的に作成する場合もあるが、自校の課題に焦点化して一部をチェックすることも可能である。その場合は、より深く具体的に課題を掘り下げる。また、一応全体を実施し、課題が明確になった事項について、さらにその課題について掘り下げることが有効である。

さらに、小学校の英語科の導入やプログラミング教育などの困難度の高い事項は、実施状況を細かく点検する必要があるだけでなく、具体的な実施も迫られていることから、掘り下げた点検と改善・充実が求められる。なお、点検・評価は年度内に何度か行うことが望ましい。

新学習指導要領と移行措置

新学習指導要領は、2017年3月に公示されたが、17年度は「周知・徹底」として移行措置は18年度から小・中学校ともに行われた。完全実施は小学校が20年度から、中学校は21年度からとされた。

特に『総則』は、18年度から新学習指導要領による指導が始まっている。『総則』は基本であるから、学校の教育課程や日常の授業などに新たな理念を導入する。

具体的な移行措置の内容は次の通りである。

 ①総則、総合的な学習の時間、特別活動は18年度から新要領による。
 ②指導する内容・学年の変更がある場合は特例による。小学校は国語、社会、算数、理科、中学校は国語、社会、数学、理科、保健体育が該当する。
 ③上記以外の教科は新要領によることができる。「特別の教科 道徳」は、小学校は18年度から、中学校は19年度から実施する。
 ④小学校の外国語は、3・4年生は外国語活動、5・6年生は外国語科として実施する。授業時数は年間で3・4年生が15時間、5・6年生は50時間を標準とする。

このように移行措置は定められているが、例えば外国語のように、すでに先行実施で3・4年生が年間35時間、5・6年生が70時間実施している例がある。このように、完全実施に向けて積極的な対応を示している学校も少なくない。

今回、特に重視されたのは、新要領が掲げる学力の3要素「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」をバランスよく指導するとされていることである。どの教科等においても、このことに十分留意することが必要である。

移行期における学校経営の在り方

移行期の学校経営にとって重要なことは、新学習指導要領の基本の理念を示す『総則』が2018年度から完全に実施されたことである。したがって校内において全教職員が『総則』について「理解・徹底」することが必要である。その『総則』は、新要領の改訂の基本を踏まえ、さらに今回新たに示された『前文』の理念に基づいているが、『総則』に限定して言えば、「改訂の要点」は次の三つである。

 ①資質・能力の育成を目指す

▽「主体的・対話的で深い学び」で「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の学力の三つの柱をバランスよく育成する。

▽言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等の学習の基盤、現代的な諸課題に対応した教科等横断的な学びの視点を持つ。

▽「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を推進する。

▽言語活動や体験活動、ICTなどを活用した学習活動等の充実、情報手段の基本操作やプログラミング教育の実施。

 ②カリキュラム・マネジメントの充実

▽カリキュラム・マネジメントの充実、校内研修の充実などを図る。

▽児童生徒の実態を踏まえた教育内容や時間の配分、必要な人的・物的資源の確保、組織的・計画的な教育の質向上を図る。

 ③児童生徒の発達の支援、家庭や地域との連携・協働

▽児童生徒の発達を支える視点から、学級経営や生徒指導、キャリア教育を充実する。

▽障害のある子、海外から帰国した子、日本語の習得に困難を感じる子、不登校の子など、特別に配慮を必要とする子への指導の充実。

▽教育課程の実施において家庭や地域との連携・協力の充実。

このような『総則』に示された事項に対して学校は新要領の完全実施に至る道筋を年度ごとに積み上げていく必要がある。

移行期における経営チェックリストの作成

このような移行措置内容は多岐にわたるため、実際の教育活動は必ずしも順調に展開できるとは限らない。そこで年度途中において何度かチェックする必要がある。その試案を提示したい。

このチェックリストは、新教育課程の完全実施を目指す移行措置期間における評価で、PDCAの考え方に基づいて、必要と考えた場合、何度か実施してよいものである。新教育課程を実施・充実するために役立つことを目指している。

なお、あくまでも試案であって、学校独自に自校の実態を踏まえてチェックリストを作成し、実施することが望ましい。

今年度から始まった新教育課程への移行は、間もなく1年が過ぎようとしている。新教育課程の完全実施をノーマルに実施するための年次的な取り組みが移行期間の実施であるから、進行状況を明確に把握している必要がある。

