「主体的・対話的で深い学び」の実現 授業の目的に合致したものに

国立教育政策研究所総括研究官 千々布 敏弥

新学習指導要領の解説書総則では、主体的・対話的で深い学びの留意点として、次のア~カの六つを示している。

ア 児童生徒に求められる資質・能力を育成することを目指した授業改善の取り組みは、既に小・中学校を中心に多くの実践が積み重ねられており、特に義務教育段階はこれまで地道に取り組まれ蓄積されてきた実践を否定し、全く異なる指導方法を導入しなければならないと捉える必要はないこと。

イ 授業の方法や技術の改善のみを意図するものではなく、児童生徒に目指す資質・能力を育むために「主体的な学び」、「対話的な学び」、「深い学び」の視点で、授業改善を進めるものであること。

ウ 各教科等において通常行われている学習活動(言語活動、観察・実験、問題解決的な学習など)の質を向上させることを主眼とするものであること。

エ 1回1回の授業で全ての学びが実現されるものではなく、単元や題材など内容や時間のまとまりの中で、学習を見通し振り返る場面をどこに設定するか、グループなどで対話する場面をどこに設定するか、児童生徒が考える場面と教師が教える場面をどのように組み立てるかを考え、実現を図っていくものであること。

オ 深い学びの鍵として「見方・考え方」を働かせることが重要になること。各教科等の「見方・考え方」は、「どのような視点で物事を捉え、どのような考え方で思考していくのか」というその教科等ならではの物事を捉える視点や考え方である。各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものであり、教科等の学習と社会をつなぐものであることから、児童生徒が学習や人生において「見方・考え方」を自在に働かせることができるようにすることにこそ、教師の専門性が発揮されることが求められること。

カ 基礎的・基本的な知識および技能の習得に課題がある場合には、その確実な習得を図ることを重視すること。

これらの中で、特に重要なのはエではないかと考えている。

イで記述されているように、主体的・対話的で深い学びを技術的に捉える教師は多い。方法は目的に付随するものであり、目的に応じて変えるべきものである。

授業の目的が知識・技能であるのか、思考力・判断力・表現力であるのかによって、授業の流れは変わってくる。算数・数学のように思考の結果が共通する、すなわち明確な正答が存在する教科の流し方と、国語や社会科のように子供の思考が多様に展開し得る教科では、授業における子供同士の交流の仕方は変わってくるはずだ。

同じ算数の授業でも、直径と円周の関係(円周率)を見いださせる授業と、円周を求める公式を既習事項として扇形の周りの長さを求める授業では、課題の提示の仕方も子供の思考の深さも、時間配分も異なる。

しかるに、教育委員会や学校が定めた授業の型が過剰に支配したり、教師が特定のアクティブ・ラーニングの型に頼ったりするなど、教師が授業の目的を考えるよりも、出来合いの指導技術に頼る場面がある。

そのような場面では表面的に対話的な学びが実現できても、その対話が授業の目的に合致したものであるかどうか疑わしい場合が多い。そもそも、型が支配する授業では子供の主体的な対話が展開しないはずだ。教師が型に従った学びを子供に要求する段階で、子供は受動的になっているからだ。一斉講義形式の授業でよく見られる光景だが、いわゆる学び合い、アクティブ・ラーニングの授業でも見られる。