(新しい潮流にチャレンジ)働き方改革が目指す子供の自立

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教育創造研究センター所長 髙階玲治

自学自習できる子供を育てる

働き方改革は子供にどう影響するか

1月25日に中教審の働き方改革の答申が出たが、教師の超過勤務が月45時間を上限とする制約が課されるなど、一応の改善策が示されている。当然ながら教師の勤務時間が縮減すれば、それだけ子供への教育効果が減退する。そのため、子供にどう影響するかを今後十分見定める必要がある。

例えば、部活指導で週2日の休業日、平日は2時間、土・日曜日は3時間という制約があった場合、休業日などを家で過ごす生徒が多くなることが予想される。どう過ごすであろうか。

小学校では、これまで子供のためとして行ってきた学習ノートの点検や自作テストやワークなどの作業が減るであろうから、指導がかなり手薄になりそうである。つまり、子供への教育的なサービス行為が減退する。恐らくは、教員増が見込めない現状では、従来の教育的サービスの代替は考えられないであろう。

この事実に目を向けることが重要である。結果として学校の教育力は低下するからである。

これまで、子供のためと称して多様な教育的サービスを行ってきた。それは教師の自発的なものであれ、学校教育を支えてきたものである。それが縮減する。どう考えるべきか。

子供の自立を育てる教育

周知のように今後の教育に重要とされるのは、例えば「学びに向かう力」の形成など、自立的な学びの形成である。それは主体的な学びを育てるという意図で従来さまざまに語られてきたことである。しかし、依然として言われるのは、わが国の子供は自尊感情や自己肯定感が低く、自分にとっての学びの意味や価値への自覚が薄いという傾向である。

教えられることに受動的で、勤勉ではあるが、新たな課題に立ち向かう能動的な学習態度が弱いとされる。いわば、知識の獲得のみが有用な学力となるとした従来の教師主導型の影響などによって、学校や教師に依存的な傾向が強まっているのではないか。

だが、これからの教育にとって重要なのは、自ら学ぶことを通してよりよい生活を築き、社会の発展に寄与する態度の形成であって、自立の基本を身に付けることである。

そこで、学校の働き方改革の結果として、子供への教育サービスが低下するという影響を考えれば、子供への指導の転換、あるいは指導の重点として「自立を育てる教育」を何よりも重視すべきではないか、と考える。

その指導方策は多様にある。例えば、自己管理能力の形成を徹底する。その意味は、基本的な生活習慣、行動様式を身に付け、自らの目標達成に向けて、自律的な判断と責任ある行動を行えるように、自己の生活・行動管理ができる力を身に付けることである。他にも、例えば生活適応能力や集団適応能力、自他理解能力など多様に考えられるが、子供個々が学校や教師に過度に頼らず自立できれば、教師は指導の場に余裕を持って注力できるのである。

そこで、重要な一つの例として、子供個々に「自学自習」の態度を形成すべきと考える。自学自習ができる子供は伸びるのである。

自学自習のためのステップ

以前、ベネッセの調査で「よい学び方を知りたい」とする小学生がほぼ50%程度いた。それが中・高校生になると70%以上になる。それは今日に至ってもあまり変わらない傾向のようである。

そこで教師たちに、「毎日授業を行っているが、よい学び方までは教えていないのではないか」と問い掛けてみるのだが、「学び方の教え方が分からない」というのが大方の返答であった。実際、子供が自律的に学ぶ、つまり自学自習の指導が徹底していないのが実態である。しかし、実のところ基本的な自学自習は小学1年生からでも実施している場合が多い。家庭でのワークやドリルなどの学習である。毎日、習慣化している子供は一定の学力を維持できている。

ただ、高学年になると単にワークやドリル程度では、十分な学力を維持できない。自ら課題を見いだし、学びに向かう力の形成が大切である。その態度形成を目指すことが重要である。ところで、自学自習にはステップがある。また、学年の発達段階や個人差が大きい。そうした傾向を考慮しながら、学級での指導を重ねていく。

1. 学習習慣を身に付ける。学ぶ対象が身近にあること(ワークやドリルなど)。毎日、一定の時間を決めて勉強する。宿題も必要(多くなくてよい)。また、笛の練習など、家で繰り返ししないと上手にならないことは多い。

2. 教科書の活用で学びの基礎を身に付ける。例えば、国語では、新出漢字、言葉の意味、朗読など、算数では練習問題など基礎的な学習を繰り返し学ぶ。家庭学習ノートが必要。

3. 授業での「振り返り」を大切にする。「分かる」から「できる」へ確実に学ぶ。例えば、算数の授業で問題の解き方が分かったつもりでも、練習問題を繰り返して学ばなければ習熟しないことが多い。どの教科でも、授業で「分かった」と言えても、定着するとは限らない。

4. 予習する子は伸びる。翌日の教科の学習を前日に予習する。自学自習では分からなくともチャレンジしてみる。この行為が大切である。予習で分からなかったことが、授業で教師の説明を聞くと、「なるほどそうだったのか」と、本当に分かる。

5. 予習など自学自習したことを授業で発表する。自発的な学習が授業に結び付いたとき、子供の学習意欲は極めて高くなる。他の子供への影響も大きい。学級全体が活発な雰囲気に満たされるようになり、教師のアドバイスのみとなり、出番が少なくなる。時には子供たちで授業を進行させるエネルギーに満たされる。

6. 家庭学習ノートを小グループで見せ合う。3分程度の時間で相互評価する。学習内容ではなく、頑張りの程度を評価する。「よく頑張った=◎」「頑張った=○」「やらなかった=△」。相互啓発が大切である。家庭学習ノートを見せ合うことで、相互に学びが刺激される。

7. 全員が自学自習する学級になる。宿題は必要なくなる。親がびっくりするほど子供は学習に熱心になる。これら全てで教師は子供に対して、絶えず「褒める」「認める」「励ます」「アドバイス」などの言葉掛けを行う。「自学自習」のステップは、私自身の体験的な要素が入っている。確かに子供たちは7にまで到達した。子供が自学自習し、授業の参画意識が高まれば、こまごまとした手取り足取りの手だては必要度が低下する。

これまで学校は、あれもこれも引き受けて、結果として多忙化の弊害が大きくなり、働き方改革という事態となったが、この機会に子供の自立を目指す教育の在り方について重点化して取り組むべきではないかと考える。学ぶのは子供なのである。