その場合、特に必要なのは新教育課程実施に向けた自校の課題把握である。

次のような18年度全国学力・学習状況調査で実施した学校調査のデータがある。

「指導計画の作成に当たっては、各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた横断的な視点で、その目標の達成に必要な内容を組織的に配列していますか」は、「よく行った」のみが(以下同じ)、小学校33.1%(前年度20.4%)、中学校28.0%(同16.4%)である。前年比較ではよくなっているが、完全実施を目指すことを考えるとかなり低い数値である。

もしも、自校の取り組みが十分でないなら、そこに注力する必要がある。特にこの質問項目は①各教科等の教育内容を相互の関係で捉える②学校の教育目標を踏まえる――という二つの視点で「横断的視点」を示しているが、そのことの教員の理解・徹底が十分でないことがあり得るのである。

また、「前年度までに、習得・活用及び探究の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫をしましたか」は小学校27.0%(23.0%)、中学校26.6%(22.4%)とさらに低くなっている。この質問項目は「前年度までに」とあるように、これまでの「習得・活用及び探究の学習過程を見通す」とされていて、①学習過程が不十分だったので見通す、②今年度から新たに学力の三つの柱が示されたのであるから新しい指導方法に変えるべき――という二つの意味に受け取れる。いずれにしろ、数値的には高いと言えないであろう。ただ、前年度よりも数値がよくなっていることから、各学校の移行期間の努力が徐々に効果を上げていると考えられ、一層の努力が必要であろう。

チェックリスト活用による自校の課題探究

新学習指導要領の移行内容は、先に説明したように、かなり多様な内容がある。実際に必要なのは、移行措置全般について、何が課題で、今後どうすべきか、という校内の実施状況の把握である。
そこで、チェックリストの「試案」をある小学校(校長以下25人)で1月に実施したところ、特徴的な課題が明確に表れていた。

五つの分野に分けて調査項目を設定しているが、おおまかに言えば①「新教育課程の基本的事項について」と、②「年次的な教育課程経営について」が「よくない」とする傾向が強く、他の分野は良好であった。特に注目されるのは、19「学力の3要素」や、20「主体的・対話的で深い学び」はかなりよい傾向である。

実は、ある地域の校長などに実施した8月の調査でも、かなり似た傾向がみられたのである。ただ、両調査とも21「カリキュラム・マネジメントの実践」は「よい」「よくない」に分かれている。これら3項目は、新教育課程の基本の課題であって、調査結果をみると教員の受容はかなり進んでいるのではないか、と推測する。

そこで、調査項目の中で最も厳しいものを上げると、11「プログラミング教育の導入や実践」、13「現代的な諸課題に関する学習」の2項目であった。これは両調査とも同様である。また、A小学校は10「ICT教育など機器の導入や指導」と14「保護者への移行措置の説明」が低い。

また、A小学校は、12「言語力など諸課題に関する課題」、4「道徳の理解と実践」、5「外国語の導入と実践」、6「総合的な学習の実践」が「よい」「よくない」に分かれていた。

ところで、不思議に思えた項目がある。7「特別活動の理解と実践」で、A小学校は「かなりよくない+よくない」が8割近く、校長等の調査でも7割みられたことである。実践的な課題について究明が必要である。

さらに究明すべき課題がある。1「教員は学習指導要領を読んでいますか」、2「新要領で新しくなった内容等の理解は進んでいますか」、3「各教科等の新しい内容の理解は十分ですか」の3項目は、いずれも「よい」が3割程度にとどまっていることである。校長等調査でも半数程度であった。

以前から「学習指導要領を読まない教師たち」の存在が指摘されてきたが、この問題をどう受け止め、どう改善していくか、大きな課題である。

移行措置のチェックリストは、このように自校の現時点での教育課程の実施状況がかなり把握できるものである。自校の現状から、今後何を課題にし、どう学校経営を推進するかが明らかになってくる。

その場合、教師の努力によって改善できるもの、学校として取り組みを強化すべきもの、教委の支援が必要なもの、さらには「学校の働き方改革」のように現在進展しているものなど、課題によって対応が異なる場合がみられるであろう。

そうした多様な取り組みをスケジュール化することで完全実施に向けた努力を積み重ねていく。見通しを持つことの大切さである。

幸い、15「学校組織のまとまりや協働意識」、18「子供の学習・生活態度は良好か」は両調査ともかなり高かった。また、26「学校の自己評価を活用し、年度途中でも改善に活用している」、27「保護者アンケートを実施し、学校改善に活用」も高かった。このように学校は、課題改善意識は高いと推測されることからチェックリストの結果を学校改善に結び付ける努力を継続的に行われることを期待したいのである。