令和の時代は「個」へ 「好き」を見つけ磨く

教育新聞特任解説委員 小宮山 利恵子

この5月、平成から令和へと新しい時代の幕が開けた。1989年から始まり30年続いた平成と、これからの令和では、社会の様相も大きく変わるだろう。

iPhoneが出てきたのは今から12年前。それまでポケベルやPHS、ガラケーといったものがあったが、一気にスマホへとシフトした感がある。スマホがない時代、どうやって過ごしていたのだろう?

その答えが分からないほど、スマホは日々の生活に欠かせない存在になった。

令和ではどのような新しいテクノロジーが登場するだろうか。社会の変化に伴って教育の姿も変わる。今回はこれからの学びについて、いくつか重要な点を考えたい。

自分の「好き」を追求すること

先日、トヨタ自動車の豊田章男社長が「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べ、大きくニュースで取り上げられていた。売上高が30兆円にも及ぶ企業のトップでさえも、終身雇用は難しいと断言したのだ。

一方で、政府は今月15日に開催された「未来投資会議」で、希望者が70歳まで働き続けられる就業機会の確保を、企業の努力義務とする方針を打ち出している。会社は「終身雇用は難しい」と言い、政府は70歳まで働くことを推奨している。

会社自体の平均寿命は約20年。人間の健康寿命は80年になると言われている。つまり80歳までは働けるようになる。

もう、一つの会社で最後まで働くことは困難に近く、誰もが転職や兼業、副業をする世界はもうすぐそこまできていると言ってよい。

では、そうなったときに何が必要かといえば、自分の「好き」を理解し、それを追求していくことに他ならない。

同じことを速く正確に行うという情報処理力はテクノロジーに取って代わられ、それぞれの得意領域を用いてプロジェクトを基本とした仕事が多くなる。そのため「あなたは何ができるのか?」という問いを突き付けられる機会が多くなるだろう。

もちろん基礎学力は重要だ。しかし、それに積み上がる力のブロックは均一でなくてもよい。好きな部分、得意な部分を見つけ、伸ばしてあげることが、これからはより重要になってくる。

テストだけではない新しい評価軸

2020年に大学入試が変わるが、世界ではもっと大胆に入試が変わりつつある。

例えば、米ハンプシャー大学ではSATと呼ばれる大学進学適性試験のスコア提出が不要だ。米国では、大学における教育が必ずしもこれから生きていく力となっておらず、かつ企業が必要な人材要件との間にミスマッチが生じている状況がある。

そこで、同学は入試においてSATのスコアを排除し、エッセーや面接など多くの情報を元に受験生の合否を出すようにした。受験生側からは「自分の全てを見て判断してもらえる」と好評で、この施策は継続されている。

また、米サンディエゴにある公立高校High Tech Highは、いわゆる定期試験がない。その代わりにプロジェクト型学習にて評価をする。米国では憲法に基づいて州ごとに統一試験を実施する必要があるため、その試験は存在するがそれ以外、学校の試験はない。

一方で、四年制大学進学率は9割を超えている。私自身、一昨年訪れる機会があったが、当時から非常に有名な取り組みとして全米で認知されていた。

また、国内に目を移してみると、東京都千代田区立麹町中学校の取り組みも非常に興味深い。宿題、定期テストを廃止し、抜本的な改革を行っている。

校長の権限は非常に大きく、校長が積極的に改革をしようと思えば、できる。従来「テスト」「偏差値」といった評価軸しかなかったが、今後はさまざまな軸の評価が出てくるだろう。

五感を使って実際に体験する

ネット上で得られる情報は格段に多くなった。VR、ARなども使えば、その場に行ったような感覚も得られる。翻って考えれば、一般的な情報は多くあるけれども、実際の「肌感覚」は体験しないと分からず、その価値が上がるとも言える。

誰もがネットで情報を得られる時代、どこに差が出てくるかといえば実際に体験し、それを自分で語れるかどうかだ。

教科教育は「スタディサプリ」などのオンラインアプリを使って一人一人の学びの進度に合わせて効率的に学び、余白の時間で体験型のプログラムを実施するというパターンが増えてくるのではないか。

AI(人工知能)が作るフェイクニュースに踊らされることなく、また自分が持つバイアスや偏見を取り除くためにも、体験に重きを置いた学びが増えるだろう。

(スタディサプリ教育AI研究所所長/東京学芸大学准教授)