いじめのない学校づくり エビデンスに基づき良い雰囲気を

教育新聞論説委員 寺崎 千秋

昨年10月に文科省から、2017年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」が公表された。それによると、いじめの認知件数は41万4378件、認知した学校数は2万7822校、「重大事態」の発生件数は474件という結果だった。いずれも前年度を上回っており、一向に減る様子が見られない。なぜなのか。なぜ減らないのか。

本紙で連載「いじめのエビデンス」(全12回)を読んだ。論じたのは和久田学氏(子どもの発達科学研究所首席研究員)。狙いは、研究者の視点からいじめの捉え方、エビデンス(科学的根拠)に基づいた対応策を考える、とある。氏の知見を基に改めていじめが減らない理由や対応について考えてみる(例示は要約で文責は寺崎)。

「ほとんどの大人がいじめの経験者であることが対応を難しくしている」―学校教育は各人が自分なりの経験をしていることから、誰もが教育評論家になり得る。しかし、その経験は皆違う。自分の経験をよりどころに、いじめについての思いや考えを語る。従っていじめの受け止め方や対応の仕方も違ってくる。そこに問題が生じる。

「シンキングエラー(間違った考え)の存在の認識とそれを起こさない方法を考える必要がある」―「これは遊びだ」「みんながやっているから」は皆間違っている。

いじめの定義は「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的または物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」である。

加害者がどう考えようとそこに行為があり、被害を受けた子供が心身の苦痛を感じていればいじめである、という認識が薄い。もしくは、ない場合が多い。いじめの対応を考える際に改めてこの認識を確認し、教師はもちろん、子供、保護者など全ての人々にもっと周知する必要がある。

「いじめに関わった全ての子供の将来に悪い影響を与える」―いじめはそのときの被害者である子供が苦しむだけではなく、加害者、傍観者など、いじめに関わった全ての子供の将来にまで悪い影響を与える可能性がある。将来にまで心の傷として残ることを認識して関わる子供全てに指導を深める必要がある。

「大人の行動を省みる必要がある」―身近な大人が間違った考えを持っていたり、行為を見せたりすればそれを学んでしまう。○○ハラスメントなど、大人の世界もいじめ盛りではないか。

教師がいじめを見抜けない、見て見ぬふりをしていることなどが第三者委員会で報告・批判されることもある。大人が、教師が、いじめは犯罪ということを明確に示して子供と向き合い対応するように改めて確認し、共通理解を図りたい。

「いじめの背後にはより深刻な問題が隠れている」―いじめ被害にあう子供が本人の努力不足や子育ての失敗ではない、発達障害や外国人差別など、背後に深刻な問題を抱えている場合がある。学校が人権侵害の場とならないよう、教師自身は高い人権意識を持つ必要がある。しっかりと受け止めたい。

「よい学校やクラスの雰囲気=学校風土がいじめを起こりにくくする」―よい雰囲気の学校、クラスであれば、子供たちは生き生きと活動し、いじめや不登校が起こりにくくなるということは、従来から言われてきた。改めてこれを認識し、いじめの発見にばかり目を向けるのではなく、子供が主役の楽しい学校づくりを進めることが管理職のリーダーシップであることを確認したい。

紹介したもの以外も含め、いずれもこれまでの研究成果をエビデンスとして示しながらの和久田氏の知見である。ぜひ、いじめのない学校づくりに生かしてもらいたい。