(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース) 教育課程編成状況と働き方改革

長時間労働解消という視点で

文科省が発表した2018年度公立小中学校の教育課程編成・実施状況の結果、小中学校のほとんどが標準授業時数を超えた教育課程編成をしていることが明らかになった。事態を重視した同省は、教職員の働き方改革に配慮した教育課程の編成と実施を求めるよう都道府県教委などに通知した(電子版3月29日付既報)。

■全体的に授業時数は増える傾向

文科省通知を受ける形で、都道府県教委からの通知が学校現場に回ってくる。その時、多くの学校が戸惑いを隠せないに違いない。これまでと同様の方針と配慮で授業時間数を算出・設定して、苦労を重ねてカリキュラムを組んだにもかかわらず、なぜいまさら注文を付けられるのかというのが、偽らざる学校現場の本音だろう。

では、どのくらい公立小中学校は授業時数を標準より増やしているのか。小5と中1を例に取ると、18年度の年間授業時数は、小5が標準995時間に対して、全国平均は1061.0時間で、49.0%の学校が年間1051時間以上の教育課程を組んでいる。また中1は、標準1015時間に対して、全国平均が1072.6時間で、年間1051時間以上のカリキュラムを32.0%が組んでいる。つまり、小学校の約5割、中学校の約3割が、標準授業時数に対して、「週2コマ程度」を上乗せした教育課程を組んでいるということになる。

一方、5年前の13年度調査を見ると、標準時数に週2コマ以上の上乗せした教育課程を組んでいたのは、小学校(小5)が25.0%、中学校(中1)が21.7%となっている。

18年度は小学校が、新学習指導要領の移行措置期間に入ったという事情があるものの、全体的に学校現場における授業時数が増えているというのは間違いないようだ。

■働き方改革に配慮した年間授業計画の見直しを

学校現場としては、年間授業時数に余裕を持たせて教育課程を組むのは常識だ。そうでないと、何かトラブルがあって授業がつぶれれば、標準授業時数を確保できなくなる。

特に最近のように自然災害が頻発する状況では、授業実施が困難になる可能性は、以前に比べて高くなっている。また、学力向上などの要請に対応することも強く求められている。

だが、余裕を持たせたカリキュラム編成が、教職員の長時間労働の原因の一つとなっていることを見逃すわけにはいかないだろう。週2コマ程度の授業時数増は、週単位ではそれほど問題にはならないかもしれない。しかし年間を通して見れば、授業の準備時間なども含めて考えると、大きな労働時間を教職員に課すことになる。

これについて文科省は通知の中で、各学校の指導体制に見合った授業時数を設定すること、災害や流行性疾患による学級閉鎖などで標準授業時数が下回ることを過剰に意識する必要はないことを明記して、働き方改革に配慮した年間授業計画の見直しを求めている。

■カリマネの役割を再吟味して

また、授業時数増加の背景にあるのは、英語教育やプログラミング教育など学校で教えるべき内容が増加していることが挙げられる。特に、小学校では年間授業時数自体が新学習指導要領では増えることになっている。まさに学校現場からは、どう対応すればよいのかというため息が聞こえてきそうだ。

その一方、もう一つの原因として、教育課程の編成の際に教職員の労働時間まで意識するという考え方がこれまでの学校現場になかったことが指摘できる。教科間のバランスや教員一人一人の持ち時間数などを配慮して年間授業計画を作成していても、教職員の年間労働時間まで考えが及んでいなかったというのが学校現場の実情だろう。

新学習指導要領の具体化に向けたキーワードの一つに、「カリキュラム・マネジメント」が挙げられる。アクティブ・ラーニングや教科横断型学習による授業改善のため、各教科の関連性を図ることが、カリキュラム・マネジメントの大きな役割の一つだ。そして今後は、教職員の長時間労働を解消するという視点から教育課程編成を行うこともカリキュラム・マネジメントの役割となってくる。そうしないと、教職員が疲弊して、学校の教育活動が成り立たなくなる。

新学習指導要領に向けた教育課程編成で、カリキュラム・マネジメントの重要性を否定する管理職はいないだろう。同様に学校の働き方改革を視野に入れたカリキュラム・マネジメントによって、年間授業計画の作成を行う必要がある。

柴山昌彦文科相は4月2日、記者会見の中で、「年度途中であっても、できるだけ早い段階で授業時数の見直しを行ってほしい」と述べている。