(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース)中教審諮問「新しい時代の初等中等教育の在り方について」

次期指導要領と連動した検討

柴山昌彦文科相は4月17日、中教審に「新しい時代の初等中等教育の在り方について」諮問した。新学習指導要領の本格実施が間近に迫った段階で、中教審に新たな審議を諮問した狙いとは何か。

急速な変化に対応できない

多くのマスコミは、中教審諮問について、小学校高学年での「教科担任制」の拡大を大きく報道している。しかし、諮問が中教審に求めている検討課題はそればかりではない。

学習指導要領改訂の目的は、学校教育の中身を時代の変化に対応させていくことだ。だが、ほぼ10年に1度の改訂では、急速な時代の変化に対応できなくなりつつある。実際、2017年3月に告示された小中学校の新学習指導要領でさえ、その本格実施が始まる前に時代や社会は大きく変化している。「働き方改革」が、社会全体の課題となったことなどは、その代表的な例だ。仮に学習指導要領の改訂論議の最中に働き方改革も論点となっていたら、小学校の授業時数の在り方なども変わっていたはずだ。

また働き方改革だけでなく、人工知能(AI)の急速な普及とそれに対応する人材育成の必要性、今年4月の改正出入国管理法施行による外国人労働者の受け入れ拡大、今年10月からの幼児教育無償化の実施、20年度からの高等教育の無償化への動きなど、既に新学習指導要領が告示された当時とは隔世の感がある。

つまり、今回の中教審への諮問は、全く新しい教育改革を論議するものではなく、新学習指導要領の実施と連動したものとして捉えていくべきだろう。その意味で、学校現場も今後の中教審の論議を注視していく必要がある。

授業時間、教員免許などを検討

中教審諮問の検討事項を基に、小学校高学年の教科担任制拡大以外の少し気になる検討事項を見ていく。

◯「教科担任制の導入や先端技術の活用など多様な指導形態・方法を踏まえた、年間授業時数や標準的な授業時間等の在り方」

文科省は、今年3月に公表した教育課程編成状況調査で、多くの小中学校が年間標準時数を上回る授業時数を設定していることが、教員の長時間労働の原因の一つとなっていると指摘。都道府県教委などに見直しを通知した。しかし、新学習指導要領では、教育内容が実質的に増えており、小学校では年間時数そのものが増加している。標準授業時数の取り扱い方など、働き方改革と新学習指導要領の折り合いをどうつけるかが焦点となろう。

◯「特定分野に特異な才能を持つ者や障害のある者を含む特別な配慮を要する児童生徒に対する指導及び支援の在り方」

一般の学校における通級指導の増加などに対応して、特別支援教育の知識・技能を一般教員に身に付けさせる方策の検討が課題となろう。また「特異な才能を持つ者」への対応が特別支援教育と並んで検討課題に挙げられていることも注目される。

◯「義務教育9年間を学級担任制を重視する段階と教科担任制を重視する段階に捉え直すことのできる教職員配置や教員免許制度の在り方」

小学校「英語」の教科免許など、新たな小学校教員免許の創設などが課題となろう。また現状では思うに任せぬ教職員定数の大幅な改善につながる可能性もあるかもしれない。

◯「ICT環境や先端技術の活用を含む条件整備の在り方」

現在、自治体格差や学校間格差が深刻な問題となっているICT環境の整備が、大きく進むことも予想される。

◯「児童生徒の減少による学校の小規模化を踏まえた自治体間の連携や小学校と中学校の連携等を含めた学校運営の在り方」

深刻化している学校統廃合への対応、義務教育9年間を一体化させた学校運営の在り方などが課題となりそうだ。今以上に小中学校の一体化が進む可能性もある。

大学入試改革にも発展か

高校改革が今回の諮問で大きな柱の一つとなっていることも特徴だ。これは自民党の教育再生実行本部の中間報告、普通科の改革を検討中の政府の教育再生実行会議の動向を受けたものだ。

◯「いわゆる文系・理系の類型にかかわらず学習指導要領に定められたな様々な科目をバランスよく学ぶことや、STEAM教育の推進」

文科省の省内タスクフォースが昨年6月にまとめた報告書「Society5.0に向けた人材育成」は、実質的に高2から文系・理系に分かれるという高校の現状を批判しており、「文理分断からの脱却」を提言している。また、経団連もAI時代に対応するため、文系大学生にも数学教育を課すことを提言している。

STEAMは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字を取ったもの。恐らく、普通科の改革と同時に、新学習指導要領において文理融合のカリキュラムを組むよう高校は求められることになる。さらに、文系志願者にも数学を課すなど大学入試改革にも発展していくことになりそうだ。