今日の課題から教え始める 若い世代の意見を聞くために

教育新聞特任解説委員 鈴木 崇弘

日本は少子高齢化社会であり、若い世代は高齢者に比べて投票率が低く、声が政治に反映されにくい構図がある。

そのために、高齢者の意見が政治に過剰に反映されやすい「シルバーデモクラシー」的な状況が生まれているといわれる。

その結果として、財政において、特に医療や社会保障の歳出が増大してきており、国の借金はすでに1千兆円を超えているといわれる。

国の年間予算規模は現時点で年間100兆円程度であり、その中に国債などの借金も含まれることを考えると、国の借金返済は、少なくとも数十年から100年程度以上のスパンで考えていく必要がある。

つまり、特に若い世代、およびそれに続く世代にも長く影響を与えることを意味する。

ある調査結果

「国の借金」をテーマに実施された「18歳意識調査」で、興味深い結果が発表された。

18歳の多く(61.3%)は、わが国と地方自治体の借金が1千兆円の大台を超えている財政の現状を知らないと回答している(注1)。

財政の将来に対して不安を感じる者は72.8%もいた。理由として、「このままでは経済破綻は免れない」「少子高齢化で年金自体賄うのが大変」などと回答している。

また、このような借金を前提にした国の予算に対して賛成なのは7人のうち1人程度で、多くは反対か分からないとしている。

借金が増えた理由としては、過半数(50.9%)が政治家の努力が足りなかったと考えているものの、国民の負担(税金など)が軽かったこと(20.9%)や、国民の権利主張が強すぎた(18.6%)との回答も多く、他者を一方的に批判しない面もうかがえ、冷静に状況判断しているともいえよう。

また、国と地方自治体の借金を誰が負うべきかと思うかの問いに対して、借金を増やしてきた世代が負うべきという回答も多い(28.5%)が、最多(59.0%)は国民全体で負うべきという答えであり、自分たちの世代の社会的責任や役割を自覚していると分かる。

そして、問題の多い財政再建の方策として、49%が歳入増(「企業への増税」25.1%、「消費税などの増税」23.9%の合算)、36.5%が歳出減と回答。

現状の予算削減より、税収などを増加させていくことを優先させており、現状を維持させながら、問題解決を図るべきであると考えているようだ。

以上をまとめれば、本調査の対象者は18歳の若い世代であるが、彼らは、社会の問題・課題を知り、自分たちの役割や責任も理解しながら、冷静に判断して、社会の問題・課題に対処していけるのではないか。

結果から考えること

しかしながら、本調査からも分かるように、若い世代の多くは、現在の国や自治体の財政問題・課題についてよく知り、理解しているわけではない。

若い世代は当然今後、社会でより長く生活していく。彼らは、社会を支えていく存在である。

彼らの理解と支持がなければ、日本の全世代の生活が成り立たず、持続的な社会の維持はあり得ないといえる。

そのように考えると、できる限り、若い世代も社会参画していく機会を増やしていくべきだ。

2015年の公職選挙法改正によって、投票できる年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられ、より若い世代の意見が反映できるようになったことは評価できよう。

ただそれだけでは、さらに若い世代の声は反映されない。18歳以下の子供がいる親に「子供分」の代理選挙権を提供するなど(注2)、新しい方策も今後真剣に考える必要があるだろう。

また最も必要かつ現実的なのは、若い世代に、日本が現在、そして今後抱える問題・課題を説明し、理解してもらい、彼らにも、それらが自分たちの問題・課題であると実感してもらうことではないだろうか。

そのためには、これまでも何度も多くの方々に指摘されてきたように、学校で歴史や社会を教える際は、まず今日の状況や問題・課題から教え始めるようにすべきではないだろうか。

(注1)国の資産があり、借金は問題ないという意見もある。

(注2)このように、子供にも選挙権を与えて、親が代理で投票する選挙制度のアイデアは、その考案者の名前から「ドメイン投票制」と呼ばれる。

(城西国際大学大学院教授・日本政策学校代表)