不登校対策 「人一倍敏感な子供」への理解を

教育新聞論説委員 細谷 美明

新しい年度となり子供たち一人一人の新しい学校生活が始まった。保護者の中には自分の子供が新しい環境に慣れることができるだろうか、友達はできるのだろうか、不登校になるのではないかといった不安を抱きながら新年度を迎えた人も少なくないだろう。

不登校の原因は、「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況」(文科省)とあるように、多様であり複合的である。その一つとして起立性調節障害(OD)など自律神経系の障害も指摘され、本紙の社説でも昨年取り上げられている。このほか、子供本人の生まれ持った気質・性格が起因していることもある。最近注目されているのがHSC(Highly Sensitive Child)である。

HSCは「人一倍敏感な子供」という意味だ。米国の心理学者であるエレイン・N・アーロン氏が提唱したもので、その著書「ひといちばい敏感な子」(1万年堂出版)でわが国でも知られるようになった。

敏感といっても、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などいわゆる五感が敏感であるだけではなく、親や教師の心を読もうとするなど人の気持ちに敏感であるのが特徴である。詳しくは同書にチェックリストが掲載されているほか、アーロン氏が開設する日本語版ホームページにも各種セルフテスト(子供・保護者・本人対象)がある。

同書の日本語訳を担当した精神科医の明橋大二医師によれば、HSCは人種や男女差に関係なく5人に1人の割合で存在し病気や障害ではないという。これまでは「神経質」だとか「臆病な子」あるいは「発達障害ではないか」と考えられていたようだが、同書からHSCの存在を知りわが子の状況を理解・納得する保護者も増えているという。

このような特徴があるため、HSCの子供は学校など多くの人間がいる場所に長時間いると精神的に疲れてしまう。また、チャイムなど学校内で発生する音や子供たちの笑い声、教師の怒鳴り声のほか、他の子供が教師に叱責(しっせき)される光景もHSCの子供にとっては苦痛や恐怖の対象となる。このように、最近では心療内科や精神科などの専門医からの指摘もあり、HSCも不登校の原因の一つと考えられるようになった。

以上のことを踏まえ学校が認識しなければならないことは、これまで行ってきた教育相談において「人一倍敏感な子」の把握に努め、本人がそのことに悩んでいれば、全面的に受け止める姿勢を示した上で、保健室など一人で居られる場を提供するなどの配慮である。さらに、教室など人が多く集まる場所に居ることが子供本人にとって過酷な環境だと判断すれば、教育委員会が設置する適応教室などの通学も保護者と相談し考慮すべきであろう。

大切なのは、子供の身近な存在である保護者と教師が子供のよき理解者になることだ。その上で、保護者に専門医の診察を勧め、専門家のアドバイスを受け子供にとってより適切な環境を設定するのがベストである。

HSCに限らず、不登校傾向の子供に必要なのは、保護者や教師がその子のよさを認識し、そのよさを伸ばす指導を通し子供に安心感を与えていくことであろう。「すべての子供には悩みがある」といった認識を教師が持ち、「すべての子供には可能性がある」といった信念で子供のよさを引き出す指導を心がけてほしい。

それは、日本の子供に不足していると言われる自己肯定感の育成にもつながる。そして同時に、国や教育委員会もHSCと不登校の関係を十分理解し、そのために必要なスタッフや施設を配置・配備することを忘れないでもらいたい。