(本紙編集局はこう読む 深掘り 教育ニュース)教育再生実行会議の第11次提言―高等学校改革など

経済の論理から初等中等教育の改革を迫る

政府の教育再生実行会議は5月17日、高校改革などを柱にした第11次提言を安倍晋三首相に提出した。新聞などでは高校改革を中心に報道されたため、高校関係者以外の関心はそれほど高くないとも思われる。しかし、提言の狙いは高校改革だけではない。

注目を集めて普通科への類型導入

第11次提言に関する一般のマスコミ報道は、高校普通科への「類型」導入などが大きく取り上げられた。だが、普通科への類型やコース制の導入は、現在でも一部の高校で実施されており、それほど目新しい内容ではない。もともと高校進学率が98%を超える中で、著しく多様化した高校教育を、特に普通科の在り方をどうすべきかは、「新しいタイプの高校づくり」などとして1970年代から議論されてきた問題だ。

実際は、多様化する生徒に対して、高校の「個性化」路線による改革、実質的には学校間格差の拡大により、高校は多様化に対応してきた。現在の高校は学校ごとに大きく内実が異なり、高校教育という一つの枠組みで全体を語るのが困難なほど多様化が進んでいる。

これに対して提言が打ち出しているのは、全ての高校が「生徒受入れに関する方針、教育課程編成・実施に関する方針、修了認定に関する方針」を定めて、国が示す普通科の「類型」の中から、自校の教育の方向性に応じた類型を選択するという方策だ。

これらは、学生受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)、教育課程編成方針(カリキュラム・ポリシー)、学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)の三つのポリシーの策定と公開を義務付け、「卓越した教育研究型」「特定分野の教育研究型」「地域貢献型」などの大学の機能分化を図るといった、現在の大学改革の手法を高校改革でも踏襲しようとするものといえる。つまり、提言が示した普通科への類型導入の狙いは、高校の機能分化だ。

グローバル社会で日本経済が生き残るための人材育成

また提言は、「技術の進展に応じた教育の革新」と「新時代に対応した高校改革」の2本柱で構成されている。教育関係者の間で関心が高いのは高校教育改革の部分だが、実際に注目すべきは「技術の進展に応じた教育の革新」の方だろう。ここでは、これからの日本経済が生き残るために必要なグローバルリーダーの育成、人工知能(AI)を使いこなせる人材の育成が、大学教育だけでなく、小学校から高校までの初等中等教育の目的であると明確に示している。

グローバル社会の中で日本経済が生き残るための人材育成が初等中等教育の目的はあると、ある意味、ここまで露骨に言い切った提言は、経済団体の教育改革提言などを除けば、これまであまり例がない。

課題発見・解決能力を身に付ける教科横断型学習や「主体的・対話的で深い学び」も、全て経済発展に向けた人材育成のためと言われては、教育関係者としては身も蓋(ふた)もないだろう。提言の示した「経済の論理」に対して、「教育の論理」から批判するのは簡単だ。だが、現実にグローバル化やAIなどの技術革新が急速に進む中、具体的な対案を示すのは、かなり難しい。これが安倍首相の主導する「教育再生」の厄介なところだ。

中教審がどのような答えを示すか

ところで、高校普通科の類型化は、今回が初めて出されたものではない。旧民主党政権の高校無償化を契機に設置された中教審の高校教育部会による「高校教育の質の確保・向上に向けて」の審議の中で、文科省の事務方から、▽社会におけるリーダー層やグローバルリーダーの育成を目指す高校▽専門的職業人の育成を目指す高校▽自立した社会生活・職業生活を営むための基礎的な能力の育成を目指す高校――などの高校の機能分化が提案されたことがある。しかし、この事務局案は中教審委員らの強い反発を受けて撤回された。

中教審は現在、柴山文科相による諮問を受けて、初等中等教育改革に関する議論をしているが、これは教育再生実行会議の動向と関連したものだ。第11次提言が示した高校普通科の「類型」の具体的内容などは、今後、中教審で審議されることになっている。経済の論理から初等中等教育の改革を迫る教育再生実行会議の提言に対して、中教審がどのような答えを出すのか。その内容で、今後の初等中等教育の在り方が大きく変わってくることにもなりそうだ。