(新しい潮流にチャレンジ)KJ法の有効な活用を目指す

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教育創造研究センター所長 髙階玲治

課題発見・解決志向が学校を変える

創造性開発を巡る動き

最近、企業などに関わる論文を読むと「価値創造」の言葉が氾濫しているのに気付く。AIの登場が企業戦略に大きな影響を与えているためである。

ただ、「価値創造」は最近の言い方で、過去においては「創造性」の言い方で語られていた。本質的には両者に大きな差異はない。

だが、創造性が産業界で盛んに言われるようになったのは1965年頃で、50年以上も時代をさかのぼる。当時、創造性はブームであったし、また持続的な課題でもあった。

それは、戦争によって壊滅的な打撃を受けたわが国が奇跡的に回復し、さらに技術立国として世界に羽ばたくための大きな要因となった。当時、創造性の開発は、もっとも社会的要請が強い課題だったという。

1972年に産業能率短期大学が行った企業調査があるが、それによれば創造性開発をなぜやるかといえば、「問題意識を高めさせる」「問題解決能力を高めさせる」が共に50%を超えていた。次が「自己啓発させる」「自分で考え行動する態度を身に付けさせる」であった。

また、創造性開発のためにどんな制度や方法をとっているかといえば、提案制度86%、創造性教育51%、QC(品質管理)サークル運動50%、プロジェクトチーム49%、自己申告制度46%だったという(『創造的能力―開発と評価―』佐藤三郎・恩田彰共編、東京心理、1978)。

さらに同じ調査で、どのような創造性開発の手法を活用しているかといえば、ブレーン・ストーミング、KJ法が70%以上だった(『創造性』穐山貞登、培風館、1975)。

今も活用したい「KJ法」

当時、多様な創造性開発の手法がみられた。私の知っている範囲でいえば、ブレーン・ストーミング(BS)、KJ法、NM法、シネクティクス、等価変換理論などである。他にオズボーンの創造技法などがある。

これらの創造性技法の中で今も学校教育で活用したいものを第一に挙げるなら、「KJ法」である。

そのKJ法は、周知のように発明した川喜田二郎の頭文字からの命名である。カードに記入し、それらを関連する事項でまとめるやり方は画期的であった。当初は野外科学としてスタートするが、創造性開発のための発想法として広く応用される。

また、『発想法』(中央公論社)を67年に発刊してから、本人自身がさまざまなやり方を見いだして『続・発想法』(同)を発刊したのが70年である。柔軟に多様に活用できるものである。

私が活用を始めたのは北海道立教育研究所(道研)で、小・中・高校の校長・教頭対象の経営研修であった。所員の一人が実際に川喜田氏の実施するKJ法に参加した結果から学んで実施した。当時、道研は1週間の宿泊研修を実施していたが、午前は主に講義、午後は10人単位のグループで演習と協議を行っていた。その最初にKJ法として各学校の経営の実態から考えられる「課題発見」を行い、続いて各学校の実態に基づく研究協議をし(「原因探究」に当たる)、最後に解決の手だてや方向として「解決志向」を行うものであった。私の道研勤務はほぼ14年で、その後もさまざまな機会にKJ法を実施してきたが、何百回と数えられないほどである。

KJ法が極めて有効なのは、実際の経験知から情報を集め、課題を見いだして推論し、実際に生かせるかどうかのレベルで解決策を見いだそうとするものである。協議の過程で相互啓発が働くから役立つことが多いのである。

しかも、よく知られているように、その手法は極めて簡単である。カード(紙切れでよい)と貼り付ける模造紙があればよい。

学校で行うとすれば、テーマについて①自分の考えをカードに書く。抽象的でなく事実などを具体的に書く②分類できるように、1枚のカードに二つ以上のことは書かない。何枚でも違ったことを書く。多いほどよい③書かれたカードの似たもの同士を集める。何が書かれているか、カードの意味することをまとめて的確に具体的に表現する。表札づくりと呼ぶ――このような作業でいくつかの表札ができる④模造紙の上に表札を載せ、似たもの同士を再度グループ化する。島づくりと呼ぶ。いくつかの島ができる。どの島にも属さないカードもできる。離れ島であるが、重要な意味を持つことがある。島ごとに何を意味するか、フェルトペンで表札を付ける⑤配置された島それぞれにどのような結び付きがあるか、中心的な課題や周辺の課題は何か、因果関係などを線を引くことで表す。

KJ法は慣れると簡単にできる。「課題発見」「原因探究」「解決志向」の流れがあるが、どの場合も実施スタイルは変わらない。

また、会議ではそれぞれが意見を言い合うと時間がいくらあっても足りないが、KJ法の長所は短時間で意見の集約ができることである。

さらに会議では一部の教員の意見に引きずられる場合があるが、KJ法のカード1枚1枚は平等で、公平に意見が取り上げられる。民主的な手段でもあるし、思い付きなども許容されるから大胆な提言も可能である。なお、無記名で行ってもよい。

なぜ「KJ法」が必要か

一つの組織が生産性を高めるには、組織全体の活性化が必要である。かつて経営学者のバーナードは、その要件として①目標への統合②コミュニケーション③協働の体制――を挙げていた。それは今なお真実である。

だが、学校の現状はどうか。あれもこれもと過重な職務に追われてコミュニケーションの機会がとれないのが現状である。そのため、職員会議など協議の時間をカットする学校が増加している。結果として、個々の教員任せに陥り、職務が停滞する。コミュニケーションの機会がなくなれば教職員相互が共通して目指す目標への統合意識が欠如し、互いに協力し啓発しながら協働する体制も乱れる。

ただ、学校の現状を考えるとコミュニケーションの機会を多く設定することは困難である。そこで、校長の出番を考える。KJ法は普通10人程度が集まって、カード書き、表札づくり、島づくりなどを行うが、そうした時間の設定はいつでもできないであろう。教職員の人数も10人を超える。

そこで、校長は、例えば「課題発見」についてのテーマを設定して、教職員全員がカード書きを行う。4~5日程度の余裕でカードを集める。それを校長一人で分類し、表札づくりや島づくりを行う。

大変と思うであろうが、実際に行った校長が数人いた。KJ法に慣れると容易にできるし、何よりも教員個々が「こんな問題意識を持っていたのか」「いいアイデアを考えているな」など、思いがけない発見があったりする。個々の教員の考え方が把握でき、経営感覚を磨くことができる。

その結果は模造紙で提示することで、教員全体がテーマについての共通認識を高めることができる。教員のテーマへの参画意識が高まり、次のステップである「解決志向」へと発展させられる。

テーマは多様にある。例えば、「教員の多忙化は何が課題か」「どうすれば子供の学習意欲を高められるか」「特別活動を効果的に行うには何が必要か」など、である。

コミュニケーションは、集まって話し合うことのみを意味しない。互いの考えを相互に知り合う方法があれば、そこにコミュニケーションが成立する。教員個々の負担にならず、しかも全校的に集約された互いの考えを共通に認識できることを可能にするKJ法はかなり有効である。

校長の積極的なKJ法活用を期待したい。