年齢主義と修得主義 発展的ニーズへ対応できる仕組みを

教育新聞論説委員 工藤文三

経済同友会の提言

経済同友会はこの4月、初等中等教育の改革に関する提言を行った。技術革新や社会の変化が加速する中で、一人一人の子供たちの能力を最大限に引き出す多様な学びを支えるためには、教育に携わる「ヒト」、遠隔授業等の「ツール」、教員免許制度その他の「制度」の革新が必要との提言である。

この「制度」の革新の一つとして、年齢主義から修得主義への転換を提言している。

提言では、「スタディ・ログの活用により、一人ひとりの進度・理解度をより精緻に把握することが可能になった現在」義務教育の範囲を年齢で定めること、授業時数を学年ごとに一律に定めることなどは撤廃すべきとする。

また、「将来にわたり個々人の能力を最大限に発揮させる観点から、文部科学省は、いわゆる飛び級の制度化や原級留置の運用についても改めて検討し、本人の修得レベルに応じた教育を提供すべき」とした。

提言の背景には、テクノロジーの活用によって、一定の領域については、指導の個別化と子供の学びの効率化が図られるようになったとの認識がある。これらのことが可能になりつつある現在、年齢で義務教育の範囲を決めたり、学年単位で時数を定めたりすることは、見直しが必要との趣旨といえる。

年齢主義と修得主義

年齢主義とは、一定の年齢で小学校に入学・進級し、一定の年齢に達した時点で義務教育は終了したものとする考え方である。修得主義とは、所定の教育課程を履修し、目標を達成することによって義務教育を終了するとの考え方である。

また、教育課程の修了認定の考え方には、これらの他に、履習主義と課程主義がある。履習主義とは、教育課程を一定期間履習することによって、義務教育の終了を認める考えであり、課程主義とは、教育課程の修得を必要とするとの考え方である。

年齢主義、履習主義から、課程主義、修得主義の仕組みに移行すれば、原級留置や飛び級の仕組みを設けることも可能となる。

日本の義務教育は実際的には、年齢主義の考え方によっていると考えられる。ただ、学校教育法施行規則第57条に規定されているように、各学年の課程の修了や卒業認定は、「児童の平素の成績を評価」して「定める」としており、課程主義、修得主義の意味も持たせている。

一人一人の学力の保障に向けて

年齢主義の問題点は、学力が不十分なまま進級し卒業することがありうること、また、定められた学年の教育課程を超えて学習する道を閉ざしているのではないかという点である。原級留置や飛び級はこれらの課題を解決するための提言と考えられる。

課程主義、修得主義にはさまざまな運用方法が想定されるが、大きなポイントは課程認定に係る評価とその判断基準である。原級留置について考えると、どの範囲の教科の学習評価を用いるのか、出席日数、出席時数はどう扱うのか。また、共通学力テストなどを用いるのかどうか。

さらに、道徳教育や特別活動の評価はどのように扱うのか。飛び級の場合も同様に、判定対象の課程の範囲、基準が問われる。

知育が重視され、徳育・体育も含めた教育の在り方がゆがめられる可能性がないとはいえない。原級留置、飛び級の両者とも、該当する児童生徒が集団に適応し、学習成果を上げていくことが可能かという点についても慎重な検討が必要である。

一人一人の学習ニーズに応じるためには、例えば、各学年に必ず補充や発展の学習を行う時数を確保し、選択して学習させることの義務化が考えられる。年齢主義を基盤としつつ、学力の確実な修得とともに、発展的な学習ニーズに対応できる仕組みを検討していくことが重要と考える。