大津いじめ自殺事件の判決 発生時の迅速な体制づくりを肝に銘ずる

教育新聞論説委員 細谷 美明

2011年10月、滋賀県大津市の中学2年生だった男子生徒が自殺し、その原因を学校でのいじめだとして、遺族が当時の同級生やその保護者に対し賠償を求めた裁判の判決が2月19日に大津地方裁判所で言い渡された。

判決は、加害者とされた同級生2人に対し計約3750万円の賠償支払いを命ずるものであった。

この裁判では、被害者側が「日常的に暴力を受けるなどいじめがあった」といじめの事実を訴えたのに対し、加害者側は「遊びであり、いじめの意識はなかった」と反論するなど、いじめの有無、いじめと自殺の因果関係の有無、自殺が予見できるかどうかの可能性について裁判所がどう判断するかが注目されていた。判決では、全てこれらの点を認める結果となった。

特にこれまでの裁判では、いじめと自殺の因果関係については認められないケースが多く、被害者側の遺族にとって到底納得のいかない判決が続いていた。また、いじめの予見可能性についても同様であった。

今回の判決では、自殺の要因はいじめにあり、「自殺に及ぶことは一般に予見は可能」「加害者側の認識は関係なし」との判断をしていることから、遺族側にとってはまさに「画期的判決」となった。今回の判決が下されたことにより、他のいじめ裁判への影響やいまだに続くいじめの防止につながるかもしれない、など今後のいじめに関する状況の変化が注目される。

今回の判決を、学校や教育委員会はどう受け止め、今後の子供の指導に生かしていけばよいのであろうか。それには、判決要旨を分析する必要がある。

「いじめと自殺の因果関係」について要旨は、「男子生徒は暴行を受けて強い孤立感を形成し、周囲に死の願望を吐露するようになった。登校を避けるための相談を家族にしており、自殺の主たる原因は元同級生による行為だったと優に認められる」としている。つまり、被害者がいじめ行為に悩み自殺をほのめかしていることを他の人間が知った時点でいじめと自殺の因果関係が成立するということになる。

また、「自殺の予見の可能性」について要旨は、「元同級生の加害行為は、一連の積み重ねにより、自殺願望を抱かせるような孤立感、離脱が困難であるとの絶望感の形成に十分だった。そのような心理状態に至った者が自殺に及ぶのは一般に予見可能な事態だ」としている。先の因果関係と同様、被害者の悩みと自殺願望を他人が知ることにより自殺の予見は常識の範囲だということである。

今回の裁判の被告は加害者側の元同級生やその保護者であったが、その対応によっては学校が被告になることも大いにあり得る。過去のいじめ裁判の判例を見ても、学校の過失は裁判官から必ず指摘されている。今回の判決により、因果関係や自殺の予見性が認められたことで、今後学校に課せられる責任はより一層重いものになるのは確実である。

判決から学ぶことは、学校の過失の有無の分かれ目は、子供の悩みなどの情報を学校が日頃より収集し分析していたか、その結果いじめと判断してその対応を組織的に行ったか否かの点である。

したがって、学校が日頃より必ず行わなくてはならないことは、いじめの実態把握やいじめ防止のための指導・相談であり、いじめ発生時の対応などの場面を研修で意図的・計画的に実施し教職員自身の力量を高めることである。

生徒が本音で教師に話せる関係構築に努める教師の姿勢と、いじめ発生時において迅速に全校体制で動ける体制づくりを普段から行う管理職の覚悟が重大事態発生時の対応の決め手となる。今回の判決で学校は、これを肝に銘ずるべきだ。